チームだから理解も仕事もグンと広がる!【介護リレーインタビューvol.55/管理栄養士 鈴木美紀さん】#2
介護業界に携わる皆さまのインタビューを通じて、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。
お話を伺ったのは…
介護老人福祉施設 ラペ二子玉川
管理栄養士 鈴木美紀さん
千里金蘭大学 栄養学科で管理栄養士の資格を取得。卒業後は病院や福祉施設に食事を届ける給食会社に3年間勤務。その後、特別養護老人ホームに6年間勤務。夫の転勤に伴って6年前、ラペ二子玉川に入職する。
ご自身のダイエットをきっかけに栄養学を学び、管理栄養士になった鈴木さん。前編では食だけではなく人とも向き合える職場を求めて特別養護老人ホームに転職したお話を伺いました。
後編ではパートナーの転勤に伴って上京した後、ラペ二子玉川に転職してから困ったこと、チームワークだからこそ利用者さんの希望が叶えられた話、栄養士として心がけていることについてご紹介します。
入職と同時期に入居者が入所。名前と顔を一致させるのにひと苦労!

食事レクで提供するお菓子の制作は鈴木さんが担当。この日はお抹茶とティラミスのセット。
――鈴木さんが転職したのは、パートナーの転勤がきっかけでしたね。
私が転職した時期とラペ二子玉川のオープンが重なって、ちょっとたいへんでした。1か月にわたって毎日5~6名の方が入所なさったんですが、顔と名前がなかなか一致しなくて(笑)。
――すでに入居なさっている方を覚えるより、少しずつ覚える方が簡単そうに思いますが?
前からいらっしゃる方だと他のスタッフに確認することもできますし、自分のペースで覚えていくことができます。でも、新しく入居なさる方が毎日いらっしゃると、かなり難しかったですね。
――こちらには何名くらい入居なさっているんですか?
入居者の定員が144名で、24名のショートステイを受け入れています。
――144名はかなりの人数ですね。
入居者の方は食事をするときの席がだいたい決まっているんです。それもヒントになりましたね(笑)。あとは車いすに書かれている名前をチラッと見たり(笑)。少しずつ覚えていって、全員の顔と名前が一致するまで1~2か月かかりました。
――ストレスが溜まったときは、どうやって解消しているんですか?
お休みの日に夫と美味しいものを食べに行ったり、映画を観に行ったりして息抜きしています。夫も甘い物が大好きなので、話題のスィーツやケーキを一緒に食べることもあるんですよ。
チームで働いているからこそ、多角的な視点で判断できる!

食事形態や栄養だけ見るのではなく、食べる人にも向き合いたくて介護施設に転職した鈴木さん。
――大阪ではチームで働くために特別養護老人ホームに転職なさいましたが、こちらでも同じですか?
そうですね。ケアマネージャーや介護士、看護師、医師、そして管理栄養士がそれぞれの専門分野から意見を出してサポートしています。
――チームで働くメリットで、どんなことがありますか?
例えば。ものを飲み込むのが難しくて、おかゆを召し上がっている方がいらっしゃいました。ご家族から「以前は普通のご飯を食べていた。おかゆじゃなくてご飯に変えて欲しい」とご要望があったんです。私ひとりでしたら、普段の生活の様子や体調など細かなことは説明できません。看護師や介護士がご家族のご要望に対して、「〇〇〇な状態だから、ご飯よりもおかゆの方がいい」と、一緒に説明してくれました。ご要望に対して、それぞれの専門の立場から意見をもらえるのはとても心強いですね。
――専門家の視点は必要ですよね。
同じようなケースで、「おかゆではなくて普通のご飯が食べたい」というご要望に、歯科医に飲み込みむ力を検査してもらって許可が下りたこともあります。少し柔らかめのご飯ですが、ご要望が叶えられて私も嬉しかったです。
「〇〇だからダメ」ではなくて、できる限りご希望にお応えしたい。「どうすればいいのか」を考えるのが栄養士の腕の見せ所だと思っています。
――他にもありますか?
減塩食の方から「自分も味噌汁を飲みたい」というご要望がありました。看護師と医師に相談して、検査結果などから召し上がっても問題ないことが分かって、ご希望に沿うことができました。
――誰かに相談できる環境は大事ですね。
誰かしらスタッフが近くにいて、すぐ相談できる環境は本当にありがたいですね。入居なさっている方にとっても、ご要望やご不明な点を伝えられるのは大きなメリットだと思います。
月1回の食事レクで、お腹だけはなく心も癒やしたい!

月1回のペースで開催される食事レク。鈴木さんが企画し、参加者ひとりひとりにお茶を点てているそう。
――鈴木さんは入居者のみなさんの食事を管理する他に何を?
月に一度、お茶を点ててお菓子を召し上がっていただくレクリエーションがあるんです。その企画をしています。
――お茶を点てるとは、ずいぶん本格的ですね。
最初はお茶を習っていた方がお茶を点てていらしたのをお手伝いしていたんです。その方が辞めることになり、「さて、どうする!?」となって(笑)。見よう見まねで教わりながら私が担当することになりました。
――レクには何人くらい参加なさるんですか?
だいたい20名くらいですね。お一人お一人にお茶を点てるので、かなり重労働です(笑)。
――食事レクで失敗したことはありますか?
おしるこをお出ししたことがあるんですが、そのときに鍋を焦がしてしまったことですね。つけ置きしても、焦げが取れなくて本当に困りました。家の鍋でしたら、少しくらいの焦げが残っていても見逃せますが、施設で使う鍋は許されないんです。
――どうしたんですか?
介護士の中に調理師だった方がいて、彼が落としてくれました。新品のようにきれいになっていたので、何か奥の手を使ったのかと思ったら、ひたすら擦って落としたそうです。本当に助かりました。
――そういった困りごとにも対応してくださるのは、普段からコミュニケーションが取れているからですね。
食事レクをするにも、お部屋から会場まで誘導が必要な方もいらっしゃるし、召し上がるときに介助が必要な方もいらっしゃいます。介護スタッフの協力がないと、できないことがたくさんあります。
――鈴木さんが食事レクで嬉しいことは何ですか?
食の細い方が美味しそうに召し上がってくださる様子をみると「やってよかった」って思います。お茶を点てた後はおしゃべりしたり、カラオケで歌ったり、みなさんとても楽しそうなんです。みなさんのいつものご様子とは違う面が見られるので、私も楽しいですね。
――これからどんなことをなさる予定ですか?
みなさんのリクエストにお応えして、食事レクをもっと進化させたいですね。お菓子を作るときは、飲み込みやすい形態という条件がありますが、そこを工夫しながらみなさんを癒やしたいですね。
鈴木さん流! 管理栄養士の心得三か条
1.食事の様子を観察しながら、積極的に関わる。
2.要望に対して、まず何ができるかを考える。
3.さまざまな視点から意見をもらって参考にする。
撮影/森 浩司