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特集・コラム 2022-12-09

ケアマネジャーがおこなうアセスメントとは?流れを確認して理解を深めよう|おすすめの本も紹介

ケアマネジャー(介護支援相談員)の仕事では、要介護者がどのような介護を必要としているのかを明確にし、有効な対策を提案することが必要です。この業務の過程では適切な手順を踏む必要があり、それらをまとめて「アセスメント」と呼びます。

ここでは、ケアマネジャーの仕事の基準となるアセスメントの流れを解説したあと、アセスメントシートの様式とアセスメントへの理解を深めるのにおすすめの書籍を記載しています。

目次
  1. 介護におけるアセスメントとは具体的にどんなこと?
  2. 介護におけるアセスメントの重要性とは?
  3. ケアマネジャー(介護支援専門員)がおこなうアセスメントの流れを確認しよう!
  4. アセスメントをおこなう際に必要なスキルは?
  5. アセスメントシートはどれが使いやすい? 7つの様式を紹介
  6. 居宅介護でも施設介護でも|アセスメントへの理解を深める本を紹介
  7. アセスメントはサービス実施に欠かせないプロセス!

介護におけるアセスメントとは具体的にどんなこと?

アセスメントとは、一般的に「評価」や「査定」と訳される英語です。介護におけるアセスメントでは、利用する要介護者やそのご家族がなにを求めているのか、取り巻く環境や状況を考慮して悩みや課題を把握して分析し、なにが必要なのかを正しく評価・査定します。

同じ介護度でも、すべての人が同じ生活環境や家族構成、そして同じことを要望するわけではありません。そのため、同じ介護度だからといって、決められたマニュアルどおりのサービスをしていては、その人にとって最適な支援ができない可能性があります。

そこで必要になってくるのが、介護におけるアセスメントです。同じ介護度であっても利用者それぞれの生活環境や状況、そして要望を把握して分析することが求められます。そこから利用者にとって、なにが最適な支援となるのかを明確にすることが重要です。一般的にはケアプランを作成する際、おもにケアマネジャーがおこないます。

アセスメントをまとめるにはアセスメントシートを使おう

利用者にとって最適な支援をおこなう際に、使用すると便利なのがアセスメントシートです。アセスメントシートとは、ケアプランを作成するときに収集した利用者の情報をまとめるシートのことをいいます。

このシートに利用者の生活環境や状況、家族構成など利用者のあらゆる情報を集約し、介護スタッフで共有するのが特徴です。ただし、アセスメントシートにはいくつかの様式があるのが特徴です。その様式については、のちほど解説します。

介護におけるアセスメントの重要性とは?

利用者やその家族の生活環境や状況に合ったケアプランを作成することこそが、質の高い介護サービスへとつながります。それを実現するためには、アセスメントによる正確なニーズの把握が必要不可欠です。

介護度が同じだとしても、利用者のニーズが必ずしも同じとは限りません。利用者によって生活環境や家族構成は違いますし、考え方や生き方も違います。その人がどんな考え方を持って、これからどう生きていきたいのか、その人の状態としっかり向き合うことが大切です。

また、アセスメントはアセスメントシートなどを利用して、介護スタッフ全員で共有することも必要となります。介護スタッフがそれぞれ自分の正しいと思う介護サービスをおこなうのではなく、ケアプランの意図を全員で共有し、統一した介護サービスを実施することが大切です。

アセスメントとモニタリングの違い

ケアマネジャーの重要な仕事であるアセスメントとモニタリングは、いずれもケアプランの計画から実行までの過程において生じる業務です。

アセスメントはケアプランを作成する際におこなう情報収集であるのに対し、モニタリングは作成されたケアプランどおりに介護サービスを提供できているかの確認なので、根本的に両者は異なります。

また、両者の大きな違いのひとつがおこなうタイミングです。アセスメントはケアプランを作成する際、つまり介護サービスの提供前にしますが、モニタリングは介護サービスの提供後におこないます。

ケアマネジャー(介護支援専門員)がおこなうアセスメントの流れを確認しよう!

