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ヘルスケア 2020-07-25

【先輩教えて! 独立への道筋vol.4】訪問アロマセラピスト 水谷 祐子さん「独立とは『自分の生き方を自分の手でつくる』こと」

セラピスト、柔道整復師、鍼灸師、ヨガインストラクターやスポーツトレーナーなど、健康への関心が高まるにつれて注目を集めている「ヘルスケア」のお仕事。将来は独立を考えている人が多いのもこの業界の特徴のひとつ。当企画では、そんな方々に向けて、一足先に独立・開業をして活躍中の先輩たちにその経験談やアドバイスを聞いてきました。

お話をお伺いしたのは…

訪問アロマセラピスト 水谷祐子さん

国際アロマセラピスト連盟(IFA)認定アロマセラピスト/ホームヘルパー2級/日本エステティック協会認定フェイシャルエステティシャン。主に高齢者と介護者向けの訪問アロマトリートメントサービスの確立を目指し、福島県南相馬市の地域おこし協力隊として活動。地域の高齢者と介護者が心穏やかに暮らせるよう、彼らと社会、もしくは医療介護専門職をつなぐ橋渡し役としてのアロマセラピーを模索中。

医療・介護分野でのアロマセラピストを目指して…

――まずは、アロマセラピストを目指された理由を教えてください。

「祖母の死がきっかけです。末期がんだったんですが、ただそばにいることしかできなかった悔しさが心に残ってて。同時に看病を続けてきた母とその兄弟の疲れ切った姿にも心が痛んで…。」

――そのご経験とアロマセラピーが結びついたのは?

「その時の思いから「患者と家族を支える職業はあるのだろうか?」と職探しを始めたんです。その中で、がんのチーム医療メンバーの一員として活躍するアロマセラピストの存在を知って。患者の心の痛みに寄り添い、その時に必要な精油を選び丁寧に施術するスタイルに感動して「私がやりたいのはこれだ!」と。それから医療・福祉分野に明るいセラピスト養成スクールを探しました。」

――高齢者と介護者をターゲットにしようと思ったきっかけは?

「国際アロマセラピスト連盟(IFA)の認定試験に合格後、サロンやホテルで修行しながら、経験を積むためにスクール主催の高齢者施設ボランティアにも参加していたんです。同じ頃、祖父が老人ホームに入居したこともあって、入居者もまた寂しさや心の痛みを抱えていることに気づいて。そこから、高齢者向けアロマに関心が向きました。

スクールで認知症や寝たきりの被介護者向けアロマトリートメントを学んで、ホームヘルパー講座では介護そのものについて学びました。その後は、スクールが運営する有料老人ホームでの有償アロマトリートメントサービスで契約セラピストとして経験を積んで。同時に特別養護老人ホームや障害者支援施設でのボランティア活動もしました。平日は派遣社員、週末はアロマ修行という二重生活をする中で、『職業として介護にかかわるアロマセラピスト』を目指すようになりました。」

実際に介護の現場で当事者の人たちに接することでその思いが大きく育っていったんですね。この後は、東京で活動をしていた水谷さんが南相馬市で開業するまでのお話をおききします。

過疎・高齢化地域に活路を見出し、一念発起!

――東京で活動していたのに、なぜ南相馬市に?

「医療介護分野でのアロマトリートメントを生業にすることを目指していたんですが、東京ではボランティア活動が盛んで。専門性のあるセラピストが評価されないことに不満も感じて、商機が見出せずにいたんです。加えて、ターゲットのひとつでもある介護者(介護する人)へのアプローチ方法が分からなくて。」

――そこで地方に目を向けた?

「その頃、東京での会社勤めにも飽きて地方移住を考えていたんです。ローカル求人を見ていた時に、南相馬市の移動販売プロジェクト担い手募集の記事を見つけて。その時に『訪問トリートメント』のイメージが一気に頭の中に湧き上がって胸が躍ったんです。」

――どうして移動販売から『訪問トリートメント』につながるんですか?

