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特集・コラム 2022-06-17

柔道整復師になるのは難しい?柔道整復師の資格や取得するメリットについても紹介

よく似たような資格と思われがちの柔道整復師と整体師ですが、実際はさまざまな面で違いがあります。この違いを知っておかないと、施術そのものが違法行為になってしまうこともあるので注意が必要です。

この記事では、柔道整復師と整体師の違いを解説するとともに、柔道整復師になる方法や資格を得るメリットなどをご紹介します。

柔道整復師とは? 必要な資格

柔道整復師は、整体師とも呼ばれます。昔は「ほねつぎ」という看板を良く見かけましたが、骨折や捻挫、脱臼をしたとき、骨を正しい位置に戻して固定してくれる、医者にかなり近い人ですね。

柔道整復師は、勤務先の研修などを受ければできる、いわゆるマッサージ師とは違って、国家試験を受験し、合格しなければなりません。資格を持っていれば開業もできますし、信用も得られますね。

国家資格 柔道整復師

「柔道整復師」という国家資格は、2002年にジュネーブのWHO(世界保健機関)にて正式に認知されました。それ以降、アジアやヨーロッパの各国でも興味を持たれるようになり、世界の国々で施術ができるようになってきています。柔道整復師は、もはや国際的な資格と言えます。外国人の受験者数も増えています。

柔道は世界的なスポーツになりましたから、柔道から発祥したこの施術師という仕事が必要とされないわけがありませんね。今後は外国でも資格を取ることができるようになり、外国人の柔道整復師が増えていくことでしょう。

関連法律 柔道整復師法

柔道整復師法は、昭和24年に「あん摩、はり、灸、柔道整復等営業法」として制定されました。昭和45年に単独の柔道整復師法が制定されました。

内容は、主に柔道整復師の業務、義務に関して規定しています。
また関連法案として、昭和47年には柔道整復師学校養成施設指定規則が施行され、養成施設の教育内容が指定されました。

柔道整復師と整体師とはどう違う?

柔道整復師と整体師の大きな違いは「資格」です。柔道整復師は医療系の国家資格ですが、整体師は民間資格なので病気やケガの治療行為はおこなえません。整体師の仕事は、治療ではなくあくまで患者さんの体のセラピーがメインとなります。

整体師は患者さんに対する治療行為が認められていないため、働く場所もカイロプラクティックやリラクゼーションサロンなど病気やケガの治療とは関わらない施設が中心です。

柔道整復師でないとできない施術、資格がなくてもできる施術について以下で詳しく解説します。

柔道整復師でないとできないこと

柔道整復師は、柔道整復や固定法と呼ばれる専門的な施術で患者さんのケガの治療をおこないます。

柔道整復とは、骨折・捻挫・打撲・脱臼・肉離れといったケガに対して手技療法で治療をおこなうことです。また、固定法は柔道整復で治療した箇所が動いてしまわないように、ギプスや包帯などで固定する治療法のことをいいます。この柔道整復と固定法による治療行為は、柔道整復師の資格がないとできません。

柔道整復師は、整体師と同様に患者さんに対してマッサージをおこなうことがありますが、「ケガの治療を目的としたマッサージ」は柔道整復師だけが可能です。

柔道整復師の資格がなくてもできること

柔道整復師の資格がなくてもできることは、基本的に「治療を目的としない施術」です。おもな施術としては、手技による全身矯正やマッサージが挙げられます。

全身矯正は、手技によって骨格の歪み、筋肉のハリやコリの改善などをおこないます。マッサージは、治療ではなくリラクゼーション目的であれば柔道整復師の資格がなくても可能です。たとえば、筋肉のリラックスや血流改善を促すもみほぐしなどが該当します。

施術以外に、患者さんに対して運動指導などをおこなうこともあります。運動指導は専門的な知識があれば、柔道整復師の資格がなくても問題ありません。

柔道整復師になるには① 養成施設で専門の勉強をする

柔道整復師を目指すには、国から柔道整復師養成施設として認められた大学や専門学校で必要な知識・技術を学ぶ必要があります。つづいては、柔道整復師を目指す場合の大学と専門学校の違いを確認しておきましょう。

大学

柔道整復師養成施設として認可されている大学で、柔道整復師に必要な知識・技術を学べます。大学の場合、柔道整復師に関する授業だけでなく、一般教養などさまざまな講義に参加して幅広い知識を学べるのが特徴です。大学を卒業すると学士資格(大学資格)を得られるので、一般企業に就職する際に有利に働くというメリットがあります。

年齢面での特徴を見ると、大学は高校を卒業したばかりの18歳の学生が多いという点が挙げられます。また、大学は4年制ということもあり、専門学校よりも学費は高くなることがほとんどです。

専門学校

専門学校は、柔道整復師に必要な知識と技術をメインとしたカリキュラムで学べるのが特徴です。柔道整復師の資格取得に特化しているため、非常に高い合格率を誇る学校も数多くあります。専門学校の場合、夜間部も設置されているので社会人として働きながら柔道整復師を目指すことも可能です。

