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ヘルスケア 2024-04-13

目指すのは心に寄り添い続ける技術者!【もっと知りたいヘルスケアのお仕事Vol.135/長津田むつう整体院 木村順一さん】#2

ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。前編に続いて、長津田むつう整体院の木村順一さんにお話しを伺います。

前編では数ある整体のなかで「むつう」を選んだ理由や住宅街に整体院を開いたいきさつをお届けしました。後編では、整体師として仕事を続ける中で木村さんが突き当たった壁について、今後の目標、整体師を目指す人へのアドバイスを語っていただきます。

お話しを伺ったのは…
長津田むつう整体院
木村順一さん

2004年に「むつう整体」の創始者、木村仁氏に師事。2006年4月に横浜市緑区長津田の住宅街に整体院を開院。2015年から3年間、師匠の木村氏の治療院に副院長として就任。2018年に長津田に戻り、3人体制で施術にあたっている。

3年間の期間限定で品川院の副院長に就任

長津田むつう整体院の施術ベッド。施術する間、身体を締め付けることがないように施術着も用意しています。

――木村さんのプロフィールを拝見すると、2015年から3年間、師匠の治療院で働いています。何があったんですか?

その当時、師匠が引退される前の東京の最後の拠点として品川に院を構えることになりました。おそらく勉強させていただく機会を作ってくださったのだと思います。たいへんありがたいことでした。

――でも、すでに長津田で開業なさっていましたよね?

僕の整体院に通っていたことがきっかけでむつう整体の勉強を始めた方がいました。その方がちょうど独り立ちするタイミングでしたので、僕の代わりに長津田院を引き継いでいただくことになりました。

――9年間もここでお仕事をしていれば、「木村さんがいい」という方も多かったのでは?

施術方法は同じですし、継いでくださる方はとても信頼できる施術者だということをみなさまに説明しました。それでも僕がいるからと、品川院に通ってくださる方もいらっしゃいました。実は当時、長津田には、遠方から通っている方も多かったんです。その方々にとっては品川の方が通いやすかったのかもしれません。

――品川院には木村さんお一人で参加を?

僕と妻が入りました。妻は僕が整体の勉強をしているのを見て、興味を持ったようです。その当時は会社員として働いていたので、師匠に「土日だけ勉強させてほしい」と直談判したんですよ。

僕が品川院の副院長になったとき、妻は会社を辞めて整体師として参加しました。

「師匠だったら?」という雑念が邪魔をして、自信を失ったことも

施術後に供される自然茶。ほっこりとした温かみのある器もトレーも、すべて院内の雰囲気にマッチ。

――師匠と一緒に働くのはどんな感覚でしたか?

副院長として働かせていただいたこともあり、さまざまな業務を担い、良い体験をさせていただきましたが、もちろんいちばん大事なのは施術です。どんなに忙しいときでもスタッフの施術を師匠が必ず手直ししてくださったのがとてもありがたかったです。

自分が正しいと確信した施術も、ほとんどの場合、大なり小なり修正されるのは勉強になりましたが、施術のたびに「師匠だったら、こう見えるんじゃないか」とか、「こう直されるのではないか」といった疑念に悩まされるようになりました。お客さまの身体の状態と自分の感覚に100%集中することが難しくなってしまって。

――それまで9年間も施術をしてきたのに?

振り返れば、その間は未熟なりに自分ができることを精一杯やっていたものの「これが自分のベストなんだ」という浅いところでお客さまに向き合っていたのかもしれません。

――品川での3年間が終わってどうしましたか?

長津田の整体院に戻ってからも、しばらくは「師匠だったら?」という思念がなかなか拭えませんでした。これではいけないと思い、目の前のお客さまの身体の状態と自分の感覚に集中することに努めるうちに、より細やかに見えてくるようになり、お客さまの反応も変わってきました。

自分なりに9年間続けたうえで、品川の師匠の本物の施術を改めて徹底的に観させていただき、再度独立して自分自身の施術に向き合えたことは、僕にとって不可欠なプロセスだったと思います。

――木村さんご自身はどんな整体師を目指していますか?

健康維持を妨げるレベルのストレスが日々かかっていれば、それを許容範囲に収める必要があります。そのことをこちらのタイミングで押しつけても、上手くいかないケースがほとんどです。お客さまの年齢や体調、体質、タイミングを配慮して最適な言葉がけができる施術者であるために、絶えず柔軟に成長し続けたいと思っています。

施術者のなかには、大きな効果を何度も実現すると「自分はすごい施術家だ」と自負してしまいかねません。むつう整体の場合、施術者はお客さま自身の生命力によって健康になっていく後押しをしているだけ。それでもやはり勘違いする危険があるので、自分のことを絶えず、俯瞰して見つめなければならないと思っています。

――木村さんはこれから、どんなことにチャレンジしたいですか?

この整体院の家屋とお客さまが作ってくださっている雰囲気にすごく愛着があります。できれば末永く、ここで続けさせたいただいたいと思っていますが、それとは別にゆくゆくはここを起点にして、僕らの施術が必要とされるエリアがあればそちらにお邪魔して施術させてもらえたらいいなと思うこともあります。

――この業界を目指そうと考えている方にアドバイスをお願いします。

僕が辛くてもこの仕事を辞めなかったのは、「お客さま本来の健康の姿を目指す」むつう整体の理念と自分自身の人生観に矛盾がなかったからです。これはこの上ない喜びです。
ヘルスケアはお客さまの人生の幸福度に大きく関わる仕事だと思います。いわば仏教で言う「生老病死」を見つめる仕事ではないでしょうか。

この仕事を目指すことで、ご自身を含め家族や友人知人の人生を自覚的に体験して、健康に悩みを抱えるお客さまに対する共感度上げていくことが重要だと考えます。特に年齢を重ねる中で施術者自身がケガや病に見舞われたときが絶好のチャンスと捉え、身体の変化や心の移り変わりを深く観察して、言語化できるようにしておくことがお客さまに向き合うための大きな糧になると思っています。

木村さん流! 整体師として長く続けるためのポイント

1.術者として死ぬまで成長できることを喜びとする。

2.生活や身体を形成する「心」を学ぶ姿勢を保つ。

3.決しておごらず、治ろうとする人体のしくみを尊ぶ。

長津田むつう整体院は現在、木村さんが品川勤務中の留守をまもった整体師と、木村さんご夫婦の3名が在籍。「3人それぞれが協力し合って仕事ができており、僕も子どもと過ごす時間を大切にさせてもらっています」とのこと。自分自身の心地よさを求めることは、周りもまた心地よくなることにつながるのだと感じました。

撮影/森 浩司

information

長津田むつう整体院
住所:神奈川県横浜市緑区長津田6-2-29
電話:045-981-9890

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