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ヘルスケア 2022-12-19

次なる目標は、次世代のセラピストが活躍できる場を盛り上げること【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.81 /セラピスト・飯村亜希子さん】#2

「ヘルスケア業界」のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロに、お仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。

今回お話を伺ったのは、セラピスト・飯村亜希子さん

東京・八王子市にあるご自宅で「タイ古式マッサージとチネイザンのsalon&school ゆらぎ」を営む飯村さん。本場・タイで学ばれ、タイ政府も認定する本格的なタイ古式マッサージやチネイザン(氣内臓療法)が受けられるサロンとして人気を集めています。最近ではタイの産後ケア「ユーファイ」も取り入れ、女性のお客さまも多数ご来店されているそうです。

前編では、飯村さんがこの道に進んだきっかけや、サロンに込めた思い、経営面についてお話を伺いました。
後編では、現在の働き方や今後の目標、未来のセラピストに向けたアドバイスを伺います。

家族であれ、お客さまであれ、
老若男女問わず「目の前の人を元気にすること」に集中!

――現在の働き方や代表的な1日の流れについて教えてください。

自宅兼サロンなので、時間には融通が効くのですが、基本的な営業時間は9時から23時まで。朝は7時半から8時ぐらいの間に起きます。身支度やサロンの準備を整えたら、マントラ(オンナモ)を唱えます。瞑想ですね、心を落ち着けます。

その後、予約が入っていれば施術。大体120分のコースを選ばれる方が多いですね。タイ古式は部分的にほぐすというより、全身の調整をベースとしているので、短くても90分、長いもので180分です。お客さまは1日に平均して2〜3人ですが、枠が決まっているわけではないので、多い時は5人ぐらい予約が入る時もあります。午前中や午後早い時間のご予約は前もってご連絡いただく方が多いですが、夕方や夜は当日予約される方が多いです。

夜の日課はコレと決めていませんが、疲れを翌日に残さないように気をつけています。自分でできるトークセンやハーブボール、よもぎ蒸しなどでケアしたり、湯船にゆっくり浸かったり。1時には就寝します。

――施術の流れはどのような感じですか?

お出迎えをしたら、まず手を洗っていただきます。その後、初回の方にはカルテを書いていただき、お着替え。サロンでタイパンツをご用意しているのですが、まずは形から気分を上げていただきたい、っていう願いですね。次に「足湯」です。

ちなみにタイのスクールでも、登校すると必ず最初に足を洗います。タイ古式マッサージには足を使う施術も多いので、「まずは自分達の足を綺麗に」ということなんですが、他にも、タイのマッサージの2大概念のひとつ「セン(エネルギーライン)」に関係しています。

「セン」は「体の中には72,000本のエネルギーラインが流れている」という考えなのですが、そのエネルギーラインは足を通って流れるものが多いんです。このエネルギーの流れが滞ってしまうと不調につながるので、まずは足を綺麗にし、刺激することでエネルギーの流れをよくしよう、ということですね。

足湯の後は、施術に入ります。施術は単品のメニューの方もいらっしゃれば、組み合わせて受けられる方もいます。人気なのは、やはり「タイ古式マッサージ」と「チネイザン」。施術が終わったらお着替えしていただき、お茶をご提供します。

――お客さまに満足していただくために心がけていることはありますか?

お客さまは、施術の時だけでなく、玄関を開けて入ってこられてから、もっと言えばご予約のご連絡をいただく時から、みなさん大なり小なり緊張されていると思うんです。初回の方は特にそうだと思うので、お客さまの気持ちに寄り添った接客を心がけています。

あと、「目の前にいる人を元気にする」っていう気持ちで、お客さまとしっかり向き合うことです。一般的なサロンだと、ターゲット層を決めていたりすると思うのですが、このサロンは決めていません。女性でも男性でも、若い方でもご年配の方でも、年齢、性別に捉われず、「目の前のこの人を元気にするぞ!」と集中するようにしています。

――こちらはスクールもありますよね?

あります。開業当初でお客さまが少ない時やコロナ禍などでは、スクールの収入に助けられたと言っても過言じゃないですね。

――そちらはどのような感じでレッスンしているんですか?

基本的にはマンツーマンで、月に平均して1〜2人の新規の生徒さんをお受けしています。期間的には、タイ古式マッサージのベーシックコースだとlevel1、level2を合わせて36時間。3時間を一コマとして12コマです。頑張る方だと1日に2コマ×6回で卒業されますし、週に1コマを毎週コンスタントに通われる方もいます。

他にもトークセンとチネイザン、ユーファイのコースもあります。

――本場・タイのスクールのディプロマも取得できるんですよね?

はい。ただお世話になっている母体の認定スクールがそれぞれ違うのと、日本のものもあるのですが、

・タイ古式マッサージ/CCA(チェンマイ クラシックアート タイマッサージスクール)
・トークセン/オン タイマッサージスクール
・チネイザン(チネイザンリフレクソロジー)/ゆらぎオリジナル
・ユーファイ/ユーファイ協会

タイ古式マッサージは「Homeタイ古式マッサージ」という、入門コースもあります。入門編とはいえ、こちらもれっきとした資格なので、タイ政府認定のインストラクター認定証が受け取れます。コロナ禍以降は、自宅でお仕事されたり勉強されたりするご家族に「私にできることをしてあげたい」という気持ちで学ばれる方も多く、人気ですね。

スノーボードとセラピストの両立。
どちらも大好きだから、ハードでも楽しい!

