介護予防運動指導員の資格を取得するには? 受講対象者や研修内容、メリットや就職先を紹介
介護に関してはさまざまな資格がありますが、「介護予防運動指導員」という名称を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。しかし、どんな仕事をする資格なのか、資格を取るにはどうすればいいのかなど、疑問点もあることでしょう。
そこで、今回は介護予防運動指導員について、資格の概要や仕事内容、取得方法をお伝えします。介護予防運動指導員になるメリットや、どんな場所で働けるのかについても解説するので、興味のある人はぜひ参考にしてください。
介護予防運動指導員とは?どんな資格?
介護予防運動指導員とは、要介護者を増やさないよう、高齢者に対して生活習慣や運動面で指導・サポートをおこなう仕事です。将来的な介護を予防する観点から、専門的な知識を持ち、適切な指導をします。
なお、介護予防運動指導員の資格は、指定の資格を持っている人が必要な講習を受けたうえ、試験に合格することによって取得できます。詳しい取得方法は次の章で詳しく解説するので、そちらを確認してください。
介護予防運動指導員の仕事内容
介護予防運動指導員は、高齢者一人ひとりの体力や状況に合わせて介護予防の計画を立てます。内容は、筋力の維持・向上のために運動の指導をおこなったり、食事・栄養指導をしたり、口腔ケアに関する助言をしたりと幅広いです。
また、指導の効果を客観的に判断するために、事前評価・事後評価もおこないます。
介護予防運動指導員の資格を取得するには? 受講対象者とは?
ここでは、介護予防運動指導員の資格取得の流れや受講対象者となる人の詳細について解説します。資格に興味がある人、取得を考えている人はぜひ参考にしてください。
資格取得の条件|指定講習の受講&修了試験の合格
介護予防運動指導員の資格を取得するためには、指定の講習を受講し、修了試験に合格することが条件となっています。
指定講習の受講対象者とは?
指定講習は誰でも受講できるわけではなく、受講対象者となる人には条件が定められています。ここでは受講対象者の詳細について確認しておきましょう。
医療に関係する職業|医師や看護師など
医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などといった資格を持つ人が該当します。
介護福祉に関連する職業|介護福祉士や社会福祉士など
社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、介護職員基礎研修課程修了者、訪問介護員2級以上で実務経験が2年以上、実務者研修修了者、初任者研修修了者で実務経験が2年以上の方が該当します。
健康運動指導に携わる職業|健康運動指導士やアスレチックトレーナーなど
健康運動指導士や健康運動実施指導者、ヘルスケアトレーナーやアスレチックトレーナー、スポーツプログラマ―1種および2種、パーソナルトレーナー、フィットネストレーナーなどといった資格が該当します。
栄養士
介護予防運動指導員は、高齢者の栄養改善をおこなう役割も担います。そのため、栄養に関する知識に精通した管理栄養士を含む、栄養士の資格を有する人も受講対象者に含まれているのです。
指定講習ではどんなことを学ぶの? 研修内容の一例を紹介!
実際に指定講習ではどのようなことを学ぶのでしょうか。ここでは研修内容の一例についてご紹介します。
1. 介護予防について|概論や評価学実習など
まずはベースとなる、介護予防に関する基礎知識を深めます。介護予防の概要、介護予防が目指す社会の変化、地域づくりによる介護予防の意義や専門職の役割、介護予防評価の概要と評価法の習得などについて学習していくのです。
2. 高齢者筋力向上トレーニング|特論・実習
加齢に伴う筋力低下を防ぐ観点から、筋力向上を目的としたトレーニングについて学びます。実際にトレーニングに使用する機械を使い、高齢者の方が楽しみながらトレーニングを続けていけるような工夫についても考え、スキルを高めていくのです。
3. 転倒予防|特論・実習
高齢者の方がおこなう運動は、転倒を予防するうえでも非常に重要です。転倒してしまうと寝たきりになったり、日常生活をスムーズに送ることができずに認知や精神面にも影響をおよぼしたりします。
そのため、転倒予防のための運動について多角的に学ぶほか、機械を使わない方法についても学習するのです。
4. 尿失禁予防|特論・実習
骨盤底筋群のゆるみや膀胱・神経の問題、スムーズに歩行ができない、認知症など、さまざまな要因で尿失禁は起こります。高齢者の方には外出を控えてしまう、楽しみが制限されてしまう、自尊心が損なわれるなどさまざまな影響をおよぼすことがあるのです。
そこで、尿失禁の種類に沿った予防法や改善策、運動による効果などについて学習していきます。
5. 認知症予防|特論・実習
日常生活において刺激が少ないことは、認知症のリスク要因となりえます。そのため、認知症予防につながる運動について実習をまじえて学んでいくのです。
資格試験の難易度は?合格率は高い?
