作業療法士が精神科で働くのはきつい?仕事内容とあわせて大変な側面ややりがいを紹介
作業療法士の仕事は、心や身体に障害を抱える人の心身機能回復をサポートすることです。作業療法を通じて心と身体の両方にアプローチし、身体障害・精神障害・老年期障害・発達障害といった4つの領域で活躍しています。
今回紹介するのは、精神障害領域(精神科分野)で働く作業療法士についてです。仕事内容とあわせて、「きつい」「大変」と感じる側面や、やりがいについても見てみましょう。
精神科でおこなう作業療法の特徴
身体機能の回復を目指すリハビリはイメージできても、精神科でおこなうリハビリについてはイメージがわかないという人もいるかもしれません。ここでは、精神科でおこなう作業療法の特徴と作業療法士の役割について紹介します。
精神面に障害や疾患を抱える人の支援|統合失調症・うつ病・認知症など
精神の障害や疾患を抱えている人が、自信や安らぎ、自分らしさを取り戻したりすることを目的に作業療法をおこないます。
手芸や絵画など患者の希望に合わせた作業をはじめ、スポーツやレクリエーションといったグループ活動も取り入れているのが特徴です。精神科の作業療法では不得意なことよりも、得意なことやできることに目を向けることが重要視されています。
精神障害や疾患には多くの種類がありますが、統合失調症・うつ病・認知症などがその代表例です。
作業療法士の役割
作業療法士の役割のひとつに、患者の安心できる場所を作ることが挙げられます。患者のなかには、自信の喪失や周囲に対する不安から、自分の殻に閉じこもっている人も少なくありません。
不安や苦しみに寄り添い、患者が安心できるような信頼関係を築くことが大切です。また、心の回復は見た目では判断しにくいことも多く、時間を要します。患者に合わせて段階的な取り組みが必要です。
信頼関係を構築したうえで、患者が楽しく取り組める作業療法を通じて、自信を取り戻したり自己肯定感を高めたりすることも役割のひとつです。ほかにも、他者とかかわることに対する不安を和らげる役割もあります。
児童思春期領域・復職支援・引きこもり支援をおこなうケースも
精神科のなかには、児童思春期領域を受け持つ病院もあります。ここでの作業療法士の役割は、症状に合わせた遊びを通じて子どもの発達をうながすサポートです。
また、復職を目指す人に対して作業能力を評価したり、病気の再発を防ぐためのサポートをおこなったりすることもあります。
さらに、引きこもりの患者の作業療法をおこなうことも。はじめは簡単な会話から、作業療法を通じて少しずつ外出できるよう、うながす役割を担っています。
精神科の分野で作業療法士が活躍する場所
ここからは、精神科分野において作業療法士が活躍している施設と、施設での仕事内容を紹介します。
精神科病院
精神科病院では、心の病を患っている人に対する治療の一環として作業療法をおこなっています。生活動作のリハビリ・レクリエーション・趣味活動など、一人ひとりの病気や課題に合ったプランを作成するのも作業療法士の仕事です。
医師や看護師はもちろん、理学療法士・臨床心理士・精神保健福祉士など、さまざまな医療従事者と連携しています。
デイケア
精神科のデイケアは、精神の障害や疾患を抱える人が通うリハビリ施設です。患者の自立支援や就労支援をおこなっています。
施設によって取り組みには違いがありますが、複数人でコミュニケーションを取るプログラムが一般的です。屋内外のスポーツ・料理・手芸・体操などがあります。
作業療法士は、患者だけでなく家族や周囲の環境なども含めてプランを考えたり、客観的な視点に立って評価をおこなったりしながら、その人らしい生活ができるようサポートしています。
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、各都道府県に設置されている施設で、精神の疾患や障害についての情報提供・精神保健福祉の相談対応などをおこなう支援機関です。
デイケアや相談窓口が設けられており、作業療法士はプログラムの作成とリハビリを担当しているだけでなく、相談窓口を担当することもあります。
疾患や障害を抱える人・その家族・地域住民などの相談に乗ったり、情報提供をおこなったりするほか、電話対応や書類作成の業務もこなしています。
精神障害者支援センター
精神障害者支援センターは市町村に設置されている施設で、精神障がい者の自立・社会参加・社会復帰を目指す支援機関です。食事や入浴など日常生活に必要な支援・地域の人々やほかの患者と交流する生活支援・就労支援をおこなっています。
