ホスピタリティをモットーに、「おっぱい番長」を活かした経営を【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.63 株式会社キレイカンパニー 朝井麗華さん】#1
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
今回は、整体師・セラピストでありながら「おっぱい番長」としての異名を持ち、第一線で活躍してこられた朝井麗華さんにインタビュー。これから独立を目指す方や同業者をターゲットに、朝井さんのモットーや独立までの経緯、起業時に込めた思いなどについて伺いました。
前編となる今回は、整体師・アロマセラピストの道を選んだきっかけから独立までの経緯や「バストケア」に特化した理由、経験しておくといいアドバイスなどについてお話いただきます。
お話を伺ったのは、
朝井麗華さん
旦那さまの闘病生活を経て、アロマセラピスト・整体師に。31歳で独立したのち、バストケアが話題となり、「おっぱい番長」として一躍有名に。今は、株式会社キレイカンパニー代表としてサロンを経営。メディアに多数出演しながら、講演会や他企業へのアドバイザー等の講師業、そして現在もサロンで整体師として多くの顧客を抱えている。
夫の闘病生活と師匠の引退を機に、周囲から熱望された「独立」の道へ
――旦那さまを闘病の末、亡くされたことがきっかけでこの業界を目指されたと伺いました。独立されるまでの経歴をお聞かせください。
夫の闘病当時からアロマについて興味があったので独学で学び、実際にマッサージなどを行なっていました。闘病生活中に役立ったことから、夫の死後、アロマセラピーについて「もっと詳しく学びたい!」という気持ちが強くなり、本格的に学び始めました。
当時は、お酒やハーブティーなどにも興味があったので、バーテンダーを主軸にアロマセラピストとしても働き、勉強の傍ら、掛け持ちで仕事をこなしていました。しかし、実際にセラピストとして働いているうちに、物足りなく感じ始めたんです。というのも、アロマセラピーはリラクゼーション効果やメンタル面においては効果が高いのですが、「いま上がらない腕をすぐに上げる」など、筋骨格の動きや可動域の不具合を整えることに関しては弱いんですね。そこで、即効性のある手技を身に付けたい!と思っていたところ、出会ったのが整体の「推拿(すいな)」という手技でした。
――そこで、整体師の道へ進まれたのですね。
はい。推拿に出会ったことでバーテンダーを辞め、整体サロンで働き始めました。その後、師匠から手技などたくさんのことを学んだのち、師匠が引退されたことと同時に、周囲から独立を強く勧められていたことから踏み切りました。
――周囲から独立を求められるとは、当時から人気ぶりが伺えますね。独立する際に決められたテーマなどはありますか?
当時、夫を癌で亡くした経験から「死に至る病になる人を一人でも減らす」こと、「本当の健康とは何か?を追求する」ことをテーマにしています。これは私の生涯のテーマでもあるので、これからも追求していきたいと考えています。
「おっぱい番長」を活かして、とにかくわかりやすいコンセプトサロンを作りたかった
――数々のサロンを経営されたうえで、現在開店したSphere by Kireikaで「バストケア」に特化した理由を教えてください。
やはり「おっぱい番長」として、幅広く認知されたことがきっかけになりますね。
独立当初経営していた「美しく健康になるサロン氣Reika」では、全身整体がメインでバストケアに特化していたわけではなく、基本の全身整体メニューに追加していくような形態で、前面に打ち出すことはしていませんでした。
ですが、その頃「おっぱい番長」として本を出版させていただいたことでニーズが見えてきたんです。といいますのも、当時出版した本は¥1400ほどで、読者の大多数は実際の施術をサロンで受けるのは高額でハードルの高いイメージがあり「本を読んでセルフでバストケアを頑張る」という方が大半だったのです。それを受けて、読者層のニーズにフォーカスすれば市場とサロンが一致するのでは?と思い、バストケアに特化したサロンを開くことへの後押しになりました。
――なるほど、市場のニーズに寄り添ったサロン作りを目指されたのですね。
当時から、新しくサロンをオープンするなら、わかりやすいコンセプトサロンにしたいとずっと思っていたことも理由の一つですね。
「ホスピタリティ」精神が集客に成功した秘訣
――今まで「おっぱい番長」として実績を築かれていたことから、集客も見込めるとお見受けしました。
そうですね。ありがたいことに昨年プロデュースしたバストケアサロンは、2ヶ月先まで予約がいっぱいです。今まで多数メディアに出演し、今でもそういった機会があることから集客に結びついていると肌で実感しています。今までの活動から「バストといえば朝井麗華」という風に認識していただけていることも、集客に繋がっているのでしょうね。
あと、私自身のプライベートサロンにおいては、整体師を始めた当時からのお客様が現在もご贔屓いただいています。
――初期のころから、というのはすごいですね。長く愛される秘訣や集客で大事なことはどんなことでしょうか?
いかにお客様に「ホスピタリティ」精神を感じていただくかだと思いますね。現在は、テクニックやたくさんの知識が生み出されていて、手技の技術力などで売り上げているサロンも多くあると思います。ですが、独立当初の私にはそれほど高い技術力というものが備わっていませんでした。私からすると、そんな状態でも贔屓にしてくださった理由は、「ホスピタリティ」精神による気持ちがお客様に伝わり、感動を生んだからだと思っています。
――朝井さんの「ホスピタリティ」精神は、どんなことがきっかけで身についたのでしょうか?経験しておくとよいことと合わせて教えてください。
推拿に出会う以前にセラピストと掛け持ちでバーテンダーをしたときの経験が大きいですね。当時から、チーム全体と自分も含め、「今日いらっしゃる・出会うお客様をどれだけ感動させられるか」について常に考えながら動いていましたし、実際に考えたことを実践するなどして、追求してきました。お客様の期待をいい意味で裏切ることで感動を生み出すサービスが実現し、リピート率にも繋がるんです。
そうした経験から身についたのが、「ホスピタリティ」精神ですね。サービス業を一度してみることは、とてもいい経験になると思います。
経験をサロン作りに反映させることで、テーマの一貫性を表現
――朝井さんが長年支持され続けている理由がわかりました。現在のサロンでも「ホスピタリティ」精神を意識されているのでしょうか?
そうですね。「ホスピタリティ」精神を念頭に、お客様第一というのは自分一人でもサロンのスタッフであっても変わらないです。常にお客様の感動を生むために、その人が「何をすれば喜んでくれるか」を考え、追求しています。
ですが、「お客様は神様で、私たちは奴隷です。」というような、媚びへつらうサービスはしません。あくまで人対人であることを忘れず、最善を尽くすことによって、お客様の期待値を超えた感動を体験していただけると考えています。それこそが、サービス業の在り方であり、今後のサロンの方向性としても、譲れないところです。
――いかに「ホスピタリティ」精神が大事なのかわかりました。サービス面以外で、その意識を取り入れたところはありますか?
それでいいますと、内装にも「ホスピタリティ」精神を反映させた作りになっていると思います。この場所は、光が燦々と入るので、その日当たりの良さを活かし、白を基調としたスタイリッシュな印象にしました。感動の導入になる最初のポイントとして、お客様がぱっと入ってきたときに、「ここは何をしたいサロンなのか・きたらどんな自分になれるのか」というインスピレーションが飛び込んでくるような内装であることを心がけてこだわった部分です。
「ホスピタリティ」精神について伺うと、朝井さんからお客様が離れない理由がわかりました。後編では、独立したあと失敗した経験や求めている人物像、経営者として心がけていることについてお聞きします。
取材・文/東菜々(レ・キャトル)
撮影/喜多 二三雄