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ヘルスケア 2023-12-24

施設介護と訪問介護の「起業」や「働き方」の違いとは?【介護リレーインタビュー Vol.41/介護YouTuber・Y’s CARE -ワイズケア-(西星祐汰さん)】#1

介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。

今回お話を伺ったのは、今年の9月に「訪問介護事業所すずらん」を立ち上げ、
介護YouTuber「Y’s CARE -ワイズケア-」としても活動している西星祐汰(ゆーた)さん。

前編では、介護士になったきっかけや、訪問介護事業所を立ち上げたいきさつなどを伺います。

介護実習で行った施設に一目惚れして
介護士になることを決意

――介護士になろうと思ったきっかけはなんですか?

介護福祉科のある高校に進学したことです。とはいえ当時は、あくまで高校に行くための手段として、そこを選んだんですけどね。

というのも、中学までバスケットボールをしていて、高校もバスケの推薦で進学する予定でした。でも3年生の夏の大会に出られず、推薦がもらえなくなったんです。それまでバスケしかしてこず、勉強もまともにやってこなかったので、試験勉強が間に合わず……。当時の僕の偏差値でいける高校といったら、そこしかなかったんですよ。

そうやって選んだ高校だったので、入学後もしばらくは介護に興味が持てませんでした。でも高校2年生で行った特別養護老人ホームの実習で、初めて「介護って楽しいかも」って思ったんです。

――なにか出来事があったんですか?

というより、施設全体の雰囲気がとてもよく、働いている人たちもすごく素敵だったんです。一目惚れの感覚に近いですね。

それまでの僕は、自分の興味があることしかやってきませんでした。やりたいか、やりたくないかで行動していたので、もちろん卒業後も介護の仕事をやると思っていなくて、なんなら美容師になろうと思っていたんですよ。でもその実習を受けて気持ちがガラッと変わった。介護の仕事に興味が湧いて、勉強にも前向きに取り組むようになりました。

気がついたら、介護にどっぷりはまっていましたね。もちろん就職はその施設を希望して、ありがたいことに採用してもらい、そのまま10年勤めました。

――まさに運命の出会いですね!

ちなみにそこで、ワイズケアのメンバーである、ゆうきとももちゃんにも出会いました。ゆうきは今でもその施設で働いていて、ももちゃんは今、僕が今年の9月に立ち上げた訪問介護事業所で一緒に働いています。

施設介護と訪問介護では
起業に必要な資金が全く異なる

――訪問介護事業所はどういった経緯で立ち上げられたんですか?

そもそも僕は、人の下で働くタイプではなくて(笑)。介護士になった当初から、いずれは自分で会社をつくるって決めていたんです。今28歳なんですが、30歳までに独立したかったので、それを叶えた感じですね。

訪問介護という形でやっていくと決めるのにも、紆余曲折ありました。最初はインフルエンスマーケティングやSNS代行などをやろうかと思っていたんです。でもそれだと、副業という枠のなかでいつまでもダラダラやってしまいそうだったので、あくまで介護の仕事で起業しよう、と。

僕の夢の一つに、「いつか自分で箱の施設をつくりたい」という目標があるので、デイサービスをやろうかとも思いました。でも冷静に考えると、施設をつくるには莫大な資金がかかる。この資金を、初めて事業を立ち上げる28歳の男に融資してくれるところがあるのか……と考えたら、現実的ではないですよね。

もちろんチャレンジしてみてもよかったんですが、融資がおりなかったら次のビジネスプランに切り替える必要があります。もし融資がおりたとしても、いつまたコロナみたいなことが起きるかわかりません。最初の事業で何千万というリスクを背負えるか、すぐ切り返しができるか、という不安がつきまとい、一旦デイサービスは諦めました。

――そういう点でいうと、訪問介護はリスクが少ない、と。

訪問介護は、僕たちスタッフが利用者さんのご自宅に伺ってサービスを提供するので場所代がかからず、7割が人件費なんです。介護事業の中では、一番リスクが少ないんじゃないでしょうか。

とはいえデイサービスにも、「自分たちのカラーを出して差別化しやすい」「資格を持っていない人でも雇えるので職員を増やしやすい」という利点があります。訪問介護だと差別化を図るのは難しいし、職員の資格は絶対条件ですからね。それらを踏まえてよく考えましたが、相殺しても訪問介護の方がリスクが少ないと思い、まずは最初の事業として「訪問介護事業所すずらん」を立ち上げました。

自分たちのサポートで
「幸せをもう一度」感じてほしい

――「すずらん」の職員さんは何名いらっしゃるんですか? ゆーたさんも現場に出てらっしゃるんでしょうか?