介護予防運動指導員の講習を受けた後におこなわれる修了試験は難しいのでしょうか。難易度や合格率はどの程度なのか、不合格の場合どうすればいいのかなどを確認しましょう。
合格率は高め。講義をしっかり受けていれば難易度は高くない
介護予防運動指導員の修了試験の合格率は、公表されていませんが、90%以上ともいわれており比較的高い傾向にあります。
そもそも、介護予防運動指導員は介護や医療関係の資格所持者などが対象なので、ベースとしてある程度の知識を持っている人が多いです。また、試験は講習で学んだ内容から出題されるため、きちんと講習を受けて復習をしていれば難しくないといえるでしょう。
再受験も可能
仮に修了試験で不合格になっても、1年以内であれば再受験することが可能です。
ただし、最初の試験結果が出るまでに1~1カ月半ほどかかります。この時点で不合格であることが判明するので、再試験を受ける場合は、講習からさらに時間が経ってしまうことになるのです。
そのため、再受験で合格するには、しっかり講習の内容を復習してから臨むことが肝心です。
資格は3年ごとに更新
介護予防運動指導員資格の登録期間は3年間と決まっており、3年ごとに更新申請書が届きます。資格を維持するためには、所定の期間内に顔写真付きの申請書の提出と更新料の支払いを済ませなければなりません。失効させないため、忘れずに手続きをおこないましょう。
介護予防運動指導員の資格を取得するメリット
介護予防運動指導員は、条件をクリアしており受講できた人であれば、比較的取りやすい資格であることがわかりました。では、介護予防運動指導員の資格を取ることで得られるメリットとはどんな点なのかを見ていきましょう。
将来性がある
加速する高齢化社会において、介護業界の人手不足という問題があります。そこで、介護する側の負担を少しでも軽減するため、介護予防の観点が重要視されているのです。今後ますます需要が高まると考えられ、将来性に期待できる職業といえます。
スキルアップにつながる
介護予防運動指導員は、介護予防の専門家として深い知識を身につけられることから、より質の高いサービスの提供を目指せます。
個々の利用者の状態を確認し、適したプログラムを立てることができるようになれば、利用者や周りの職員たちからの信頼も厚くなるでしょう。
必要とされる就職先が多い
介護予防運動指導員は、さまざまな現場でニーズがある資格です。老人介護施設だけでなく、スポーツジムや病院、リハビリセンターなどでも求人が出されていることがあり、就職先の選択肢が多く、幅広い職場での活躍が期待されています。
給与アップにつながる
働く場所によっては、介護予防運動指導員の資格手当がつくところもあります。資格手当によって給料が上がる可能性があるので、仕事を探す際は待遇面もチェックしてみましょう。
夜勤がない
介護や医療の職場では夜間勤務があることも多いです。しかし、介護予防運動指導員の仕事は基本的に日中におこなうものなので、家庭の事情や肉体的な理由などで夜勤ができない、あるいは夜勤が苦手という人でも働きやすいでしょう。
介護予防運動指導員の就職先は?転職にもおすすめ! 求人情報をチェック
前章のメリットのなかでお伝えしたように、介護予防運動指導員の資格はさまざまな場所で需要があります。どのような場所で活躍できるのか、就職先の例を見てみましょう。
なお、就職・転職の際には労働条件や待遇などをよくチェックして、自分に合いそうな職場を選ぶことも大切です。実際の求人情報を確認したい人は、下記のページから検索してみてください。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設
1つめは、特別養護老人ホームなどの介護施設です。入居中の利用者に対して筋力・体力を落とさないように運動計画を立てたり、要介護入居者の在宅復帰に向けたプログラムを組んだりといったサービスを提供します。
総合病院やリハビリセンター
2つめは、総合病院やリハビリセンターです。病院では、病気やケガで入院中の高齢者を対象に、介護予防のための計画を立てて運動指導やケアサービスをおこないます。リハビリセンターでも同様に一人ひとりのプログラムを組み、サポートしながら機能回復を目指します。
フィットネスクラブやスポーツジム
3つめは、フィットネスクラブやジムなど運動・トレーニングをする場所です。全国的に運動施設が増加し、高齢者の利用も増えていることから、介護の専門知識と介護予防の知識をあわせ持つ介護予防運動指導員の資格所持者は需要があります。
一人ひとりの会員の体力や運動能力などを確認しつつ、適切な指導に当たりましょう。
おすすめの指定講習を紹介!