ケアマネジャーがおこなう業務では基本的なアセスメントを把握したうえで介護者に接し、課題などを明確にしながら、有効な介護方法などを提案していくこととなります。

ここでは、このアセスメントの流れを7つの段階にわけ、それぞれの詳細について見ていきましょう。

1. アセスメントに必要な情報を集める

ケアマネジャーのアセスメントでは、最初に介護者に関する情報の収集をおこないます。ここで重要となるのは国が定めている情報項目を必ず押さえることであり、そのためにはアセスメントシートを利用しなければなりません。

また、この段階では個々の介護者ならではの環境や身体状況に関する情報収集もおこなう必要があります。この情報収集をするためには、要介護者本人、もしくはその家族と直接話をしながら、アセスメントシートの各項目を埋めていくことが重要です。

2. 詳しく見る必要がある項目をピックアップする

収集した情報を生活に支障をおよぼす恐れのあるものとそうでないものに分類することも、ケアマネジャーのアセスメントでおこなわなければいけません。

この作業を「スクリーニング」と呼び、ここではあくまでも要介護者本人の生活に対してのみ支障があるかどうかを判断する必要があります。

また、スクリーニングの結果はアセスメントシートに逐一記入していくと、情報の整理がしやすいでしょう。

3. ピックアップした項目について掘り下げる

スクリーニングによって生活に支障をおよぼす恐れがあると判断した項目に関しては、さらに掘り下げることで、実際にどのような支障が生じうるのかを明確にしていく必要があります。

また、実際に要介護者へおよんだ支障(介護がなかったことで発生した事故など)に関する情報をまとめることも、ケアマネジャーのアセスメントにおけるこの段階でおこなうべきことのひとつです。

4. 生活上の支障の原因を把握する

掘り下げによって明確になった生活上の支障が発生することには、なんらかの原因があります。ケアマネジャーのアセスメントでは、この原因を把握することも忘れてはいけません。

また、具体的な原因の一例としては「病気による痛み」「急性の病気」「精神疾患」「認知症」などのさまざまなものがあり、この段階ではより具体的な原因を特定することも重要です。

5. 支障の原因について意向を確認する

支障の原因が明確になったら、それに対して要介護者本人やその家族がどのような結果を望んでいるのかを確認します。

たとえば、生活上で生じた支障が病気によるものである場合、その病気に対して本人や家族がどのような考えを持ち、将来的にどのような状態になりたいのかを聞き取ることもケアマネジャーのアセスメントです。

また、この段階では、意向が聞き取りにくい場合にケアマネジャーのほうから提案をし、それに対する受け答えから本人や家族の意向を分析していく方法もあります。

6. ケアプランへの組み込みを考える

ケアマネジャーが提案するケアプランの目的は、「改善」「維持」「予防」などの種類に分類ができ、本人や家族の意向に対してどれが最適であるかを判断することもアセスメントではおこなわなければなりません。

また、この段階では、必ずおこなわなければならない介護と医療対応を明確にすることもケアマネジャーの重要な役割です。

7. 課題を抜き出し、把握する

以上の手順を踏みながらアセスメントを実行していくと、その過程ではさまざまな課題が表出します。

これらの課題を抜き出し、把握・改善することもまたケアマネジャーの役割であることから、アセスメントではつねに課題を見つけられるよう注意を払うことも重要です。

アセスメントをおこなう際に必要なスキルは?