――今でもスノーボードをライフワークに?

もちろんです! インストラクターとして長野のスクールに所属しています。あと地区大会や全日本大会のスタッフとして運営の方でも活動しています。

――サロンとの両立は大変じゃないですか?

サロンを完全にお休みするのは避けたくて、インストラクターのお仕事が入っている時は日帰りで長野に通います。毎年なかなかのハードスケジュールになりますが、忙しい分集中するので、気持ちにメリハリがつきますよ

大会は2〜3日かけて行うことが多いので、日帰りというわけにいかないのですが、その時はお客さまに「雪山行って来ます!」と告知してお休みをいただいています。最近みなさん認知して下さって、「今年の冬はどんな感じ? いつ行くの?」と先に聞かれることもありますよ(笑)。「子供をスノーボードデビューさせたいんだけど、どこがおすすめ?」と聞かれたり、スノーボードをきっかけにお話が弾んだりすることもあって、楽しいです!

――すごく充実されているんですね!

二足の草鞋ですが、どちらも大好きなので両方続けられる今の環境はすごくありがたいですね。これは個人サロンのいいところです。今ダブルワークや二拠点生活というのが注目されていますが、まさに自分も今それをやらせてもらっていて、すごく幸せです。

――セラピストの「やりがい」は何ですか?

「お医者さんに診てもらっても改善しなかったことが、ここに来るようになって良くなった」と言われると嬉しいですね。あと、「調子が悪くなると『ゆらぎ』に行かなきゃって思うんです」と言われることも多くて、みなさん「駆け込み寺」のように親しみを持ってくださっています。私にできることがあってよかった、このサロンを作ってよかった、と改めて思います。

――今後の目標や夢はありますか?

実は今、2店舗目の準備をしているんです。少し話が逸れるのですが、私には娘が2人いまして、長女がコロナ禍で職を失ったんですよ。ホテルや旅館で仲居をしながら全国を回りたいという夢があったのですが、このご時世で仕事が減ってしまい……。今はサロンの裏方として仕事を手伝ってくれているのですが、せっかくなので、ということでタイ古式マッサージの勉強も始めたんです。

となると、実際の施術にもチャレンジしてもらいたくて、「セラピスト育成キャンペーン」と銘打ち、リーズナブルな価格でお客さまにご提供しました。すると、施術を受けたお客さまから、すごく的確なアドバイスやご意見をいただくことができたんです。お客さまも「成長を見守ることができて嬉しい」って言ってくださるし、娘の技術も目に見えて上達しているし、こういう形でスクール卒業生が活躍できる場を作りたいな、と思ったのが始まりです。

正直、「資格は取ったけど生かせていない」「開業するつもりで資格を取ったけど、もう少しリアルな現場を知ってから開業したい」っていう人も多いと思うんです。実際にお声がけしてみたら「やりたい!」って言ってくれた卒業生もいたので、思い切ってオープンすることにしました。

タイマッサージサロン ゆらぎ
八王子市横山町14-5落合ビル3F4F

2022年11月下旬にオープン予定です。ありがたいことに、私がタイ古式マッサージを始めた頃からお世話になっているベテランセラピストや、そのご友人のセラピストも、オープニングから協力してくれます。2店舗目も多くのお客さまに愛していただけるサロンにしたい、というのが今後の目標ですね。

楽しんでいれば、向上心も湧いてくる!
興味を持ったことにどんどん飛び込んでほしい

――今後セラピストになりたい人や、もっとステップアップしたい人にアドバイスをお願いします。

「自分自身も楽しむ」というのを大切にしてほしいです。向上心を保つためにも、楽しくないと「もっと勉強しよう」って思えないですよね。勉強という面でも、この仕事は生涯学び続けることが必要なので、興味を持ったことはどんどんチャレンジしてほしい。マッサージの技だけでなく、解剖学を学んで体の構造について詳しくなると、より理解が深まって面白いですよ。

また、この仕事は、活躍の場もたくさんあります。私が経験させていただいて、すごくよかったのは、東日本大震災のボランティア。有志を募り、石巻の仮設住宅でマッサージして回ったんです。貴重な経験をさせていただきました。みなさんも、自分が学んだ技術を使って、興味を持ったことにどんどん飛び込んでみてください。

――ありがとうございました。最後にセラピストの心得3ヵ条をお願いします。

・自分が健康でいること
・笑顔を忘れないこと
・心の距離を近づけること

初回で「こんにちは」ってサロンに入ってこられたお客さまとセラピストの間には、まだ心の距離があると思うんです。でも約2時間の施術を終え、お帰りになる時にはグッと心の距離を近づけて「ありがとうございました」って伝えられるといいですよね。そうすると、「またあの人に会いたいな」「施術してもらいたいな」と思ってもらえる気がします。

前編・後編を通じて、熱い思いを語ってくださった飯村さん。「このサロンは、たくさんのお客さんや友人に支えられて成り立っています」とおっしゃっていましたが、それも飯村さんの人柄あってこそ。穏やかで優しい時間が流れるサロンは、いつまでもゆっくりくつろいでいたくなるような場所でした。
貴重なお話をありがとうございました!

取材・文/児玉知子
撮影/喜多二三雄

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information

タイ古式マッサージとチネイザンのsalon&school ゆらぎ
住所:東京都八王子市叶谷町
電話:090-4825-2498

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