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特集・コラム 2019-07-26

介護職員はどれくらい人材不足なの? 介護職員の必要数を確保するための取り組みを解説!

近年、日本は「就職売り手市場」といわれており、人手不足が問題視されています。なかでも介護業界では職員の不足が深刻化しています。施設によっては入居待ちが出ているところもあり、今後さらに高齢化社会が進むと、多くの高齢者が介護を受けられないという状況にもなりかねません。このことは、できるだけ多くの人々が意識すべき社会問題のひとつです。

そこで今回は、将来どれだけ介護職員の不足が懸念されているか、また国は介護職員の確保のためにどのような対策を講じていくべきなのかについてみていきましょう。

介護職員はどれくらい人材不足なの?

介護職員数
日本は年々高齢化が進み、それに伴って介護職員の不足が問題視されています。まずは、将来どれくらいの人数の介護職員が不足すると予測されているかを、厚生労働省のデータに沿ってみていきましょう。

2025年の必要数は約245万人!

厚生労働省がまとめた「第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数」によると、2020年度には約216万人、2025年度には約245万人の介護職員が必要という報告がなされています。

2025年は、団塊世代が75歳以上の後期高齢者になるといわれている年であり、医療、介護、福祉サービスへの需要が高まり、これまで以上に介護職員の数が必要とされるでしょう。しかし、それに反して介護職員の数が大きく足りないという問題が懸念されています。これが「2025年問題」です。

ナゼ245万人が必要なの? 日本の高齢化率

「2018年版高齢社会白書」によると、2017年10月時点の日本の高齢者の数は3515万人であり、高齢化率は27.7%です。(高齢化率とは、65歳以上が総人口の何割を占めるかを表す数値)

2025年になると団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に突入するため、高齢化率はさらに高まり、その分だけ介護職員の数が不足すると予測されています。

第7期末の2020年には216万人確保の予定が…

2016年度の必要介護職員が190万人なのに対し、2020年度の必要介護職員の数は216万人となっており、たった4年で26万人ほどの差があります。2020年以降には、介護職員不足の問題がさらに表面化してくる可能性が高いでしょう。

現状のまま推移していくとどうなるの?

上述したように、2025年に必要な介護職員の数は245万人とされていますが、現在の定着率のまま推移していくと2025年度の介護職員は211万人しか確保できません。そのため、需給ギャップは33万人~34万人と推測されています。今と同じ状況で進行していくと、介護職員の人手不足を回避することはむずかしいでしょう。

このような状況を受け、国としてどのような対策を行なっていくか、どうすれば安定的に介護人材を確保していけるかが大きな課題となっています。

総合的な介護人材確保対策とは・介護業界の問題改善はできる?

介護若者
介護職における将来の人手不足の問題を受けて、厚生労働省は2018年9月に、介護人材の確保に向けた取り組みとして「総合的な介護人材確保対策」を打ち出しました。具体的にどういった内容の政策なのかを解説していきます。

①介護職員の処遇改善

政府は、介護職員の不足と、介護人材の確保を目的にさまざまな対策を講じてきました。「介護職員の処遇改善」では、これまで介護職員の賃金改善を行なっています。今後の消費税率引き上げに伴い、更なる処遇改善を実施する予定です。

大きな取り組みは2点あり、うちひとつは「多様な人材の確保・育成」があります。これまでも支援策として介護福祉・介護職員を目指す学生への修学資金貸付を行なっていましたが、今後はさらにその間口を拡大し、支援内容も充実させるようです。詳しくは後述します。

取り組みのもうひとつとしてあげられるのが、「離職防止・定着促進・生産性向上」です。これまでもIT技術の活用推進や、女性が活躍しやすい環境の整備などを行なっていましたが、今後はこれらの取り組みをさらに加速させるようです。こちらも詳しくは後述します。

そのほかにも、介護について知るための体験型イベントを開催する「介護職の魅力向上」や「外国人材の受入環境整備」などのテーマを設けて、さらなる介護人材確保対策や処遇改善策を講じるとしています。

2019年10月に「介護職員等特定処遇改善加算」が創設!