そのほかの特徴としては、専門学校は数が多いので選択肢が広い、3年制なので大学よりも学費が安い、早く就職ができるなどが挙げられます。大学とは違い、専門学校は「柔道整復師の知識と技術だけを学びたい」という人に向いているでしょう。

柔道整復師になるには② 国家試験を受験する

学校で必要な知識と技能を身に着け、国家試験の受験資格を得たら、いよいよ受験です。

試験は筆記テストのみで行われます。科目は後述する科目からまんべんなく幅広く出題され、全230問、四肢択一の問題をマークシートで解答します。失点が、必修問題30問中20%未満で、残りの200点中120点正解することが合格ラインとなります。

合格して免許をもらえば、正式に「柔道整復師」としてさまざまな分野で活躍をしていくことができます。

受験資格

受験資格は、文部科学大臣が指定した学校または都道府県知事が指定した柔道整復師養成施設等で最低3年間以上のカリキュラムを受講し、卒業または卒業見込みであることです。

また、柔道整復師として働くことが難しい心身の障害、麻薬の中毒者、罰金以上の刑に処せられたことがある者等は欠格事由として資格は与えられません。

試験日・試験地

1989年(平成元年)までは、当道府県知事が認定試験を行っていました。今は毎年1回、3月に全国10カ所の会場で実施されています。

会場の場所は、北海道・宮城県・東京都・石川県・愛知県・大阪府・広島県・香川県・福岡県・沖縄県となっています。

試験内容

試験科目は、解剖学・運動学・生理学・衛生学・公衆衛生学・病理学概論・一般臨床医学・外科学概論・整形外科学・リハビリテーション医学・柔道整復理論・関係法規です。

受験料

受験手数料は16,500円です。

柔道整復師になるには③ 免許を登録する

柔道整復師の免許は、柔道整復師法第8条のⅡ第1項にもとづいて、柔道整復師名簿に登録することによって交付されます。2018年3月31日現在の登録者数は10万6,126名です。

名簿への登録手続きは、申請書用紙を郵送またはPDFで取り寄せ、記入して東京都港区にある公益財団法人 柔道整復研修試験財団・登録担当へ申請をします。国家試験の合格発表後に諸手続きをしましょう。

柔道整復師の国家試験の難易度・合格率は?

厚生労働省の発表によると、過去5年の合格率は以下のようになっていました。

2017年:58.4%
2018年:65.8%
2019年:64.5%
2020年:66.0%
2021年:62.9%

平均すると63%ほどです。柔道整復師の試験が開始された当初は、合格者は80%以上が多く、その後も70%前後で推移していましたが、2014年から現在までは50~60%台で推移しています。この傾向からみると、柔道整復師の試験の難易度は年々上がってきているといえるでしょう。

しかし、そのぶん柔道整復大学・専門学校などの養成施設が増加傾向にあるため、さまざまな教育環境を選択できるようになりました。そのため、上記のような養成施設でしっかりと勉強すればそれほどむずかしい試験ではないようです。

就職には困らない? 柔道整復師の需要

かつては接骨院を設立して、独立開業する人が圧倒的に多かったのですが、最近は20%しかいません。残りの80%の柔道整復師は、接骨院をはじめ病院・診療所・介護関連事業所・スポーツジム等で雇用されています。

どこでも人手不足のため、この資格を持てば就職には困らないと言えそうです。実際に求人情報を見てみると、募集人数が他の求人と比べて桁違いに多いことがわかります。

開業をするのでなく雇用されて働きたいと思うなら、また開業する前に雇用されて修行を積みたいと思うなら、たくさんの受け皿がありますから、自分に合ったやりたいことができる施設を探すことが大切です。

整骨院

柔道整復師の就職先としてもっとも多いのが整骨院です。複数の整骨院を展開している運営会社でしたら、社員教育が充実していたり、独立を支援してくれたりするシステムを用意しているところもあります。

実践を積むためにも、規模の大きい整骨院はおすすめです。施設の設備が整っている、最新の機器が取り入れてあれば、働きながらさらに学ぶことができるからです。柔道整復師としてスキルアップするには、いかに多くのお客様に施術をするかが勝負になります!

