生活相談員になるために必要な6つの資格要件|生活相談員に向いているのはどんな人?
生活相談員、という職業を聞いたことはあるでしょうか。介護業界の職業のひとつで、特別養護老人ホームのような介護施設で、利用者や入居者の面接・各種手続きを主な業務としています。
この記事では、生活相談員という職業に就くために必要な資格要件や、生活相談員に向いている人の特徴などをご紹介します。生活相談員として介護業界で働きたい、と考えている方や、生活相談員について知りたい、という方はぜひ参考にしてください。
生活相談員になるには資格が必要なの?
介護福祉士やホームヘルパーなど、介護職に資格はつきものです。最初に生活相談員になるためには資格が必要なのか、みていきましょう。
「生活相談員」という資格はない!
勘違いされやすいのですが、生活相談員とは資格名称ではなく、職種の名称です。生活相談員という資格は2022年10月現在、存在していません。厚生労働省令と社会福祉法で定めている要件を満たしていれば、未経験の方でもなることができます。
ただし、生活相談員になるための要件を独自に定めている自治体もあります。生活相談員として働きたい自治体の要件を、確認するようにしてください。
老人介護施設などで利用者の支援業務・サービスを行なう仕事
生活相談員の仕事は、介護より利用者やその家族のサポート的な役割となります。
・利用者や入居者の面接、施設利用手続き
・利用者とその家族の相談
・ケアマネや介護職員などとの連絡や調整
・スタッフのサポート
このように生活相談員は介護を受ける方だけでなく、スタッフに対しても大きな役割を果たす職種となっています。業務内容に関しては施設によって異なる部分が多いので、臨機応変に対応することが求められる仕事です。
生活相談員の仕事をするにはどうすればいいの?
生活相談員という資格はありませんが、厚生労働省令や社会福祉法では、以下のどれかの資格を所有していることが条件となっています。
・社会福祉士
・社会福祉主任用資格
・精神保健福祉士
前述したように、自治体などによっては、独自の要件を定めており、たとえば介護福祉士でも生活相談員になることが可能です。介護福祉士の場合は実務経験年数を聞かれることが多いですが、介護福祉士の資格を持っているという追加条件を出している都道府県もあります。
生活相談員の資格要件とは?
生活相談員という資格がないことがわかりましたが、法令で定められている資格を取得しておかなければいけません。ここからは生活相談員資格の資格要件について、みていきましょう。
【要注意】自治体によって資格要件の内容は違う!
生活相談員になるための基本的な資格要件は定められているものの、厚生労働省で定めている基準が不明瞭な部分が多いため、実際には各自治体によって資格要件が異なることが多いです。生活相談員になりたいと考えているのであれば、勤務場所の自治体に資格要件を問い合わせる必要があります。
厚生労働省の指定|社会福祉法第19条第1項各号のいずれかに該当する者
生活相談員の資格要件については、厚生労働省令で社会福祉主事として、20歳以上で社会福祉に対して意欲があることを前提に、以下の条件が定められています。
一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学、旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)に基づく大学、旧高等学校令(大正七年勅令第三百八十九号)に基づく高等学校又は旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)に基づく専門学校において、厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者
二 都道府県知事の指定する養成機関又は講習会の課程を修了した者
三 社会福祉士
四 厚生労働大臣の指定する社会福祉事業従事者試験に合格した者
五 前各号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認められる者として厚生労働省令で定めるもの
1. 社会福祉主事任用資格者
社会福祉主事任用資格者は、社会福祉での相談業務を行います。都道府県や各自治体にある福祉事務所や公共の福祉施設で勤務することが多いです。この資格は「社会福祉主事任用資格者」になるために必要な資格になります。公務員になってはじめて、社会福祉主事任用資格者と名乗ることができるのです。
社会福祉主事については、別記事でもご紹介しております。詳しくは、こちらをご覧ください。
社会福祉主事
社会福祉主事任用資格者になるには? 試験はあるの?
社会福祉主事任用資格者の資格を取得するには、大学や短大で厚生労働省が指定している科目を3つ以上履修します。そのうえで卒業するか、都道府県で行なっている講習会を受講することが必要です。また、1年間の通信教育を受けて取得することもできます。
資格試験はなく、必要科目の履修か講習を修了することで資格取得が可能です。しかし社会福祉主事任用資格者として働くためには、公務員試験に合格しなければなりません。
2. 社会福祉士
社会福祉士は児童や高齢者・生活困窮者など対象者が多く、福祉分野すべてが対象となり、メインとなる業務は以下のものがあります。
・相談業務
・医療保険など関連機関との連絡や調整
・サービスの管理業務
社会福祉士については、別記事でもご紹介しております。詳しくは、こちらをご覧ください。
社会福祉士とはどんな仕事?活躍できる職場や国家資格の取り方を紹介
社会福祉士になるには? 試験はあるの?
