あん摩マッサージ指圧師の法律とは? どんな内容なの? 英語版はある? あはき法のガイドラインとは?
あん摩マッサージ指圧師を目指すのならば、技術を磨くことも必要ですが、安全な施術をおこなうために法律・法令・ガイドラインについても知っておきましょう。
「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」とは、あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師の免許・業務内容・広告のガイドラインについて規定する、とても重要なものです。しかし、初めて見る方は、読んでも何が書かれているのかわかりづらいかもしれません。
今回は「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」(通称あはき法)の内容について解説します。広告を制作する際のガイドラインや英語版についても言及しますので、あん摩マッサージ指圧師の仕事に就いた際は参考にしてみてくださいね。
あん摩マッサージ指圧師の法律とは?
あん摩マッサージ指圧師に関わる法律として一番に挙げられるのが、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」(通称あはき法)です。まずは、このあはき法の内容について解説します。
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律には、あん摩マッサージ指圧師およびはり師・きゅう師について、おもに以下のような内容が定められています。
・あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師を名乗る条件
あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許を持っていなければならない。
・資格試験の受験条件
文部科学大臣の認定した学校や施設にて三年以上通い、あん摩マツサージ指圧師、はり師又はきゆう師となるのに必要な知識及び技能を修得したのち、あん摩マツサージ指圧師国家試験、はり師国家試験又はきゆう師国家試験に合格しなければならない。
・資格試験についての詳細
試験の申請をおこない、受験手数料の支払いが必要。
・免許を与えられない者
心身の障害によりあん摩マツサージ指圧師、はり師又はきゆう師の業務を適正に行うことができない人、罰金以上の刑に処された人などが該当。
・施術の制限や義務、禁止事項
外科手術や薬品の投与などをしてはならない。医師の同意を得ずに、脱臼や骨折した患部に施術してはいけない。はり師は、はりを施そうとするときは、はり・手指・施術する部位を消毒しなければならない。
・広告のガイドライン
施術者の技能・施術方法・経歴などを広告にしてはならない。
・施術所の届出について
施術所を開設した場合、開設後10日以内に都道府県知事に届け出なければならない。
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律は、あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師を目指す方にとってはとても重要な法律です。お客様に安心して施術を受けていただくためにも、しっかりと内容を理解しておきましょう。
同じく医療類似行為をおこなえる国家資格として柔道整復師がありますが、こちらについては別の法律で定められています。
マッサージの業務ができるのは、国家試験に合格して免許を持つあん摩マッサージ指圧師だけ
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律では、国家資格に合格して免許を交付された人のみあん摩マッサージ指圧師と名のることができるとしています。無資格で単に「マッサージ師」を名乗る者もいますが、法律の意図を考慮すれば本来はこれも控えるべきでしょう。
あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得するには、認定された学校・養成施設に3年以上通い、必要な技能・知識を習得する必要があります。試験科目や必要書類などといった情報の一覧については、以下のサイトで確認することができます。
柔道整復師はマッサージできないの?
あん摩マッサージ指圧師と同じく医療類似行為をおこなえる国家資格に、柔道整復師というものがあります。このふたつの職業はそれぞれ別の法律で規定されており、施術内容や対象とする疾患が異なります。
たとえば、あん摩マッサージ指圧師が対象とする疾患は肩こりや腰痛などの慢性疾患ですが、柔道整復師が対象とする疾患は外傷性の明らかな骨折・脱臼・ねん挫などです。
なお、柔道整復師はマッサージをおこなうことができませんし、同様にあん摩マッサージ指圧師も整復・固定をおこなうことはできません。両方の施術を1人でおこなう場合は、両方の資格を取得する必要があるのです。
英語版はあるの?
東洋医学に基づいたあん摩マッサージ指圧師は、海外でも評価されつつあります。英語であん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律を理解したいと思われる方もいるでしょうが、残念ながら2020年2月現在、英語版は存在しません。
あはき法の広告に関するガイドラインとは?