アセスメントをおこなう際に、必要となるスキルはあるのでしょうか。ここでは、アセスメントをおこなう際に必要な能力をご紹介します。

困りごとや悩みを引き出す質問力

アセスメントをおこなう際に必要な能力は、利用者の困っていることや悩みを引き出す質問力です。質の高い介護サービスを提供するためには、利用者がどんなことに困り、どんな悩みを持っているのかを引き出すことが欠かせません。

その際、意識して使いたいのが、答えやすい質問をする力や答えたくなるような問いかけをする力です。質問には「はい」と「いいえ」だけで答えられるものと、少し考えて自分の言葉で答えなければならないものがありますが、その両方をうまく組み合わせて質問し、利用者の本心を引き出すことが求められます。

個性を理解する情報収集力

介護サービスは、利用者ひとりひとりに合ったものを提供する必要があります。そのためには利用者がどんな考え方を持ち、どんな風に生きていきたいのか、その人の個性をよく理解しなければなりません。

このとき必要になるのが、高い情報収集力です。利用者本人からはもちろん、そのご家族やこれまで利用者に関わってきた多くの人から情報を得ることが必要となります。

利用者本人も気づいていないこともあるため、利用者をより深く理解するためには利用者本人からだけ情報を収集すればいいわけではありません。

利用者のニーズを読み取る洞察力

アセスメントをおこなう際には、利用者の本当のニーズを読み取る高い洞察力も必要です。洞察力というのは、いきなり身につけられるものではありません。ちょっとした変化にも気づけるよう、ふだんから観察力を磨いておく必要があります。

また、利用者が困っていることが必ずしも本当のニーズであるとは限りません。もちろん困っていることもニーズのひとつであることは間違いありませんが、利用者のニーズがそこだけにあるとは限らないからです。

アセスメントシートはどれが使いやすい? 7つの様式を紹介

ケアマネジャーのアセスメントではより専門的な観点から課題を抽出し、有効な対策を検討・提案することが主要な業務となります。そして、これらの業務を抜かりなくおこなうには、アセスメントシートにて重要な項目を埋めながら情報収集をしていくことが大切です。

続いては、ケアマネジャーのアセスメントにおいて不可欠なアセスメントシートのなかでも、とくに使いやすい様式のものを7つご紹介します。

ケアマネジメント実践記録様式

日本社会福祉士会が発行するこちらのケアマネジャー用アセスメントシートでは、要介護者の心身の状態や生活歴といった基本的なことだけでなく、介護にかかわる家族の情報や介護保険に関する情報も記録できます。

項目が多岐にわたる点はこのアセスメントシートのメリットのひとつとなっており、実務サービスだけでなく研修などで活用することも可能です。

日本介護福祉士会方式

日本介護福祉士会が発行するこちらのアセスメントシートは複数の書面にわかれており、各項目のチェックや課題分析を異なるシート上でおこなえます。これにより、収集した情報の整理がしやすくなる点は、このアセスメントシートのメリットでしょう。

また、このシートには事故報告書やインシデント報告書も付属しているため、実際のケアマネジャー業務での実用性は非常に高いといえます。

日本訪問看護振興財団版方式

日本訪問看護振興財団が発行しているこちらのアセスメントシートは14枚の書面にわかれています。したがって、収集した情報の整理はよりしやすくなり、課題も見つけやすくなるでしょう。

また、同財団のホームページではこのシートに関するQ&Aも公開されているため、ケアマネジャーの実務だけでなく、その研修において活用するのもおすすめです。

包括的自立支援プログラム

「全国老人福祉施設協議会」「全国老人保健施設協会」「介護力強化病院連絡協議会」が開発した様式です。

介護施設団体が開発した様式であることから、介護施設での採用率が高く、厚生労働省の調査によると介護老人福祉施設の約半数が採用しているといわれています。

プログラムの内容は、提供している介護サービスの分析や利用者のニーズを把握しやすくなっており、介護スタッフ間で共有しやすく、利用者や家族にもわかりやすい様式となっているのが特徴です。

居宅サービス計画ガイドライン

全国社会福祉協議会が開発したアセスメントシートです。利用者の強さを理解したうえで、それをケアプランに活かすことにしています。

自分の問題は自分自身で解決するという利用者の強い意志を支援することを目的とした、エンパワメント支援の考え方が盛り込まれているのがポイントです。全国の居宅介護支援事業所の約4割で採用されているといわれています。