社会福祉士になるためには、毎年1月下旬~2月上旬に行なわれる国家試験を受験しなければいけません。受験資格を得るためのルートは、12通りです。ルートによって資格要件が変わってくるため、事前に自分がどのルートで受験可能かを確認しておく必要があります
社会福祉士になるための試験については、別記事でもご紹介しております。詳しくは、こちらをご覧ください。
社会福祉士になるには?国家試験の受験資格を得る方法や必要な実務経験について紹介
3. 精神保健福祉士
精神保健福祉士は、精神障害を持っている方やその家族に対し援助を行なう仕事です。精神障害を持つ方の社会復帰のための相談や助言、指導のほか、日常生活に適応するための訓練などの援助を行なう役割を持っています。
精神保健福祉士については、別記事でもご紹介しております。詳しくは、こちらをご覧ください。
精神保健福祉士とは? 求められる役割を紹介|精神保健福祉士の仕事内容を解説
精神保健福祉士になるには? 試験はあるの?
精神保健福祉士になるためには、年1回行われる国家資格に合格しなければなりません。福祉系の大学で指定科目を履修したり、養成学校を卒業したりするなど、資格取得ルートは全部で11通りあります。
精神保健福祉士になるための試験については、別記事でもご紹介しております。詳しくは、こちらをご覧ください。
精神保健福祉士の受験資格とは? 取得できる4つのルートを紹介!
4. 介護福祉士
介護福祉士は専門知識と技術を用いて、精神・心身に障害のある方の状況に応じた介護を行います。さらに必要な場合は、障害を持つ方やその家族に対して介護指導を行なうこともあるのです。
一部の自治体では、資格がなくても実務経験があれば生活相談員になる条件の「同等以上と認められる能力を有する者」と認識されることがあります。たとえば東京都では、「特別養護老人ホーム、高齢者在宅サービスセンターの老人福祉施設(介護老人保健施設を含む)で介護の提供に係る計画の作成に関し、1年以上(勤務日数180日以上)の実務経験を有する者[介護の提供に係る計画の作成に関し経験のある者]」とされています。
生活相談員になるための実務経験の条件は、自治体によって異なりますので、それぞれをご確認ください。
介護福祉士については、別記事でもご紹介しております。詳しくは、こちらをご覧ください。
介護福祉士とは
介護福祉士になるには? 試験はあるの?
介護福祉士は国家資格のため、試験は年1回しかありません。資格取得ルートは大きく分けると以下の4つのルートがあります。
・養成施設ルート
・実務経験ルート
・福祉系高校ルート
・経済連携協定(EPA)ルート
介護福祉士になるための試験については、別記事でもご紹介しております。詳しくは、こちらをご覧ください。
介護福祉士になるには?|国家試験の難易度やおすすめの勉強法を紹介
5. 介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護支援専門員(ケアマネジャー)は自治体によっては、生活相談員になるために必要な「同等以上と認められる能力を有する」資格と認められます。おもな業務内容は以下のとおりです。
・介護者や支援者の相談
・サービス計画やケアプランの作成
・居宅サービスとの連絡調整や介護保険施設の紹介
近年では、介護支援専門員も生活相談員の資格要件として認められる自治体が増えてきています。自治体によって異なりますので、ご自身が働きたい自治体の資格要件を確認してください。
介護支援専門員(ケアマネジャー)については、別記事でもご紹介しております。詳しくは、こちらをご覧ください。
ケアマネジャー(介護支援専門員)ってどういう仕事?仕事内容や資格取得の流れを解説
ケアマネジャーになるには? 試験はあるの?
介護支援専門員になるためには、年1回行われている「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格しなければいけません。さらに合格後に「介護支援専門員実務研修」を修了、都道府県にある介護支援専門員資格登録簿に登録して、介護支援専門員証を受け取る必要があります。5年の有効期限つきなので、更新時に毎回研修などを受講して更新手続きを行なってください。
介護支援専門員(ケアマネジャー)になるための試験については、別記事でもご紹介しております。詳しくは、こちらをご覧ください。
ケアマネジャーになるにはどうすればいいの?|受験手続きについて紹介!