「南相馬市の一部は原発事故の旧避難指示区域で、今でも人口減少、急激な高齢化、医療・介護人材や生活サービス業の不足など厳しい状況に置かれています。そういう地域だからこそ、高齢者に携わる専門のセラピストが存在する意義を見出せたんです。『訪問サービス』という自由な働き方にも魅力を感じました。」

――移住して開業とは思い切りましたね。

「見つけた移動販売プロジェクトは、南相馬市の『起業型地域おこし協力隊』という制度を利用したものだったんです。この制度を使えば、3年間は活動支援金の支給があって、地元実業家のサポートも受けられるので、生活と独立開業の懸念点が払拭できたんです。なので、「これはやるしかない!」と意欲を駆り立てられて。

すぐに現地に行って生活環境を確認して、早々に『起業型地域おこし協力隊』に応募しました。無事採用されて移住、地域おこし協力隊に着任すると同時に個人事業主として開業届を提出しました。今は訪問サービスで3年後に完全独立するべく、準備と試行の日々を過ごしています。」

――完全独立に向けて、どのような試行をしているのですか?

「高齢者と介護者向けの訪問アロマトリートメントサービスの確立に向けて、今は行政主催の介護教室の講師をしたり、地元介護関係職種の勉強会へ参加したり、地域の交流サロンや福祉施設でハンドトリートメントのボランティアや、地域イベントへの出店、福祉ネイリストとのグループ活動などですね。移住者かつ医療介護職ではないということで、完全にヨソモノ、アウェイの状態からのスタートなので、地域の介護・医療職関係者との信頼関係の構築に力を入れています。」

――あと1年半で完全独立ということですが、順調ですか?

「介護分野でのマネタイズに苦戦しているところで…。コロナを機に、オリジナルブレンドアロマの製作・ネット販売と、居宅介護支援事業所内でミニサロンの運営も始めました。」

――ブランディングや集客はどのようにされているのですか?

「ターゲットが50代以上の年配者=アロマに馴染みの薄い世代なので、この年代にとっての親しみやすさを大切にしています。信頼性や安心感を求める年代・土地柄なので、私自身の発信は抑え気味にし、市役所などの広報や体験者のクチコミを頼りにしています。

あとは、訪問サービスの実例話をブログで紹介したり、ミニサロンに来る客層の大半が利用しているLINEで予約のハードルを下げたり。Instagramの個人アカウントではアロマセラピストとしてのトピックやイベントの告知をしています。広告の出稿はまだ事業規模がとても小さいのでやっていません。」

任期満了まであと1年半。地域の高齢者・介護者を癒す訪問アロマセラピー広く認知され、癒しの輪が南相馬の人々に水紋のように広がっていくことを期待しています!

水谷さんが考える「開業に大切な3つのこと」

アロマセラピーと介護・医療との関わりを模索し続けた水谷さんだからこそ、チャンスの波が目の前に現れた時に迷わず飛び乗れたのでしょう。そんな水谷さんが考える「開業」にあたって大切なことを聞きました。

1.開業後のミッションやポリシー、10年後の理想像を具体的に考えておく

「準備中もしくは開業後に困難に直面した時、判断に迷った時でも軸がブレないようにするために。」

2.やわらかい頭を持つ

「開業準備は計画通りに進むとは限りません。計画にこだわらず、状況に合わせてその時できる事は何かを考え行動できる柔軟な姿勢があった方がいいと思います。」

3.周りの人との人間関係を良好に保つ

「自分ひとりだけの力で開業するのは難しいこと。苦手と感じる事柄は周りの人の力やリソースを借りるとグッと楽になります。そのためには、日頃から身のまわりの人と信頼関係を築いておくことが大事です。」

――最後に、独立を目指す人たちへアドバイスをお願いします。

「独立は勇気が要ることかもしれないけれど、自分で未来をつくることができます。つくりたい世界があるのなら、チャレンジしてみてもいいと思います。独立を視野に入れているなら、実務(接客・店舗マネジメント)、知識・技術のブラッシュアップ、貯金、人脈づくり(同業、見込顧客、創業支援者)をしておくとよいと思います。」(訪問アロマセラピスト 水谷さん)

取材・文:細川光恵

Salon Data

訪問アロマセラピスト 水谷祐子

住所:福島県南相馬市原町区陣ヶ崎358-1にじいろサポートセンター内(ミニサロン)
訪問サービスブログ:https://note.com/y_mizutani
Instagram:@aromaworker_mizutani
ミニサロンLINE :@746crwmf
オリジナルブレンドアロマ通販:https://minne.com/@aromaworker

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