介護施設

柔道整復師は講習を受けて機能訓練指導員になることができますが、介護施設ではひとり以上の機能訓練指導員の配置が義務付けられていますから、特別養護老人ホーム・デイサービスでは常に募集しているような状態です。

高齢者が多い介護施設は、技術を磨く格好の場所です。身体のいろいろな部位に不調をきたしているお客様が数多くいるので、ひとりとして同じ症状、同じ施術で良いはずはありません。一番需要があり一番勉強になるのは介護施設かも知れません。

整形外科

整形外科では医師のお手伝いをする仕事をすることになります。お客様(患者さん)から見たら同じ「先生」ですから、責任を持って許された施術行為を行いましょう。

また、医師とは異なる立場でお客様(患者さん)に接するメリットを生かして、お客様とのコミュニケーションから症状を把握する手腕を身に着けることもできます。

ただし、深刻な症状のお客様も多いですから、医療従事者としての自覚をいっそうしっかり持って働きたいところです。

スポーツジム

スポーツジムでは、トレーナーとしてお客様の身体についてのアドバイスをすることになります。選手のマッサージや生活上の注意・運動について提案をすることもあります。

プロスポーツ選手には担当のトレーナーが付いて、日々のトレーニングのアドバイスをしたりマッサージを施したりするのが普通です。個別に担当する場合は、そのお客様の細かい症状や情報を把握し、朝から晩まで気を遣いましょう。

また、ジムで身体の部位を傷めてしまったお客様には応急処置をして、医師に診てもらうよう適切なアドバイスをすることも仕事として大切なことです。

柔道整復師の資格を取得するメリット

柔道整復師の資格を取得することで、一体どんなメリットを得られるのでしょうか。ここでは、具体的にメリットをご紹介します。

活躍の幅が広い

柔道整復師は就職先の幅が広い点がメリットです。整骨院や接骨院のほかにも、総合病院、福祉施設、介護施設、トレーニングジムなどさまざまな場所で勤務できます。

特定の施設に勤めるという形ではなく、スポーツ選手やアスリートの専属トレーナーとして活躍することも可能です。また、プロや企業のスポーツ団体に所属してトレーナーとしとて働くという形もあります。ほかの医療系国家資格を比較しても、柔道整復師は活躍の幅は非常に広いといえるでしょう。

独立開業を目指せる

柔道整復師は、保険適用の治療行為がおこなわれる施設を開業できます。医療系国家資格のなかで保険適用の施設の開業権があるのは、柔道整復師のほかに医師・歯科医師の3資格のみです。

自身の整骨院や接骨院を開業すれば、好きな年齢まで柔道整復師の仕事を続けられます。柔道整復師としての知識・技術以外に経営スキルも必要になりますが、自身の理想とする医療施設を持てるというのは大きな魅力でしょう。

比較的高収入が得られる

厚生労働省が公表している「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、柔道整復師の平均年収は約406万となっています。同調査からほかの医療職の平均年収を見てみると、理学療法士が約427万円、栄養士が約368万円となっていますから、柔道整復師の年収は平均レベルにあることがわかるでしょう。

初任給は、就職する整骨院や接骨院で異なります。整骨院・接骨院によってはキャリアアップ制度(昇給制度)が設けられているので、自身の頑張り次第では平均以上の収入を目指すことも可能です。独立開業して自身が経営する施設を軌道に乗せられれば、施設勤務よりも高い収入を実現できます。

柔道整復師がほかに取るとよい資格を紹介

柔道整復師以外の資格をあわせて取得しておくことで、さらに活躍の場を広げることが可能です。ここでは、柔道整復師がほかに取るとよい資格をご紹介します。

あん摩マッサージ指圧師

あん摩マッサージ指圧師は、手や指を使ってマッサージをおこなう職業です。国家資格であるため、国家試験に合格しなければ資格を取得できませんが、この資格を持つことで保険適用のマッサージをおこなえ、屋号にも「マッサージ」を掲げることが可能となります。

柔道整復師としての仕事に加えて、慢性的な症状に対するマッサージの施術もおこなえるようになるでしょう。

カイロプラクティック

手技によって背骨・骨盤の矯正や身体の部位の調整をおこない、体全体の自然治癒力や神経の働きを高めることを目的とした療法がカイロプラクティックです。腰痛・肩こり・頭痛・筋肉痛・姿勢・自律神経失調症などの改善、ストレス緩和などさまざまな効果が期待できます。

日本におけるカイロプラクティックは民間資格です。カイロプラクティックの知識と技術を学べる民間の専門学校に通い、修了することで資格を取得できます。

オステオパシー

オステオパシーは、手技によって骨格・筋肉の歪みを矯正することで自然治癒力を高める療法です。カイロプラクティックとの違いとしては、体液循環や膜組織からアプローチした施術、体の傷や不調に対する即効性のある施術などが挙げられます。

この資格は、日本オステオパシー連合が実施する試験に合格することで取得可能です。独学で学んで試験を受けられますが、スムーズな合格を目指すなら養成学校に通ったほうがよいでしょう。

柔道整復師は国家資格!知識と技術を身につけてステップアップしよう

混同されがちな柔道整復師と整体師という資格ですが、この2つはおもに資格に違いがあります。また、施術できる内容も異なるため、どんな仕事に携わりたいかをよく考えたうえで資格取得を目指すのがおすすめです。

就職したい勤務先や将来的に独立・開業を目指したいなど目標に合わせて資格を取得し、柔道整復師に必要な知識と技術を身につけてステップアップしましょう。

引用元サイト
厚生労働省 第30回柔道整復師国家試験の合格発表について

日本医学柔整鍼灸専門学校 柔道整復師の合格率や難易度

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