6. その他同等以上と認められる能力を有する者
これまでに紹介してきた5つの資格とほぼ同等の能力や実績がある方も、生活相談員になる資格を得ることができます。ただし厚生労働省の示している基準が不明瞭なので、自治体によって差があり、以下のような実務経験だけで採用される県もあるのです。
いくつかの例をあげて、それぞれの自治体についての資格要件を見てみましょう。
東京都|介護計画作成の実務経験・施設長の経験
東京都で資格要件として認められている実務経験は、以下の通りです。
・特別養護老人ホームにおいて、介護の提供に係る計画の作成に関し、1年以上(勤務日
数180日以上)の実務経験を有する者【介護の提供に係る計画の作成に関し経験の
ある者】
・老人福祉施設の施設長経験者【介護の提供に係る計画の作成や処遇等に、専門的な知識経験を有する者】※施設長経験者とは、施設長として1年以上の実務経験を有する者とする。なお、施設長の要件としては、社会福祉施設長資格認定講習会の課程を修了した者もしくは社会福祉事業に2年以上従事した者である
神奈川県 川崎市|介護保険施設等で2年以上の実務経験
神奈川県川崎市で資格要件として認められている実務経験は、以下のとおりです。
・介護保険施設又は通所系サービス事業所において、常勤で2年以上(勤務日数360日以上)介護等の業務に従事した者(直接処遇職員に限る)
上記にある、介護保険施設または通所系サービス事業所に該当するサービスは、以下のとおりです。
○指定サービス
通所介護・通所リハビリテーション・介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護療養型医療施設・特定施設入居者生活介護・短期入所生活介護・短期入所療養介護
○地域密着型サービス
認知症対応型共同生活介護・地域密着型介護老人福祉施設・地域密着型特定施設入居者生活介護・小規模多機能型居宅介護・認知症対応型通所介護
また、 「直接処遇職員」とは以下のとおりです。
・管理者、生活相談員、看護職員、介護職員、機能訓練指導員、栄養士、介護支援専門員、介護保険の人員基準上記載の必要がある職種に従事していた者
事務職員・清掃員・サービス提供責任者・福祉用具専門相談員等といった、サービス利用者に介護で直接対応しない職業は、実務経験として認められないので注意しましょう。
広島県|介護福祉サービスによって違う
広島県で資格要件として認められている実務経験は、以下のとおりです。
介護老人福祉施設及び短期入所生活介護事業所の生活相談員
・特別養護老人ホーム、通所介護事業所、介護老人保健施設及び短期入所生活介護事業所において、実務経験が通算で 1 年以上ある介護福祉士
通所介護事業所及び指定認知症対応型通所介護事業所の生活相談員
・社会福祉施設等に勤務したことのある者で、実績等から利用者の生活の向上を図るため適切な相談、援助等を行う能力を有する旨を法人が申し立てた者
「法人が申し立てた者」とありますが、所属する法人が申し立てればすぐに働くことができるわけではなく、法人からの申し立て内容を広島市が勘案し、認められてから初めて生活相談員として従事することができるようになります。
生活相談員に向いているのはどんな人?
生活相談員とはどういった職業なのかについてや、どうすれば生活相談員になれるのかについてはおわかりいただけたのではないでしょうか。
ここからは、生活相談員の仕事内容と、どんな人が生活相談員に向いているのかについてご紹介します。
生活相談員のお仕事とは?
生活相談員は、介護福祉施設で介護サービスを利用したい方やそのご家族からの相談を受けたり、利用するための手続きを行ったり、ケアマネジャーとの連絡や調整を行ったりなど、多岐にわたります。
働く施設にもよりますが、施設内外の人員とのあらゆる相談や連絡・調整をするのが主な業務です。また、規模の小さな施設では、現場での介護や受付・窓口対応・利用者の送迎などを行うこともあります。
どんなところで活躍できるの?
生活相談員の代表的な勤務先と、配置基準をご紹介します。
・通所介護施設(デイサービス)
原則として、1名以上の常勤が定められています。
・ショートステイ
利用者100人ごとに、1名以上の常勤が定められています。ただし、20名未満の併設事業所は除きます。
・特別養護老人ホーム
利用者100人ごとに、1名以上の常勤が定められています。
・介護付き有料老人ホーム
利用者100人ごとに、1名以上の常勤が定められています。
・介護老人福祉施設
利用者100人ごとに、1名以上の常勤が定められています。
施設の種類や規模によって人数は異なりますが、ほとんどの介護施設では1名以上の常勤が定められていると考えてよいでしょう。
生活相談員に向いている人とは?
