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ヘルスケア 2024-01-23

幼少期からの悩みをきっかけに業界へ進出。「食薬」の大事さを広めるために実績作りに精進した【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.126 アイカ製薬株式会社 代表取締役社長 大久保愛さん】#1

ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。

今回は、「食薬」を広めるために活動している、アイカ製薬株式会社 代表取締役社長の大久保愛さんにインタビュー。

大久保さんが保有する資格は、薬剤師、国際中医師、国際中医美容師、ピラティスインストラクター…などと広範囲。漢方薬局や調剤薬局、さらには国際美容中医師の資格を活かした、エステや整体の経営実績も。今まで歩んできた道のりを伺うとともに、多くの人から支持を集める「食薬」に着目した経緯をお聞きします。

お話を伺ったのは…
アイカ製薬株式会社 代表取締役社長 大久保愛さん

自身の悩み解決のために、昭和大学薬学部の生薬学・植物薬品化学研究室で生薬について学ぶ。卒業後は、漢方専門で症例数を重ね、国際中医師免許を取得。アイカ製薬株式会社(旧株式会社アイカ)を設立するほか、漢方・調剤薬局や様々な形態のサロンを経営。同時に、北京中医薬大学で漢方・薬膳・東洋の美容などを学び、日本人初の国際中医美容師資格を取得。現在は、起業から10年以上積み重ねてきた医療・美容業界での実績を糧に「食薬」という概念を構築し、「食薬」を広めるためのシステム作りをする傍ら、著書も複数出版するなど、漢方・「食薬」の専門家として活躍中。

幼少期から悩まされていた「アトピー」がきっかけで進んだ道

幼少期からアトピーへの研究が凄まじく、実家には大久保さん専用の浴槽が存在したのだとか。当時から大久保さんのストイックさが伺えます

――この業界へ進んだ経緯をお聞かせください。

幼少期からアトピー性皮膚炎に悩まされていました。症状は重く、日中の紫外線やプールの塩素にも肌が負けてしまうほど。幼いながらにそれなりに悩んでいたので、自分でもいろいろ試行錯誤をする毎日でした。

私の実家は秋田県にあり、週末には山に薬草を採りに行く日課がありました。母が記録していた民間療法や薬膳の知識を元に、オリジナルの薬を作っては飲み薬にしたり、患部に貼り付けたり、入浴剤にしたり…いろいろ試しましたが、思っているような効果は得られず…。そのあとも、地元で有名な評判の良い皮膚科やクリニックに足繁く通いましたが、望むような結果にはなりませんでした。

今思えば、脂っこいものや甘いものを過度に摂取していた食生活が一つの理由として考えられるなと。当時はその原因に気づけなかったことから、自分のアトピーを改善する策を見つける目的で薬学部に進学し、生薬学・植物薬品化学の研究の道へ進みました

卒業したあとは、老舗の漢方薬局に就職すると同時に調剤薬局も経験。加えて、勤めていた漢方薬局の社長にこれからは国際中医師の資格を取っておいた方が良いとアドバイスがあり、取得するために勉強も並行して取り組みました。

――薬剤師、国際中医師どちらの資格も持ち合わせながら、進んだ先は?

いくら国家資格を持っていても、若いと信用されにくい。どうしたら良いのか考えたとき、多くの症例をこなす実績が必要だと考えたんです。

転職した先は、東京にある漢方薬局。当時にしては珍しくネット集客や電話での漢方相談を積極的に行っている薬局で、診療内容もむやみに薬を勧めるわけではなく、あくまで日常的な食生活や使用する食材を見直すアドバイスが中心でした。このとき、さまざまな患者さんに対応していたことで症状が現れる傾向が分かり、統計が取れ始めていました。私自身も学んだことを実際に自分で検証し続けていたところ、だんだんとアトピーの悩みが軽減されていったように思えたんです。やっぱり食事って大事なんだなと実感し、この気づきがのちの「食薬」を考案するきっかけになった出来事でした。

「食薬」を広めたい! 症例数を増やし実績作りをスタート

「食薬」の講義をしている大久保さん。健康や美容に関心のある方々が意欲的に参加しています

――「食薬」とはどういうものなのでしょうか?