政府は、介護職員の賃金改善の一環として、2019年10月から「介護職員等特定処遇改善加算」を開始します。この制度は、各事業所が介護職員のためにキャリアパス制度を作ったり、介護職員のために職場環境の改善を行なったりした場合、介護職員の賃金改善として事業所に助成金を支給することを目的として実施される予定です。

2009年度に創設された「介護職員処遇改善交付金」を廃止し、加算の拡充(支給金の上乗せ)をして新たに実施される制度になります。加算レベルは5段階に分かれており、事業所の改善レベルに応じてひとり当たりの月額が12000円~37000円に増額されるという仕組みです。

多様な人材の確保・育成

高齢者雇用や障がい者雇用、中間的就労、ボランティア、地域住民の協力など、多様な人材の受け入れを促進する取り組みが強化されるようになるでしょう。中高年の雇用にあたっては、介護未経験者に対する入門的研修制度を実施し、研修後のマッチングもサポートします。

ほかにも、母子生活支援施設に入所している母親(シングルマザー)や、児童養護施設から退所した児童を人材として受け入れるなど、さまざまな形での人材確保を視野に入れているようです。

<h3>③離職防止・定着促進・生産性向上

介護職員の負担軽減のため、介護ロボットを導入していない事業所への導入支援や、生産性向上および認証評価制度のためのガイドライン作成、さらなる介護ロボット・ICT(情報通信技術)の活用推進などが実施される予定です。

キャリアパス制度の活用

キャリアパスとは、各企業および事業所において、職員がある役職に就くまでの経歴(キャリア)と道筋(パス)のことです。介護における役職としては、介護福祉士、認定介護福祉士などがあります。

職員に対して明確なキャリアパス(役職への明確な道筋)を示すことは、仕事へのモチベーションやキャリアアップへの意欲を向上させることにつながり、同時にそれは離職防止にもつながるでしょう。

介護職の魅力向上

介護職とはどういうものなのか、仕事としてどのような魅力があるのか知ってもらうため、体験型イベントなどを開催する予定です。また、職員同士の魅力向上懇談会なども実施されます。

外国人材の受け入れ環境整備

政府による在留資格「介護」の創設に伴い、留学生に対して介護福祉士国家資格の取得を目指すための支援や修学資金のサポート、日常生活での相談支援等などが実施されます。また、すでに技能実習制度への介護職種の追加なども行なわれており、今後も介護職を目指す外国人に対する支援、外国人の介護実習生の受け入れはさらに拡大される見込みです。

外国人労働者の勤務状況は?

介護労働安定センターの2017年度 「介護労働実態調査」の結果によると、外国人労働者を介護職員として採用していると回答した事業所は「5.4%」、採用していないと回答した事業所は「91.4%」となっています。

今後、外国人労働者を活用する予定があると回答した事業所は「15.9%」です。また、活用の予定があると回答した事業所のうち、技能実習生として受け入れを検討(予定)していると回答した事業所は「51.9%」に上りました。

介護職員の人材確保は必須!

介護職員

現在と今後の高齢化の問題を考えると、介護職員の安定的な確保は必須といえるでしょう。しかし、職場環境の悪さや人間関係のトラブル、賃金(収入)の低さ、将来への見通しの少なさなど、職員が抱える不満やネガティブな要素は多く、離職率が高くなっているのが現状です。

そこで、どうすれば離職率を抑制し、介護職として定着率を高められるか、職員のモチベーションや仕事へのやりがいを向上させられるか、また幅広い多様な人材を確保できるか、といった点が重要なポイントになってきます。国の対策としては、「労働環境の改善」「介護職のイメージアップ」「外国人労働者の受け入れ拡大」などをさらに強化していく方針です。

いつか私たちも介護される側になるわけですから、決して他人事とは思わずに、現在の日本の介護問題について意識を向けるようにしてみてくださいね。

出典元
・介護職員の人材不足について
内閣府(https://www8.cao.go.jp/)
厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/)
厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/)
厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/)

・介護の処遇改善について
厚生労働省「介護人材の処遇改善について」(https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000406512.pdf)
社会福祉法人 全国社会福祉協議会「地域を支える福祉人材 確保・育成・定着の緊急対策」(http://zseisaku.net/)
厚生労働省「福祉・介護人材の確保に向けた取り組みついて」(https://www.mhlw.go.jp/)

・外国人労働者について
(http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/h29_chousa_kekka.pdf)

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