僕を含めて5人です。もちろん、僕も現場に出ています。

正直これまでずっと施設で働いてきたので、訪問(在宅)介護というものに最初は不安を感じていました。というのも、施設介護というのは、僕たちのホームに利用者さんが来てくれるわけなので、ある程度自分たちがやりやすいようにコントロールすることができるんです。

でも訪問介護だと、僕たちが利用者さんのご自宅に上がらせてもらってサービスをするので、いわば相手のフィールドで戦うアウェイ戦。やり方も考え方もすべて利用者さんが主体になるので、少し身構える部分があります。お宅によって勝手もさまざまなので戸惑うこともありますが、僕たちが入ることで少しずつ生活リズムが整っていくのを目の当たりにし、今ではやりがいを感じています。

――ご利用者さんと向き合う際、大切にしていることはありますか?

訪問介護であれ、特養であれ、介護という仕事をする上で意識していることは、利用者さんの幸福度やQOL(生活の質)が上がるよう力を尽くすこと。「生きててよかった」「この人と出会えてよかった」と思ってもらえるように、相手の思いをしっかり汲み取って、1回1回の支援を全力で行っています。

とくに訪問介護だと、利用者さんの人生の中心であるご自宅に入りこんで支援するので、より深くみなさんの人生に関わることになります。僕らが加わるこことで人生をもっと豊かに、諦めていたことがあってももう一度可能性を感じられるようになってほしい。そう思って、スタッフにも教育しています。

事業所名やロゴにも、この思いを表現しました。白いすずらんの花には「幸せをもう一度」「幸福の再来」という意味があるんですよ。そこに人の手と鳥を描くことで、「僕らの手で幸せをもう一度感じてほしい」という思いと、その思いを運ぶ鳥をイメージしました。

訪問介護には、掃除・洗濯・調理など
介護スキル以外の長所を活かせる場がたくさんある

――ゆーたさんが思う、介護士のやりがいや魅力はなんでしょう?

利用者さんは介護が必要な人たちとはいえ、人生の大先輩なので、勉強させていただくことがたくさんあります。そういう学びがあるのも、介護職の魅力ですよね。

あと、若い人でも高齢の人でも、資格さえ持っていればいくつになっても働けること。とくに訪問介護は、掃除や洗濯、調理など、介護の技術や知識以外のことで力を発揮できるシーンもたくさんあります。適正に合わせて職場を選べば、自分の長所を生かしつつやりがいを感じながら仕事を続けられることができる。これもひとつの魅力ですね。

――今後の夢や、目標はありますか?

事業を立ち上げたばかりなので、まずはこの仕事を軌道に乗せることが最優先。スタッフもいて、人の人生を背負っていますからね。

そしていずれは京都一の訪問介護事業所にしたい! 京都一というのは、売上なのか、知名度なのか、何をもって京都一なのかは僕もまだ模索中ですが、「京都の訪問介護といえば『すずらん』だよね」と言ってもらえるようになるのが夢です。

――これから介護士を目指す人に、何かアドバイスをお願いします。

これは、過去の自分に言いたいことなんですが(笑)。自分の意見を持って発言ができるのは素晴らしいことですし、大事なことですが、みんなそれぞれ思っていることや考えていることが違う、ということも頭に置いておいてほしいです。

介護職に限ったことではありませんが、特に介護の現場は年齢層が幅広く、職員内でも下は18歳から上は65歳まで。利用者さんも含めると、もっと年齢差がありますよね。

そのなかで自分の意見だけを通そうとすると、絶対上手くいきません。介護は人対人の仕事ですし、一人をみんなで支えているので、チームワークを高めることが何より大切です。自分のアイデンティティを守るのと同じように、相手のアイデンティティも傷つけないこと。そのためには、人の意見を絶対否定しない! その方が先輩から可愛がられますし、きっと貴重なアドバイスも惜しみなく教えてもらえると思いますよ。


後編では、ワイズケアのメンバーのゆうきさん、ももさんにもご登場いただき、介護YouTuberとしての活動について伺います。

取材・文/児玉知子

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