MDS-HC方式

MDS-HC方式は、在宅介護事業者と施設事業者のどちらでも使用可能です。介護サービスを利用する方のなかには、在宅介護と施設介護の両方を利用する方もいます。両方を利用する方の情報を集め、分析する際の基準として活用されているシートです。

このシートであれば、介護サービスを提供する際に重要な「機能面」「感覚面」「精神面」「健康問題」「ケアの管理」「失禁の管理」という6つの領域をすべて把握できます。

R4

公益社団法人全国老人保健施設協会は、介護老人保健施設での支援のために「R4システム」を開発しました。そのR4システムにもとづいたアセスメントシートの様式がR4です。

R4の「R」は老健をローマ字表記にしたときの頭文字を取っており、「4」はシステム内で随所に4つの括りが出ることから命名されました。介護老人保健施設の情報を分析したものをICFという分類法を用いて、5段階の絶対値評価をおこないます。

居宅介護でも施設介護でも|アセスメントへの理解を深める本を紹介

居宅介護・施設介護を問わず、介護現場におけるアセスメントへの理解を深めるためには、関連書籍などを読みながら自身が日々おこなっているケアマネジャー業務では触れることのない情報に触れてみることも重要です。

続いては、多種多様な介護関連商品を取り扱っているAmazonなどの通販サイトでもかんたんに購入できるアセスメント関連のおすすめ書籍をご紹介します。

『アセスメント:情報収集からケアプラン作成まで (だいじをギュッと! ケアマネ実践力シリーズ)』

一般社団法人日本ケアマネジメント学会の副理事長が編著をおこなったケアマネジャー向けの書籍となっています。

アセスメントにおいて押さえる必要のある23の課題分析標準項目がていねいに解説されており、アセスメントシートの記入方法などで悩んだ際などに活用するのもおすすめです。

出典元:中央法規
著者:白木裕子

『ケアプラン&アセスメントで使える!ケアマネのための医学の知識』

ケアプランの作成を担当するケアマネジャーが、介護の現場でよく遭遇する95の疾患を医療の観点から解説し、アセスメントとケアプラン作成のポイントについて紹介しています。日常の健康管理や人体の構造と機能などについても説明されており、検査値などの付録もついている便利な1冊。

本書は、2015年に刊行されたものを最新の情報をもとに読みやすく使いやすいサイズにリニューアルした改題改訂増補版です。利用者の疾病別に、アセスメントで聞くべきことやケアプランに盛り込むポイントがわかります。

出典元:ユーキャン学び出版/自由国民社
著者:ユーキャン介護職のためのケアプラン研究会

『作成手順がよくわかる ケアプラン事例集:アローチャートで見えるアセスメントの思考過程』

こちらの書籍では、アローチャートを使用する手法でケアマネジャーのアセスメントを「見える化」する方法が紹介されています。

また、具体的な事例が多数掲載されているのもこの書籍の特徴のひとつです。これらはアセスメントシートへ収集したデータを記入する際にも活用できます。

出典元:中央法規
著者:石田英一郎、色部恭子、大羽孝児

アセスメントはサービス実施に欠かせないプロセス!

ケアマネジャーとして最適なサービスを提供するためには、その基礎となるアセスメントをしっかりと押さえることが大切です。また、その際には北海道から沖縄県まで共通で使用されている国が指定した情報項目を網羅したアセスメントシートを活用するのがよいでしょう。

ケアマネジャーとして介護サービスを提供するうえでは、これらのポイントを押さえるだけでなく、アセスメントに対する理解も深め、個々の利用者が必要としているサービスの内容を推し量るようにしてください。

引用元
全国老人保健施設協会:全老健版ケアマネジメント方式R4システム
自由国民社:ケアプラン&アセスメントで使える!ケアマネのための医学の知識

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