ヘルスケア&介護・看護・リハビリ業界の応援メディア
ヘルスケア 2024-10-18

Title:同行援護に正解は存在しない。細かなヒアリングで心地よいガイドを目指す【介護リレーインタビュー Vol.50/同行援護事業所おとも】#2

介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。

今回お話を伺ったのは、
同行援護事業所おとも所属のガイドヘルパー(同行援護従業者)として活躍する、金子寧々さんです。

前編では、ダブルダッチの世界大会優勝、ギネス記録保持者であり、現在もパフォーマーとして活躍している金子さんが、なぜガイドヘルパーとして活動をするようになったかを伺いました。

後編では、金子さんが普段ガイドヘルパーとして心がけていることや、仕事のやりがいについて、お話を伺います。

利用者さんと一緒に、未知の世界を知ることができる

ガイドヘルパーとして経験を積む機会を積極的につくっている金子さん。印象的だった視覚障害のある方からの依頼について教えてくれた

――視覚障害のある方からの依頼内容で、特に印象的だったものはありますか?

私をよく指名してくださる利用者さんで、電車好きの方がいらっしゃるんですが、特急や新幹線などに乗って移動して、目的地に着いたらご飯を食べて帰ってくる、というのがお決まりのコース。

そのなかでも印象的だったのが、群馬県にある土合駅が目的地のときでした。ホームが地下にあるのですが、10分くらい、462段の階段を降り続けないとたどり着けない、秘境駅として有名なんです。こうやって利用者さんと出かけることで、今まで知ることがなかった世界を知れるのも、とても楽しい仕事だと思っています

――ちなみに、目の見えない方はどうやって電車を楽しんでいるのでしょうか?

視覚障害のある方は割と電車好きの方が多くて、楽しみ方もそれぞれなのですが、発車ベルや扉が閉まる音、振動、座席の感触など、さまざまな要素を楽しんでいらっしゃいます。

以前同行した方のなかには、「何時何分の電車に乗ったら、何時何分に○○駅の○番線ホームに着くから」と時刻表をすべて暗記している方がいて、本当に驚きました。あとは匂いで電車の種類が分かる男の子にも同行したことがあり、通過しただけで「今、丸の内線が通ったでしょ」と分かるんです。そんな風に電車を楽しんでいる方がいるということも知らなかったので、驚くと同時に世界の見方が広がった気がしました。

自分が正解を決めつけず、利用者さんに確認することが大切

金子さんが所属する「同行援護事業所おとも」。視覚障害者向けの補装具などを取り扱う「おとも用具店」も併設している

――ガイドヘルパーとして心がけていることは、どんなことでしょうか?

利用者さんが気を遣わずに一緒にいられる関係性を築くことを心がけています。利用者さんのなかには、ひとりでいたいけれど、出かける場所の関係上、やむを得ずガイドを利用しているという人もいると思うんです。だからこそ気を遣わないで、楽にいられる関係性がとても大事ではないかと思っています

実際、利用者さんから「あなたといると落ち着く。気を遣わず楽にいられて、とてもいい」と言ってもらったことがあり、そのときは本当にうれしかったです。

――それはうれしいですね。ほかにも心がけていることはありますか?

気をつけてほしいこと、やってほしいことをこちらが配慮して決める、というようなことはしないで、利用者さん1人ひとりに必ず確認するようにしています。同行援護の形に正解はなくて、利用者さんが100人いたら理想的なガイドも100通りあると思うんです。その方にとって一番心地よく、安全なガイドをするためには、みなさんに聞いていくしかないと思っていて、その時間を大切にしています。

――安全面での配慮以外で、外出を楽しんでもらうために気をつけていることはありますか?

同行援護の基本でもあるのですが、自分の感情を入れずに情報だけ伝えることです。たとえば景色を見たときに「○○があるからきれいです」と言うのではなく「○○と○○があります」と情報だけを伝えるようにしています。きれいだと思ったことを伝えたいと思ったときでも、まず情報からお話し、そのあとに「私は○○がきれいだと思いました」とお伝えするようにしています。

また心地よいコミュニケーションを取るために、その方の会話のテンポに合わせること、話しを聞いてほしい方なのか、話しを聞きたい方なのかの見極めもするようにしています。

あとはコミュニケーションの情報として伝わるのが声だけになるので、言葉が冷たく聞こえず優しいトーンになるよう、声の出し方には注意しています。以前同行していたときに「あなたはニコニコしていていいわね」と言われたことがあって、声から私の表情も伝わったのだと思い、とてもうれしかったです。

「またお願いします」のひと言が何よりのやりがい

自分のガイドが評価され、指名を受けるときにやりがいを感じるという金子さん

――ガイドヘルパーとしてのやりがいは?

「またお願いします」と言ってもらえたときや指名をしてもらったときに、やりがいを感じます。サポートがうまくできたという自信になりますし、もっともっと喜んでもらえるように学んでいきたいなと思うんです。

――今後の目標を教えてください。

同行援護の仕事を続けていきたいですし、少しでも視覚障害のある方が自分らしく、外出を楽しめる機会を提供できたらいいなと思っています。そして、もうひとつ目標にしているのが、ダブルダッチを視覚障害のある方に体験してもらうこと。みなさん本当に空間認知の力が高いので、ダブルダッチもできるのではないかと。今までみなさんの大好きな世界を体験させていただいたので、私の大好きな世界も体験してもらえたらうれしいですね。

金子さん流!ガイドヘルパーの心得三箇条

1.気を遣わせない関係性を築く

2.利用者さんに聞きながら、理想のガイド方法をつかむ

3.声のトーンを優しくし、情報を正確に伝えることを心がける


金子さんがガイドヘルパーの仕事に対して、真摯でありながら、心から楽しんでいる様子が伺えた取材となりました。このような姿勢が利用者の方の信頼につながり、指名をしてもらうことが多いのだろうと感じました。

Information

同行援護事業所おとも
住所:東京都足立区梅島3-34-5 西崎ビル1F
TEL:050-5526-2818

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事