【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本 vol.4】「お金を貸してほしい」と言われたら、どう対応する?
介護技術だけでなく、コミュニケーション力や対応力など、様々な知識と能力が求められる介護職。利用者・入所者はそれぞれに違った背景や価値観を持っているから、現場で起こりがちな困りごとも色々…。そんな日々に少しでも役立つ情報をお届けできればと、基本の対処法をご紹介する当企画。今回は、訪問介護先での金銭対応について取り上げます。
訪問すると、利用者が玄関先で慌てた様子で待っていた。声をかけると「お金を貸してほしい」と言われ…。
いつもは玄関先で待っていることはない利用者Cさん。そわそわと慌てた様子からも、訪問介護ヘルパーが来るのを待ち構えていたよう。声をかけると、「急いで隣町の息子のところに行かないといけないの。でも、持ち合わせがないから、5,000円貸してもらえないかしら」と言われました。返答に困っていると「本当に困っているの。絶対に次の時に返すから、お願い」と涙目で訴えてきます。
本当に困った様子の利用者を前にすると、「貸せない金額でもないし、困っているなら貸してあげようか…。黙っていれば、上にも分からないよね…」と心が揺れる人も多いのではないでしょうか。では、どう対応するのがよいのか。基本の対応をおさらいしましょう。
ポイント1:金銭の貸し借りは金額にかかわらず禁止
当然ですが、金銭の貸し借りは、絶対に行ってはいけないこと。訪問介護先で利用者と1対1の状況、しかも涙目で訴えられると、情けをかけたくなるのも人情ですが、そこはプロ意識をもって、規則で禁止されている旨を説明し、ご理解いただきましょう。
ですが、実際に利用者が息子さんのところに行かなければいけないのであれば、本当に困っているでしょう。玄関先に出て待っているほどなので、緊急性も高いのかもしれません。なので、次のポイントでは、訪問介護士としてできることに目を向けましょう。
ポイント2:話をしっかりと聞く
まずは、利用者に何があったのか、話を聞きましょう。なぜ今、お金を借りてまで息子さんのところに行かなければならないのか。その内容によっては、早急にケアマネージャーの現実的サポートが必要かもしれません。状況を正確に把握することで、訪問介護としてできることが見えてくるはずです。
ポイント3:対応・判断に困ったら、自分の事業所の管理職に連絡して指示を仰ぐ
『訪問介護として現場でできること』の範囲で対応できなければ、自分の事業所の上長へ連絡して指示を仰ぎましょう。金銭の貸し借りは、トラブルになれば人間関係を一瞬で壊してしまいます。
介護のお仕事は一人で行うものではなく、チームで動いているもの。自分もチームの一員であることを忘れずにいましょう。この場合は、個人として対応するのではなく、事業所に連絡して指示を受けるのが、利用者にとってもヘルパーにとってもベストな選択だと言えます。
「お金を貸して」という利用者へ対応するときの2つの心得
1.金銭の貸し借りは絶対に断る
2.どんな状況でも、情に流されない
本当に困っていそうな人にお願いをされると、断ることに良心が痛むこともあるでしょう。でもここは、背筋を正してプロ意識を忘れないようにしましょう。介護のお仕事において、利用者と介護職との『個』としてのコミュニケーションは大切ですが、金銭と物品が関わる場合はトラブルの元になることを心しておきましょう。あくまでも、『利用者』と『事業所』の立場を忘れないことが重要です。
文:細川光恵
参考:「ケアスタッフの言葉かけ接遇会話集」著者:高橋啓子 山本陽子
監修
中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役
1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。