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介護・看護・リハビリ 2020-03-01

デイサービスの費用も医療費控除の対象になります

「デイサービスの利用でも医療費控除を受けられますか?」と聞かれることがあります。回答から言うと、基本的には医療費控除の対象外です。しかし、中には医療費控除の対象になる場合もあるのです。ここでは、ちょっと難しい「介護保険サービスを受けた場合の医療費控除」について解説致します。

医療費控除とは

まず、今まであまりお世話になったことのない方のために、医療費控除の説明を致します。
医療費控除とは治療等(入院・通院・検査・出産・歯科・医薬品)のために利用者が実際に支払った医療費の一部を税金(所得税)から控除することです。医療費がたくさんかかってしまった年に、少しでも自己負担分を軽くするために確定申告で手続きをすることで控除されます。

医療費控除対象額の計算方法

1月1日から12月31日までの1年間に、自己または家族(※1)のために支払った医療費の負担金額の合計が10万円(※2)を超えた場合、その超えた金額をその年の所得から差し引くことができます(最高200万円)。但し、生命保険等で保険金が補てんされた場合、その金額を差し引きます。

実際に支払った医療費の合計額 保険金などで補てんされる金額 10万円(※2) 医療費控除額の対象となる金額
国税庁ホームページより

※1:生計を一にする親族(6親等内の親族と3親等内の姻族)
※2:年間所得金額が200万円未満の人は所得金額の5%

医療費控除の対象

医療に対して支払ったお金は医療費控除の対象となりますが、福祉(介護)に対して支払ったお金(介護保険対象自己負担額)は医療費控除の対象となりません。つまり、要介護者に対する通常のデイサービス(通所介護)の介護行為の対価は医療費控除の対象になりませんが、デイサービスの中でも医師の指示により行うリハビリなどの医療部分について控除対象となるのです。

1 医療費控除の対象となる居宅サービスの種類

・訪問看護
・介護予防訪問看護
・訪問リハビリテーション
・介護予防訪問リハビリテーション
・居宅療養管理指導【医師等による管理・指導】
・介護予防居宅療養管理指導
・通所リハビリテーション【医療機関でのデイサービス】
・介護予防通所リハビリテーション
・短期入所療養介護【ショートステイ】
・介護予防短期入所療養介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限る)
・複合型サービス(上記の居宅サービスを含む組合せにより提供されるもの[生活援助中心型の訪問介護の部分を除く]に限る)

2 上記1の居宅サービスと併せて利用する場合のみ医療費控除の対象となる居宅サービスの種類

・訪問介護【ホームヘルプサービス】(生活援助[調理、洗濯、掃除等の家事援助]中心型を除く)
・夜間対応型訪問介護
・介護予防訪問介護(※平成30年3月末まで)
・訪問入浴介護
・介護予防訪問入浴介護
・通所介護【デイサービス】
・地域密着型通所介護(※平成28年4月1日より)
・認知症対応型通所介護
・小規模多機能型居宅介護
・介護予防通所介護(※平成30年3月末まで)
・介護予防認知症対応型通所介護
・介護予防小規模多機能型居宅介護
・短期入所生活介護【ショートステイ】
・介護予防短期入所生活介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合及び連携型事業所に限る)
・複合型サービス(上記1の居宅サービスを含まない組合せにより提供されるもの[生活援助中心型の訪問介護の部分を除く]に限る)
・地域支援事業の訪問型サービス(生活援助中心のサービスを除く)
・地域支援事業の通所型サービス(生活援助中心のサービスを除く)

医療系のサービスをケアプランに基づいて受けている場合、そのサービスは全額医療費控除の対象になり、さらに医療系でないサービスについても控除対象になります。ケアプラン内に医療系サービスがない場合(例:デイサービスのみ受けている場合)は控除の対象になりません。

3 医療費控除の対象外となる介護保険の居宅サービスの種類

・訪問介護(生活援助中心型)
・認知症対応型共同生活介護【認知症高齢者グループホーム】
・介護予防認知症対応型共同生活介護
・特定施設入居者生活介護【有料老人ホーム等】
・地域密着型特定施設入居者生活介護
・介護予防地域密着型特定施設入居者生活介護
・福祉用具貸与
・介護予防福祉用具貸与
・複合型サービス(生活援助中心型の訪問介護の部分)
・地域支援事業の訪問型サービス(生活援助中心のサービスに限る)
・地域支援事業の通所型サービス(生活援助中心のサービスに限る)
・地域支援事業の生活支援サービス