施設によって提供するサービスには違いがあり、施設内で就業体験や嘱託医師への相談ができる施設もあるようです。作業療法士は、プログラムの作成やリハビリをおこなっています。
精神科の分野できつい・大変だと感じる側面
ここからは、精神科分野で働くなかで作業療法士がきつい・大変だと感じる側面について紹介します。
正解がなくアプローチが難しい|柔軟な対応が求められる
精神科分野のリハビリには、正解がないと言われています。なぜなら、身体機能のように目に見える原因やリハビリの成果が分かりにくいためです。
たとえば外出訓練といっても、精神科分野では外に出ることへの不安や恐怖心を感じる原因は、人によってさまざま。原因把握の難しさに加えて、アプローチの仕方も全員同じというわけにはいかず柔軟な対応が求められることから、大変だと感じる作業療法士もいます。
患者のなかには暴言・暴力・治療拒否の人も
精神科分野の患者のなかには、コミュニケーションそのものが難しい人や、感情の起伏が激しい人もいます。暴言を吐く・暴力をふるう・治療や訓練を拒否する人がいるのも事実です。
そういった患者と接する作業療法士のなかには、言葉をそのまま受け止めてしまい、気持ちを切り替えることができない人も少なくありません。精神的なダメージから恐怖心を持ち、きついと感じてしまいます。
物品の取り扱いにも注意が必要
精神科分野の事故に多いのが、異食・転落・行方不明・自傷です。作業療法ではさまざまな道具を扱うため、異食や自傷につながるような物品は管理を徹底する必要があります。
きついと感じたときの対処法
仕事をするうえできついと感じたとき、そのまま無理をし続けるのはおすすめできません。きついと感じたときにできる対処法を紹介します。
上司や周りの人に相談する
きついと感じたときは、相談相手を見つけることが大切です。同じ職場で働く上司や周りの人に相談してみましょう。上司や周囲の人がどんな反応をするか不安に思うかもしれませんが、解決方法を一緒に考えてくれる可能性もあります。
転職する
上司や周囲に相談できない・相談したけど解決に至らなかったという場合は、転職を選択肢に入れてもよいでしょう。作業療法士の仕事は、精神分野以外の領域もあります。また、患者の症状の時期や施設形態もさまざまで、働ける場所は数多く見つかるはずです。
転職を考える場合は、介護・看護・リハビリに特化した求人情報サイト「リジョブケア」をぜひチェックしてみてください。
精神科の分野でのやりがいを感じるのはどんなとき?
精神科分野できついと感じる部分や大変な側面を紹介しましたが、やりがいや魅力も、もちろんあります。ここからは、精神科分野で働くやりがいについて紹介します。
問題を一緒に乗り越え感謝されたとき
精神科だけではありませんが、リハビリを通じて問題を一緒に乗り越え、感謝されたときにはやりがいを感じられるでしょう。
精神科の場合は、はじめからうまくいくことばかりではなく、暴言や暴力など攻撃的な一面を目の当たりにすることもあります。
しかし、患者に寄り添い続け、問題を乗り越えながら症状が和らいでいけば、患者の優しい側面や笑顔が見られるようになることも珍しくありません。そうした過程を経て感謝されたときの喜びは大きいでしょう。
患者が自信を取り戻し生き生きとした表情を見せてくれたとき
患者が再び自分らしく過ごせるようになったり、自信を取り戻して生き生きとした表情をみせてくれたときもにも大きなやりがいを感じるでしょう。
日々のコミュニケーションやリハビリを通じて関係を築くことで、患者が笑顔になったり新しい趣味を見つけたりと、その人らしさを取り戻す様子を見ることができます。
精神科分野はきついばかりじゃない!正解がないからこそ患者に寄り添ったケアを心がけよう
精神科分野は、ほかの分野とは違ったきつさや大変な側面もあります。しかし、きついばかりではありません。患者に寄り添ったケアを心がけることで、その人らしさを取り戻したり、生き生きとした表情が見られるといった魅力的な場面もたくさんあります。
きついと感じたときはひとりで抱え込まず、周囲に相談するのも手です。解決が難しい場合は転職する方法もあります。精神科分野のリハビリには正解がないからこそ、患者の不安や苦しみに寄り添ったケアを心がけましょう。
引用元:
職業情報提供サイトjob tag:作業療法士
一般社団法人 作業療法士協会:作業療法士とは