今後ますます注目される姿勢矯正。日常的な悩みに寄り添うサービスが人気の秘訣【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.100/理学療法士・大沼勝寛さん】#1
「ヘルスケア業界」のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロに、お仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。
今回お話を伺ったのは、理学療法士・大沼勝寛さん。
もともとは病院で、理学療法士としてお勤めされていた大沼さん。今は独立され、猫背・姿勢矯正専門の整体院と、ピラティススタジオを開業されています。
前編では、そんな大沼さんに、理学療法士になったきっかけや現在の働き方について伺います。
姿勢矯正は今後ますます注目される分野。
病院だけでは難しいサポートも整体院ならできることがある
――理学療法士になられたきっかけはなんだったんですか?
父も母も看護師で、病院に行くことが多かったのが一番の理由かもしれません。特に母親は、看護師より理学療法士をしきりに勧めていました。看護師だと夜勤などもあって、いろいろ大変なことをわかっていたからでしょう。
理学療法士として資格を取ったのが2012年。8年ぐらい一般の病院に勤務したあと、独立しました。
――独立された当初、どうでしたか?
独立までに準備期間があったので、パーソナルトレーナーなどいろいろな資格を取得して、ある程度万全の状態で挑めました。ただ、やはり一人でやるとなると、体調を崩したり、何かあった時の対応など、組織でいた時とはまた別の心配がありましたね。
もちろん、お客さまが来てくれるかどうかの心配もありました。ただ、開業する前からYouTubeで体のことをいろいろ発信していたので、そこで認知してもらえた部分はあります。
――当初から「猫背・姿勢矯正専門」をうたっていたんですか?
はい。治療院はある程度ターゲットを絞ってあげた方が、お客さまからしたら選びやすいと思うんです。
なかでも「姿勢」というのは、体をスムーズに動かしたり、不具合を改善するために重要な位置付けになっています。病院で幅広い患者さんを診てきて、いろんなパターンを学び、いろいろなアプローチでアドバイスしてきたので、そういう経験も活かせると思いました。
昨今はノートパソコンやスマートフォンが当たり前になっていて、姿勢が悪い人は結構多いです。この分野は今後もっと注目されるだろうし、病院だけでは対応が難しい部分もあると思うので、そういったお客さまに寄り添ったサポートができればいいな、という思いでした。
――なるほど、確かに猫背は今や現代病ですからね……。今後ますます注目されそうですね。大沼さんは、整体院の他にピラティススタジオも運営してらっしゃいますよね?
はい。でも、基本そちらは裏方で、「監修」という形で携わっています。実は今年の夏頃、もう一つスタジオをオープンするんです。今あるスタジオはマットピラティスなのですが、新しくできる方はマシンを導入する予定。そちらができたら、僕もインストラクターとして表に立とうと思っています。
体の仕組みは知れば知るほど面白い!
施術だけでなくSNSも活用して
日常で役立つ情報を発信
――施術をする際、大切にされていることはなんですか?
お客さまの言葉をよく聞くこと。そして体の仕組みをできるだけ詳しく説明することです。
まず聴取ですが、その人が普段とっている動きや姿勢、習慣をしっかり伺うようにしています。そうすればおのずと、どの筋肉が硬くなっているか、どの関節に問題があるかがわかってくるんです。
ただし、アプローチするのはそこだけではいけません。筋肉は硬くなると、そこに相対する部分の筋肉も弱ってしまうんです。また、上半身に悩みがある場合でも、実はその原因は骨盤や脚にある場合もあります。
さらにいうと、体は繋がっているので、ある部分だけケアしても、他とのバランスが崩れたままだと、またすぐ悪い姿勢に戻ってしまいます。
例えば、普段ソファーに座ってスマホを見ている時の姿勢を思い出してください。骨盤と背骨が後ろに傾いて、猫背になっていませんか? 猫背の場合よく行う運動は、肩を広げる、胸を広げるストレッチ。たしかにやらないよりやった方がいいですし、一時的には改善するかもしれませんが、それだけでは戻るのも早いんですよ。それは、根本の原因である骨盤と背骨のクセをケアできていないからなんです。
姿勢をよくする、体の動きをよくするには、そこに関連するすべての箇所をきちんと調整してあげることが大切。特に骨盤は体の土台となる部分なのでしっかりケアしたいですよね。施術時はそういった仕組みについても、できる限り詳しく説明するよう心がけています。
――なるほど。確かに大沼さんのInstagramを拝見すると、体の仕組みについて詳しく説明してらっしゃって、とてもわかりやすいです。
体の仕組みってとても面白くて、一般の方ではちょっと想像できないような繋がりもあるんです。Instagramでは、みなさんに「体ってそういう仕組みになっているんだ」という、気づきを与えるようなワンポイントも組み込むようにしています。
――先ほどYouTubeのお話も出てきましたが、積極的にSNSを活用されているんですね。
組織を離れて個人でやっていくとなると、やはり自分自身が商品の一つになるので、情報発信は大切だと思います。
ただ最近は、YouTubeは少しお休みしています。というのも、以前はYouTubeでの情報発信をメインにしていて、登録者も26万人以上いたのですが、現在はそのアカウントを閉鎖してしまったんです。
――何があったんですか?
YouTubeは動画なのでいろいろな素材を使うのですが、その著作権のところに問題が起きました。すごく気をつけていたつもりなのですが、認識が不十分だったこともあり、引用先から申し立てが来てしまったんです。
しかもそれが、タイミングが悪いことに3つ同時に届いてしまい……。ひとつずつなら、都度修正対応すれば閉鎖する必要はなかったのですが、一度に3つ該当するとアカウントが止められてしまうんです。悔しいですが、仕方ありません。その後新しいアカウントも作りましたが、最近は主にInstagramに力を入れています。
気軽に発信できるのがSNSのよさですが、だからこそ見落としがちになることもある。今後ますます気を引き締めて取り組みたいと思います。
頭が冴えている午前中にアイディア作業。
メリハリをつけて仕事をすることで自分の体も大切に
――現在の働き方を教えてください。
基本的には整体院での施術になります。始業が遅めなので、朝はゆっくりお風呂に入って簡単な資料を読んだり、SNSでどういうことを発信するか考えたり。頭が冴えている午前中にアイディア作業を行います。
院での施術が始まれは、あとはもう実働。夜まで休憩がとれない時もありますが、時間が取れればInstagramの撮影や編集をしてしまいます。
――それはもはや、休憩と呼ばないのでは……。
そうですね(笑)。ただ、以前YouTubeの撮影・編集していた時よりは、すごく楽に感じます。
夜は20時か21時に帰宅。就寝までできるだけゆっくりリラックスして過ごすようにしています。
――とはいえお忙しそうです。ご自身のケアはどのようになさっていますか?
施術の中で、お客さまと一緒にストレッチをしたり運動をしたりするので、それだけである程度コンディショニングできるのですが、どうしても疲れている時は、自宅や院でストレッチポールを使ってメンテナンスします。本当は他の整体院やスタジオに行って施術やトレーニングを受けた方がいいんですけど、残念ながら最近はあまりできてないですね。あとは犬を飼っているので、一緒に散歩して気晴らししています。
取材・文/児玉知子
撮影/喜多二三雄