技術の奥深さを体感し、伝承者に転身!【もっと知りたい!ヘルスケアのお仕事Vol.135/長津田むつう整体院 木村順一さん】#1
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。
今回は整体師として、たくさんの方の健康をサポートしている木村順一さんにお話しを伺います。
前編では、数ある整体のなかで「むつう」を選んだ理由、横浜市の住宅街に整体院を開いたいきさつについてお話しいただきました。
お話しを伺ったのは…
長津田むつう整体院
木村順一さん
2004年に「むつう整体」の創始者、木村仁氏に師事。2006年4月に横浜市緑区長津田の住宅街に整体院を開院。2015年から3年間、師匠の木村氏の治療院に副院長として就任。2018年に長津田に戻り、3人体制で施術にあたっている。
慢性化した痛みが完治したのを機に、むつう整体の創始者に師事
――木村さんが整体師になるまでは何をなさっていたんですか?
大学を卒業してから数年間、国内外を旅しました。旅の最後に住み着いた屋久島では漁師や林業、「土木、建築、水産加工業、登山道の整備、ウミガメの産卵保護などいろいろな仕事をしていました。そのときに東京から旅行で屋久島に来ていた妻と出会い、結婚が決まったタイミングで上京し、それから2年ほど、友人の鉄工所を手伝って溶接の仕事をしました。
――「むつう整体」に出合ったきっかけは?
鉄工所の現場で重い材料を運ぶために、腰を傷めてしまったんですね。高校から大学まで続けていたラグビーで膝と腰を傷めていたこともあり悪化させてしまいました。いろいろな療法を試しましたが、いったん改善してもすぐ再発するということを繰り返していました。
屋久島に住んでいた当時、島でむつう整体院を開いていた方と仲良くなり、「むつう整体院は銀座にもある」と教わったのを思い出して、試しにいってみたんです。
――いかがでしたか?
痛みで腰が伸ばせず、地面をみて歩くような状態だったのが、施術を受けて帰るときには直立して普通に歩いていることに驚きました。3~4回通ううち「これは素晴らしい」と思って、師匠に弟子入りを志願し、勉強させていただくことになりました。
――木村さんとラグビーが結びつきません(笑)。
ラグビーをやっていた当時は肉体改造をしていたので、体重が最大94~5㎏ありました。食べても太れない体質のため、身体作りは辛かったです。ラグビーを引退してからは、自分の体質や年齢なりの無理のない生活が習慣になって、30才くらいから70㎏弱くらいが普通になりました。当時を知る友人たちには、「病気なんじゃないか」って会うたび心配されます(笑)。
――一般的な整体と「むつう整体」はどう違うのですか?
ほかの整体のことは詳しく存じ上げませんが、症状を取り除くことが目的の対症療法的なものが多いのではないでしょうか。
むつう整体は根本的に健康になるための数少ない療法のひとつではないかと思っています。
――具体的にはどんなことをなさるんですか?
むつう整体では全身のゆがみの原因は上部頸椎にある、と考えています。頭をのせている上部頸椎がズレると、重たい頭を支えるために全身を精妙にゆがませることによってバランスをとる…つまり、必要があって生じたゆがみなのです。上部頸椎を正しい位置に整えさえずれば、全身のゆがみも同時に解消されると考えています。施術者は「整おう、健康であろう」という身体の働きをうまくいかし、上部頸椎が整う後押しをするだけです。
身体の良い状態が安定するように何回か通院していただき、症状がなくなっても、健康維持のために定期的に来院していただくのが理想です。
――痛みがないから「むつう」なんですね。
施術時に強い刺激を与えない、無理に矯正しないという意味も込められていると聞いています。そのため、赤ちゃんから妊婦さん・ご高齢の方まで安心して受けていただける整体だと思います。
自然が感じられる環境を求めて、庭のある古民家で開院
――整体院がある長津田は、木村さんの地元ですか?
僕の地元は千葉です。師匠から独立の許可をいただき、開業値を選ぶ段になり、個人的には田舎が好きですが、健康に関して困っている方がより多いのは都市部ではないか、と考えました。
師匠から「日本家屋は健康にとって理想的な環境だ」と教わっており、そうした環境で施術をしたいという望みを持って南関東中を巡って物件を探しました。
交通の便が良くて駅から近いところ…という条件を満たす物件はなかなか見つからず、1年間かかってようやくこの地にご縁をいただきました。
――ここは借家ですか?
はい。大家さんにご理解をいただいて、好きなように改装していいとお許しをいただけたので、木の温かみが伝わるような内装にしました。この雰囲気を気に入ってくださる方も多いです。
整えるのは上部頸椎だけ。正しい位置に戻れば、体調は自然と上向きに
――木村さんが「むつう整体」に惹かれたのは、ご自身の体験とお母さまの病気もあったとか。
僕が若いときに母が2回、癌になりました。手術や抗がん治療を受ける際、それと平行して患者自身の治癒力を高めることが大切なのでは…と考えるようになりました。体調を万全な状態に整えた上で治療を受ければ、元気に乗り越えられる可能性が高まるのではないかと思います。幸い母は寛解して、今も定期的に千葉からここに通ってくれています。
――自然治癒力というのは、誰にでも備わっているものなんですか?
年齢にかかわらず、どなたにも備わっています。むつう整体では、第一頸椎と第二頸椎の上部頸椎のズレを元の正しい位置に戻すことで、脳幹の働きや自然治癒力を取り戻す、その後押しをする療法です。身体部ゆがみがあると脳と全身各所をつなぐ神経の流れを妨げ、健康を維持する働きが低下します。ですから、上部頸椎を正し位置に整え、全身のゆがみが解消されることでその方本来の自然治癒力を取り戻すことができる、と考えています。
――第一頸椎はどこにあるんですか?
耳の穴の高さに位置します。頭蓋骨に埋まっているような位置なので直接、力を加えて動かすことはできません。そこで、むつう整体では、上部頸椎のズレと全身のゆがみが自力で整うための最適な体位を形づくって、そのまま数分間安静にお休みいただく方法をとっています。
――当日の体調と施術録を読み解きながら、施術をするんですね。
お客さまご自身の訴えは重要な情報です。そのほか、歩き方によって腰や股関節、膝などに問題を見つけることもありますし、姿勢、各部の動作、顔色、口の開き方、声の出方、手足の冷え方、呼吸などさまざまな情報を参考にしています。
また、ゆがんだ状態で何年も過ごせば、それに合わせて偏った筋肉の付き方をするため、整えてもすぐに戻ってしまうことが多いです。生活習慣も影響します。仕事用のイスやベッド、枕などは1日の使用時ではわずかなストレスでも、毎日積み重ねればばかにできません。衣食住、人間関係を含めたストレスの総量が健康維持の許容量を超えないために、ストレスの引き算を一緒に模索することも大切な仕事のひとつです。
後編では、整体師として仕事を続ける中で木村さんが突き当たった壁について、今後の目標、整体師を目指す人へのアドバイスをお届けします。
撮影/森 浩司