ここでは、介護予防運動指導員の指定講習を受けられる講座を厳選してご紹介します。通学だけでなく通信で取得できるところもあるため、ぜひチェックしておきましょう。
セントラル|介護予防運動指導員の養成講座
セントラルスポーツは「0歳から一生涯の健康づくりに貢献する」を企業理念として掲げ、全国200カ所でスポーツクラブなどを展開している会社です。
さまざまな事業やプログラムをおこなっていますが、そのうち介護予防プログラムの一環として、介護予防運動指導員の養成講座を実施しています。
講師はセントラルスポーツ所属の介護予防主任運動指導員が努め、経験にもとづいた指導を受けることが可能です。全国各地で受講できるため、詳細はホームページをチェックしましょう。
ニチイ|介護予防運動指導員養成講座
東京都健康長寿医療センターがまとめた介護予防プログラムをベースとして、ニチイ独自の現場での事例やノウハウからの学びをくわえ、より実践的な内容を習得できるというのが特徴です。
定員制での細やかな指導や、マシンを使った実践的な授業も魅力となっています。こちらも全国各地の教室で受講が可能です。
藤仁館医療福祉カレッジ|介護予防運動指導員養成講座
福祉のエキスパートを育成する藤仁館医療福祉カレッジでは、介護予防運動指導員養成講座を実施しており、わずか4日という短期間で講座を修了できるのが特徴です。
1年を通じ隔月で実施しているため、自分のスケジュールとの調整もしやすいというメリットがあります。
講師は介護系や医療系、健康運動指導士など各分野の専門知識や技術を持った人が担当するほか、実際に使用する機械に触れながら実践的演習を盛り込み、即戦力として活躍できるような工夫がみられるのが特徴です。
大宮や高崎、横浜など東京以外の校舎でも受講が可能となっています。
東京療術学院|介護予防指導員養成講座
東京療術学院は代替医療の総合専門学校として、基礎医学や東洋医学をはじめさまざまなカリキュラムを組み、各分野のエキスパートの育成をおこなっています。そのなかで介護予防指導員養成講座も実施しており、3日間での取得が可能です。
なお、3日間連続で通えない場合でも、月日をまたいだ受講を可能にし、試験にオンラインシステムを導入するなど忙しい人にも講座を修了しやすいような対応をとっています。
東京・名古屋会場で講座を受講できるほか、通信でも受講が可能となっており、仕事や家事・子育てなどで多忙な人にとっても受講しやすいのがメリットです。
介護予防運動指導員は高齢者の健康を支援するサービスをおこなう将来性のある資格
介護予防運動指導員は、高齢化が進むなかで介護が必要な人を1人でも少なくするため、活躍が期待される資格であることがわかりました。今後一段と需要が高まり、将来性の高い仕事だと考えられています。
さらに、介護の現場だけでなく、リハビリセンターやスポーツクラブなど、就職先の選択肢が多く活躍の幅が広がることを期待されている職業でもあります。取得方法や受講資格なども確認し、やってみたいと考えた人は、ぜひ介護予防運動指導員を目指してみてください。
引用元
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所 介護予防運動指導員養成事業 介護予防運動指導員等養成事業
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所 よくあるご質問(Q&A)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症はじめの一歩
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