自身の肌あれから自然療法の奥深さに目覚める!【もっと知りたい!「ヘルスケア」のお仕事Vol.138/マークスボディデザイン セラピスト 江口麻衣さん】#1
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。
今回はセラピストとしてさまざまな不調や障がいを抱える方たちに寄り添いながら、講師として施術法を教えている江口麻衣さんにお話しを伺います。
前編では、江口さんがセラピストになったきっかけや、ご自身の肌荒れをきっかけに自然療法に目覚めたこと、フェイシャルリフレクソロジーに深く携わるようになったことなどお話しいただきました。
お話しを伺ったのは…
マークスボディデザイン セラピスト
江口麻衣さん
美容メディカルスパ、クリニックを経て現在は講師、セラピストとして活動。大人だけでなく障がいを持つ子どもたちへのセラピー活動も行っている。スペインIR認定フェイシャルリフレクソロジスト、英国IFPA認定アロマセラピスト、英国AoR認定リフレクソロジスト、米国Edu-K財団認定ブレインジムコース修了、J-EAT日本統合セラピスト教育協会認定 分子栄養学アドバイザーなどの資格を持つ。
何をやっても治らなかった肌荒れが自然療法できれいに
――江口さんがセラピストになったきっかけは何ですか?
大学生のときアロマエステサロンで、アルバイトをしたのがきっかけです。フランスの有名ブランドのコスメを使って、きれいになりたい女性や癒やされたい女性にオールハンドトリートメントの施術をしていました。精油そのものの奥深い世界があることを学んだののもここです。
――大学を卒業してから就職はどうなさいましたか?
総合美容を手がける会社に就職しました。環境づくりからお客さまに対する姿勢まで、新人研修で学んだことは今も心と身体に染みついています。現場に出るために、アロマセラピーとタラソテラピーについても、ここでみっちり学びました。その後、24歳で美容医療クリニックに転職したんです。
――アロマやタラソとはちょっと違う世界ですね。
私がそれまでやってきたのはお客さまのおもてなし。クリニックの世界は効果が求められます。お客さまの「より美しくなりたい」という要望に応えなければなりません。
ここでは最新の技術に触れられ、とても学ぶことが多かったのですが、体調を崩してしまったんです。肌荒れもひどくて、治療をしても薬を塗っても一時的に良くなってもすぐ元に戻っていました。医療にも限界があるんだなぁと感じ始めました。
――肌荒れがひどかったとは、今の肌状態からは想像もつきません。
ちょうどその時期、クリニックに併設されていた自然療法が学べる国際総合学院での仕事を受け持つようになりました。クリニックの院長は、最新医療と自然療法のどちらにも興味があったようです。私は学院の広報担当として勤務しながら、アロマセラピーやリフレクソロジーなどさまざまな療法を学びました。資格を取得したのもこの頃です。実務経験もあったので、講師として授業を受け持つことになりました。
自然療法を学んで、実生活に取り入れていくうちに肌荒れはいつの間にか治まっていました。
フェイシャルリフレクソロジーとの出会いが大きな転換点に
――江口さんが学院で学んだ療法のなかで、いちばん面白かったのは何ですか?
何と言ってもフェイシャルリフレクソロジーです。世界には西洋医学を補う補完代替療法がたくさんあって、そのひとつがフェイシャルリフレクソロジーなんです。スペイン在住のロネ・ソレンセンさんが創始者で、それまでの私には信じられないような奇蹟の症例が数え切れないほどあります。
――足裏のリフレクソロジーはよく耳にしますが、施術するのは顔ですか?
リフレクソロジーに「足」という意味はありません。漢字では反射療法とも呼ばれるように、各臓器や内臓につながるポイントや反射区が顔にもあります。顔には脳領域の運動野や感覚野の反射区もあるんですよ。
世の中には西洋医学が発展していない国があります。西洋医学にアクセスできない人に向けて、「こういう療法もあるんだ」と私の中の世界が広がりました。
――ロネさんとは、どうやって知り合ったんですか?
学院がお招きした海外セラピストの一人です。私もロネさんの講義を受けるうちに「もっと知りたい、もっと学びたい」想いが強くなって、海外研修にも一緒に出かけました。
アメリカ、オランダ、スペイン、デンマーク、中国へ行ってアシスタント講師をしたり、実際にセラピストとして施術をしたりもしましたね。
――海外での経験はいかがでしたか?
いちばん思い出に残っているのがアメリカでの出来事です。脳や身体に障がいのある子どもを持つ親に、子どもへのセラピー法を教えていました。その講座に言葉を話せず、ものを飲み込めない寝たきりの子どもを持つお母さんが参加しました。
――かなり重症のお子さんですね。
24時間介護が必要なので、いつも近くで見守れるようにトレーラーで生活しているんです。具合が悪くなると病院へ行って投薬や手術をする。
そうするうちに、身体がどんどん弱くなっていったそうです。そのお母さんから「子どもにセラピーをして欲しい」と頼まれました。意思の疎通はまばたきだけでしたが、今までにない身体の動きがあったんです。お母さんに必要なセラピーを教え、私たちはまた別の地区へ移動しました。
――いつもと違う反応があったら、お母さんも期待しますよね。
一週間ほど経って、そのお母さんからメールが届いたんです。
「ずっと開いたままの口が閉じるようになり、ものを飲み込むことができるようになった」って。「治療は医者に任せるしかなく、自分は何もできないと落ち込んでいたけれど、子どものためにできることがあるのは救いだ」と書かれていました。見守るだけで何もできないと思っていたけれど、自分の手でできることがあって、しかも回復している。お子さんだけでなく、お母さんのためにもなったんだな…と思える出来事でした。
――人の回復力はすごいですね。
西洋医学では手の施しようがないと言われても、その子どもが持っている生きようとする力や動かそうとしている体の機能を目覚めさせることができます。しかるべき施術をすれば、身体は目覚めて反応してくれるんです。
西洋医学を否定するつもりはまったくありません。西洋医学を補うための補完代替療法を組み合わせれば、これに勝るパワフルなことはありません。
ご自身の肌荒れを機に自然療法の奥深さに目覚めた江口さんが、フェイシャルリフレクソロジーの奇蹟の症例をお話しいただきました。
後編では仕事と育児の両立について、子育て研究会を立ち上げたいきさつなどをご紹介します。
撮影/森 浩司