生活相談員には、必要とされるスキルや、向いているとされている人の特徴があります。
たとえば、サービス利用者やそのご家族から相談を受けるため、人と接するのが好きで、コミュニケーションスキルの高い人が向いています。また、施設内外のさまざまな人と相談や連絡、調整をしなければならないので、調整能力も必要です。
必要に応じて計画書や各機関に提出する書類の作成もしますので、事務能力もあると望ましいでしょう。
生活相談員のやりがい・魅力とは?
生活相談員として働く魅力や仕事のやりがいについても見ていきましょう。
生活相談員という職業の一番のやりがい・魅力は、やはり社会に貢献できるということではないでしょうか。サービス利用者やそのご家族、施設の他の職員や地域の人といった、さまざまな人間関係をつなぎ、調整役としてスムーズな介護をサポートするというのは非常に重要な役割です。
また、サービス利用者やご家族の悩みを解消したり、より望ましいサービスを提供したりすることによって、感謝の言葉を得る機会が多いというのも、やりがいのひとつでしょう。
さらに、生活相談員としてキャリアを積むことで、施設やサービスの責任者のような重要な立場になったり、他の介護に役立つ資格の受験要件を満たせたりと、キャリアアップを目指せる点も魅力です。
生活相談員のお給料はどれくらい?
職業で気になるのは、やはりお給料ではないでしょうか。ここからは、令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果に基づき、生活相談員のお給料についてご紹介します。
常勤の平均月給は約33万8000円
令和三年の常勤の生活相談員、支援相談員の平均月給は、33万8,370円です。令和2年度と比較すると、8,250円上昇しています。
非常勤の平均月給は約29万1000円
一方で、非常勤の生活相談員、支援相談員の平均月給は29万820円で、令和2年度より3,510円下降しています。
生活相談員の給与は高い?
介護職員の平均月給は常勤で31万6,610円、非常勤で19万8,520円となっているため、生活相談員の平均月給の方が高いです。
介護支援専門員と比較すると、 常勤の平均月給は35万3,560円と生活相談員よりも高い平均値となっていますが、一方で非常勤は22万7,200円となっており、生活相談員の方が高くなっています。
介護業界の他の資格と比べると、生活相談員の給与は比較的高い水準でまとまっています。介護職員で給与UPを目指す方は、生活相談員の資格要件を満たして、キャリアアップを目指すのもおすすめです。
生活相談員は需要アリ? 求人情報をチェック!
生活相談員の求人数は比較的多く見られるため、需要は高いと言えるでしょう。デイサービスや介護付き老人ホームのような介護施設でも、常勤を求められる職業のため、これからも必要とされることは間違いありません。
正社員のほかに、アルバイトやパートのような雇用形態でも、生活相談員の需要は今後も高いことが予測されます。リジョブケアでは、介護だけでなく、看護やリハビリ施設など、幅広い業種の求人を掲載しています。生活相談員の求人をお探しの方は、一度利用してみてはいかがでしょうか。
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生活相談員になるには資格要件アリ! 経験だけでなれる場合も
生活相談員という資格はありませんが、生活相談員になるためには、必須の資格要件をクリアすることが必要です。しかし、厚生労働省の定めている必要条件があいまいなため、自治体によっては必要資格とほぼ同レベルの実力があることや、業務経験年数が長いという理由で、生活相談員になることができます。
自治体によって条件は異なりますが、実務経験を1~2年積むと、生活相談員になることができるケースが多いです。生活相談員になることを考えているのであれば、まずは住んでいる地域の自治体に問い合わせて必要条件を確認しましょう。また、求人を出している施設の条件もチェックして、生活相談員になるプランを立てることをおすすめします。
引用元:
東京都福祉保健局 「通所介護及び短期入所生活介護事業所における 生活相談員の資格要件について」
川崎市 「指定介護老人福祉施設及び指定通所介護事業所における生活相談員の資格要件について」
広島市 「各サービスの生活相談員の資格要件について」
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電子政府の総合窓口 「社会福祉法」
湘南国際アカデミー 「生活相談員になるためには?」
生活相談員の資格要件とは?|厚生労働省 「社会福祉主事について」
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医療のお仕事辞典 「精神保健福祉士の仕事とは」