あん摩マッサージ指圧師がおこなう施術は、医療行為でこそないものの、身体に重要な影響を与えうる医療類似行為です。そのためあはき法では、消費者に間違った認識を抱かせないことを目的として、広告にガイドラインを設けています。
独立開業につき広告を制作する際などは、ガイドラインに違反しないようとくに注意しなければなりません。ここからは、あはき法の定める広告のガイドラインについて解説します。
広告できるものについておさらいしよう
まずは、あん摩マッサージ指圧師が広告してよいものについて解説します。どのようなものが広告にあたるかについてもあわせて解説しますので、そちらもぜひ参考にしてみてください。
あん摩マッサージ指圧師が広告できるものとは?
あはき法で定められたあん摩マッサージ指圧師が広告できる内容は、おもに以下のとおりです。
・施術者である旨、施術者の氏名と住所
・業務の種類(あん摩・マッサージ・指圧・鍼・灸)
・施術所の名称、電話番号と所在の場所を表示する事項
・施術日と施術時間
・その他厚生労働大臣が指定する事項
もみりょうじ(揉み療治)、やいと・えつ(両方とも灸の意)、小児鍼
出張施術・夜間施術・休日施術の実施について
医療保険療養費支給申請ができる旨、駐車設備に関する事項など
どんなものが広告になるの?
広告にあたるものとは、誘因性と特定性があるものです。わかりやすくいえば、サロンの名前や住所が記載されており、利用をうながす意図があるものです。具体的な例としては、チラシ・看板・インターネットサイトなどがあげられます。
広告にあたらないものとは?
広告とは誘因性と特定性があるものをさしますが、逆をいえば、それらの要素を満たさないものは広告にあたりません。具体的な例としては、従業員を募集する求人広告や学術論文などがあげられます。
細かい注意点を守る必要はありますが、お客様の求めに応じて送付するものであれば、チラシやパンフレットも広告にあたらない場合があります。
これまでの広告にはどんな問題があったの?
先ほども解説したとおり、医療類似行為は身体に重要な影響を及ぼしうるものです。しかしながら、その内容を明確に知ることは、素人には難しいのもまた事実です。あはき法によってガイドラインが定められる以前の広告には、さまざまな問題点がありました。
医業行為と誤認される表現や記載|医療・治療
あん摩マッサージ指圧・鍼灸の広告においては、これまで「医療」「治療」という表現や記載がおこなわれてきました。しかしこれらは、医師がおこなうような業務ができるものという勘違いを招く可能性があります。
現在では、医療・治療という表現は禁止こそされていないものの、控えるべきとされています。
施術の効果効能をうたう情報の提示・表現
あん摩・マッサージ・指圧の効果として、肥満解消や老化防止などをうたう広告もありました。しかしこれらの表現は、「効果効能を保証したと誤解するような広告をしてはならない」という薬事法に違反する可能性もあります。
現在では、あはき法のガイドラインによって、施術者の技能・経歴・施術方法などは記載を禁止されています。
誇大広告や誤認を招く表現
ガイドラインが定められる以前の広告には、すべて保険診療で済ませられるかのような誤解を招く記述、「これを使えば治る」というような誤認を招く表現がありました。これらは景品表示法に違反する可能性があります。
誇大広告・誤解を招く表現をさけるために、あはき法では、広告に記述してよい事項を具体的に定めています。
交通事故後の施術に関する表現
交通事故後の施術に関してはとくに、通事故に起因する症状を治療できるという誇張広告が見られました。中には「交通事故治療院」などの表現を用いている施設もあったのです。
医師がおこなうような業務ができると誤解を招く恐れがあるため、現在さらなるガイドラインの強化が検討されています。「院」や「診療」といった医療行為を連想させる文言を使用しない、「交通事故専門」や「交通事故を取り扱い」などは使用不可にすべきという見解が出されています。
法律や関連法令を理解してお客様に安心して施術を受けてもらえるようにしよう
あはき法という通称で知られる「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」は、あん摩マッサージ指圧師にとって大切な情報が定められた法律です。その内容は、あん摩マッサージ指圧師の資格や業務内容についてのことから広告のガイドラインにいたるまで、多岐にわたります。
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師に許可されている施術の範囲を守り、お客様に安心して施術を受けてもらえるようにつとめましょう。そのためには、法律や関連法令、ガイドラインをきちんと理解しておいてくださいね。
出典元:
厚生労働省
第8回 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会(資料) 資料1 広告ガイドライン(案)作成方針(PDF:9MB)
e-Gov
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)
けんぽれんあいち 施術所 広告調査から見えた現状