古代につくられた経験則と現代における最新の予防医学によって「漢方×腸活×栄養学×遺伝子」などの観点を融合した理論を言います。

昔は今のように医療が発達しているわけではなかったため、4つの診察方法と五感を駆使して体の調子を測っていたそうです。その方法を漢方医学では「四診(ししん)」と呼びます

例えば、レントゲンや血液検査などができない分、不調が生じ始めたころから今に至るまでの生活習慣やストレス状況など些細なことまで質問をしたり、舌の状態、姿勢や呼吸の仕方、ニオイなどを見てそれに合った漢方薬や食事など治療を行うような感じでした。そこでシンプルかつわかりやすい食事の例として使われるようになったのが、夏は赤いものを食べる、冬は黒いものから栄養を摂取するなど。抽象的な健康法が流通するようになったんですね。でも、そんな抽象的なイメージでは、今の予防医学として、信頼性が薄く、万人に受け入れられることは難しいと考えました。ましてや「漢方」なんて種類によっては名前も複雑で覚えにくいうえに敬遠されがちだから、なるべく親しみやすい印象を与えたいと思っていました。

どうしようかと考えていたとき、漢方医学と現在の予防医学を調べれば調べるほど、同じ視点にたどり着くと分かったんです。2つの医学が融合し、自分で自分の体の不調を分析できるようになれば、食事で症状を軽減させることが可能なのではないかと。そう思って考えたのが「食薬」です。

――ご自身の経験から「食」に着目したのですね。

漢方医学では、親から受け継ぐ先天の精、その後の人生の生活などが招いた後天の精があると言われています。今は、それに伴うエピジェネティクスの研究が進み、後天的な環境要因が体質に影響し、その環境要因の約7割が口にするものだと言われています。生まれてからの性質だと思って諦めていた症状も実は生活習慣を見直すことで改善が見込めると報告されているんです。

ただ、日々食事や運動、睡眠などに気を付けていても、3,4カ月くらい継続しなければいけませんし、結果的に習慣化できなければ、体質の改善が見込めません。そこで、習慣化できるまでに挫けないようにサポートするのが漢方薬やサプリの存在なのです。

漢方薬の心強さと「食薬」によって健康な生活が送れる事実をもっと多くの人に広めたいと考え、本格的に動き始めました

――まずはどんな取り組みを?

問診の様子。優しく丁寧な診察は、患者さんもリラックスして相談できると高評価なんだとか

実績作りを目的として東京は恵比寿、愛知は名古屋にて漢方薬局の経営から着手。恵比寿店は、体の内側と外側からトータルケアできる整体やエステを取り入れることを視野に入れ、当時私のトレーニングを見てくれていたトレーナーへ声をかけて、ジムと漢方薬局を併設することが叶いました。

名古屋店は、当時働いていた漢方薬局のオーナーが出産をきっかけに手放すことになり、支店である名古屋店の患者さんを私が引き継ぐ形で薬局をオープン。そのタイミングで、国際中医師の資格を取得しました。

――資格取得までの経緯を教えてください。

実はオープンする際に出会ったのが、北京中医薬大学日本臨床研究所の理事の方だったんです。その方から「国際美容中医師」という、新しい資格ができたから取ってみたら?と勧められ、言われるがままに中国と日本を行き来し、無事取得。経営に、留学に、資格取得に、と大忙しな期間でしたが今の私の良い土台作りの期間だったと感じています。

――国際中医師と国際美容中医師の違いとは?

どちらの資格も不調を生じる根本原因を探し、対策を検討することで医療や美容の手助けをします。患者様の体を診て診断して…までは一緒ですが、国際中医師は漢方薬を処方するだけ。国際美容中医師は食事やツボ押し、生薬のパックをするなど、体の内側と外側のどちらからのアプローチが可能なんです。資格に「美容」とあるため、やはり美容に特化したアドバイスができるのが国際美容中医師を持つ利点と言えます。

――国際美容中医師を取得した結果、幅は広がりましたか?

そうですね。名古屋店では、私が資格を取得した話を聞きつけてエステメニューを作って欲しいとお願いされ、エステブースを導入しました。

――どんなメニューがあったのでしょう?

主に、吸い玉(カッピング)やカッサ、パックを組み合わせたトリートメントを施術。恵比寿店ではクライオ、ハイパーナイフ、ハイフなど特に美容に特化したメニューを提供していました。

国際美容中医師の資格取得をきっかけに、恵比寿、名古屋以外にもエステ店の経営も拡大させ、都内にいくつか店舗を持ちました。六本木店はクリニックと連携をしていたのでエンビロン、酸素カプセル、インディバ、脱毛などに美容点滴を合わせた施術を。下北沢店では、小顔整体をメインに行っていました。

これらのエステ経営によって、体の不調を整えるのは、内側だけではなく外側の美容視点も大事だと感じることが実感できる貴重な経験になったと感じます。


幼少期から抱えていた自身の悩みの改善を目指して、ヘルスケア業界に進んだ大久保さん。悩みの解決の次は、多くの人が健康に過ごすための食習慣が大事だと気づき、土台作りを行ってきました。後編では、現在手がけている「アイカ製薬」を起業した経緯と役割、今後の展望を伺います。

取材・文/東 菜々(レ・キャトル)

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