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介護・看護・リハビリ 2022-03-31

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.55】お風呂ギライで2週間も入浴拒否! どうしたら入ってくれる?

日々の介護のお仕事で直面しがちな困りごとの対処法を取り上げるこの企画。今回は、ちょっと困ったこだわりを持つ利用者への対処法をご紹介します。

入浴を拒否し続けているCさん。ついに他の入居者から苦情が…。どう対応すればいい?
Cさんが暮らすのは老人ホーム。お風呂がキライなようで、もともと1週間に1回くらい入ればいい方でした。しかし、今回は2週間経ってもお風呂に入ろうとしないCさん。ついに、周りの入居者から「臭いから何とかして!」と苦情が出てしまいました。そこで担当介護職が声かけをしたのですが…。


介護職:Cさん、今日はお風呂に入りましょうね。
Cさん:…………。
介護職:Cさん、もう2週間もお風呂に入ってないじゃないですか。入ったらすっきりして気持ちいいと思いますよ~。
Cさん:お風呂はキライなんだ。
介護職:キライだからって、2週間もお風呂に入らないのはおかしいですよ。周りも迷惑してるんですよ。
Cさん:人を変人扱いするな! お前の言うことなんか、誰が聞くか!

苦情が出ていることもあって、何とかCさんにお風呂に入ってほしかったのですが、逆にCさんの姿勢を頑なにしてしまいました。では、どう声をかければよかったのでしょうか。

お話を伺ったのは…

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

このケースは、Cさんの価値観とどう向き合うかがポイントになってきますね。お風呂ギライで入浴は出来る限り避けたいCさんに、「お風呂に入るのは当たり前」という価値観を押し付けるだけではCさんを動かすことは難しいでしょう。

今回は、周囲と相容れない価値観やこだわりを持つ利用者への声かけのポイントを見ていきましょう。

ポイント1:価値観は人それぞれ。無理強いはしない

毎日欠かさずお風呂に入りたいという人もいれば、朝晩2回がいい人も、数日に1回や週1回でも十分という人もいると思います。これは各個人の価値観なので、施設で入浴回数が決まっていたとしても無理強いすることはできません。利用者の想いや立場を最優先するのが、介護現場での基本です。この場合、お風呂はキライという思いを尊重しつつも、別のアプローチでお風呂に入る気になってもらう方法を考えましょう。

ポイント2:目の前の目的の延長線上に別の目的を設定する

Cさんに無理強いできないとはいえ、周りの入居者の苦情も無視するわけにはいきません。だからといって「お風呂に入る」ことを目的にしてCさんに対応してしまうと、お風呂がキライだというCさんの思いと真っ向からぶつかってしまい、トラブルの種となってしまいます。つまり、Cさんが行動したくなる【別の目的】を提示するのが得策です。「お風呂に入る」ことで【別の目的】に近づける、叶うような道筋を提示してあげられるといいですね。

ポイント3:日頃から利用者の趣味や願望を観察しておく

例えば、Cさんはお孫さんから<かっこいいおじいちゃん>と思われたがっています。これを目的として提示するのはどうでしょうか。「<かっこいいおじいちゃん>になるには、日頃から準備するにこしたことはないですよね」「まずはお風呂に入ってキレイな身体をキープすることから始めるのはどうですか?」のように、お風呂のその先の目的に気持ちが向くように声をかけてみましょう。
介護職にとって、利用者の思考や好み、願望を把握することは大切です。お互いに気持ちよく過ごすのにも役立つので、ぜひ日頃から意識しておきましょう。

こだわりの強い人とのコミュニケーションに大切な2つのこと

1.どんな価値観も肯定的に受け止める
2.共感的理解を示す
価値観は人それぞれ。頭では分かっていても、介護の現場では、Cさんのように臭うまでお風呂に入らないとか、ゴミにしか見えないものを集めるとか、対応に困ることがあるのも現実です。歳を重ねることでこだわりが強くなっている場合も多々あります。そんな人とのコミュニケーションにおいて大切なのが、この2つです。
まずは、肯定的に受け止めること。他人から見て眉をひそめることでも、当の本人にとっては大切なことなので、否定的な表現や態度を向けないように気をつけましょう。その上で、そのこだわりがその人にとってどのような意味があるのかを理解して気持ちをくみとること(共感的理解)ができれば、問題解決の糸口が見えてくるはずです。

監修・中浜さんの「実際にこんなことありました!」

入浴をしたがらない利用者って、少なからずいらっしゃいますよね。私も経験があります。
まさに「入浴をさせたい」という利用目的から、デイサービスを利用開始をした方だったのですが、その方は入浴を好まず半年以上お風呂に入っていませんでした。このケースも入浴するまで何度も声かけを重ねてやっと入っていただくことができたんですよね。
その方の場合のきっかけは爪切りでした。爪がいつから切っていないか分からないくらい伸びていたので、「爪を柔らかくするためにお風呂で温めましょう」と声をかけたところ、やっと入っていただくことが出来ました。半年も入浴していないせいか皮膚もポロポロと落ちるような状態だったので、入浴の際には軽石などを使って古い角質を取ったりしたのですが、次回以降もお風呂に入る喜びを感じてもらえるように、「お風呂で綺麗になると気持ち良くないですか」「こんなに古い皮膚が取れましたよ」など、その時間を少しでも楽しんでもらえるように声かけをしましたね。
その後も入浴してくださらないことはありましたが、それまでに比べると入ってもらえることが増えました。お風呂に入る理由が【本人が納得しやすいこと】というのがポイントなのかなと思います。さまざまな視点から探してみてみてくださいね。

参考:「こんなときにはどう言葉をかけたらいい? 介護の言葉かけタブー集」誠文堂新光社

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