国税庁「医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価の概要」

4 注意点

領収書に医療費控除の対象金額が記載

サービス利用料を支払った時に発行される領収書には、医療費控除の対象となる医療費の額が記載されているので、チェックするようにしましょう。

医療費控除の対象になる交通費

通所リハビリテーションや短期入所療養介護を受けるため、介護老人保健施設や指定介護療養型医療施設へ通う際に支払った交通費は通常必要なものであり、医療費控除の対象となります。タクシーを利用した時等は領収証を貰い、保管しておきましょう。但し、自家用車を利用した場合のガソリン代等の費用は対象外です。

おむつ代も医療費控除の対象!?

おむつ代も医療費控除の対象として申告できます。しかし、申告できるのは6か月以上寝たきりの状態で、医師から「おむつの使用が必要」と認められた場合のみです。

確定申告の際には『おむつ代の領収書』と、医師による『おむつ使用証明書』を添付する必要があります。但し、2年目以降は「主治医意見書」の記載内容が次の要件を満たしている場合、「おむつ使用証明書」の代用として、市区町村が発行する「おむつ代の医療費控除に係わる確認書」を利用することができます。

【要件1】記入日が、おむつを使用した当該年またはその前年に作成されたものである。
【要件2】障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)が「B1・B2・C1・C2」のいずれかである。
【要件3】尿失禁発生の可能性が「あり」である。

払い戻しを受けた場合

高額介護サービス費として払戻しを受けた場合は、その高額介護サービス費を医療費の金額から差し引いて医療費控除の金額を計算することとなります。なお、指定介護老人福祉施設及び指定地域密着型介護老人福祉施設の施設サービス費に係る自己負担額のみに対する高額介護サービス費については、2分の1に相当する金額を医療費の金額から差し引いて医療費控除の金額の計算をすることとなります。

入居施設によって医療費控除額は違う

介護施設は医療系と福祉系に分類され、下表のように医療費控除の対象とその金額も異なります。

入居施設 医療費控除の対象
医療系 介護老人保健施設(老健)
介護療養型医療施設
(療養型病床群等)
自己負担した介護サービス費・居住費・食費の全額が対象となる。
福祉系 介護老人福祉施設
(特別養護老人ホーム)
地域密着型介護老人福祉施設
自己負担した介護サービス費・居住費・食費の合計額の半分が対象となる。

介護福祉士による喀痰吸引

上記2の居宅サービスにおいて行われる介護福祉士等による喀痰吸引等の対価(居宅サービスの対価として支払った額の10分の1に相当する金額)は、医療費控除の対象となります。

医療費控除の申告方法

医療費控除を受けるには確定申告をする必要があります。必要な書類は以下の通りです。

□ 医療費関連の領収書
□ 確定申告書A、または確定申告書B
□ 医療費の明細書
□ 源泉徴収票(会社員のみ)

医療費控除の対象になる領収書を「医療行為を受けた人」ごとに分け、更に「病院・介護施設・薬局」別に分けて、クリップ等でまとめます。確定申告書A・B、医療費の明細書は国税庁のウェブサイトからダウンロードし、領収書の内容に合わせて記入し、管轄の税務署で申告しましょう。

申告すれば住民税も安くなる

医療費控除の申告をしても、かかった医療費がそのまま戻ってくるわけではなく、年間所得額から引かれて所得税が安くなります。しかし、申告の労力の割には還付される額が小さいという理由で申告しない人も多いようです。しかし、所得額が低く計算されるということは、当然来年度の住民税も減額されます。僅かな積み重ねではありますが、確定申告をすることをおすすめします。

まとめ

医療費控除の制度はいろんな場合分けが必要であり、かなり複雑な制度であると言えます。不安であるなら、ケアマネジャーなどに「このサービスは医療費控除の対象になりますか?」と聞いてみましょう。

確定申告の方法がわからない場合、気軽に税務署の署員に聞くと良いでしょう。税金の専門家でもある税理士に聞くと、丁寧にお客様として扱ってくれますが、相談料がかかる場合がほとんどです。還付のための確定申告の相談をして相談料を払っていては本末転倒です。介護にはたくさんのお金がかかります。医療費控除をして、少しでも介護費用の負担を少なくしましょう。

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