【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.13】ランニングコーチ&セラピスト 高岡尚司さんがこの道を目指したきっかけ
ヘルスケア業界のさまざまな職種にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経 験談を語っていただく『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』の企画。
今回は「ランニングコーチ」と「セラピスト」として幅広く活躍されている高岡尚司さんにインタビュー。高岡さんがこの道を目指したきっかけや、ランニングコーチとセラピストの両立に重きを置かれている理由をお聞きしました。
教えてくれたのは…
ランニングコーチ、セラピスト 高岡尚司さん
ランニングコーチとして一般ランナーへのコーチングを行いながら、熊本国府高校陸上部のコーチも担当。鍼灸マッサージセラピストとしても活躍し、治療院の運営も行う。2021年1月には、ランナー向けに特化したフィットネスジムを神奈川県平塚市にオープン予定。
自分が悔しい思いを経験したことで、ランナーの怪我を緩和できる鍼灸師を目指すように
―はじめに、高岡さんのお仕事について詳しく教えてください。
主に「ランニングコーチ」と「セラピスト」としてランナーの方々のサポートをしています。ランニングコーチとしては、一般のランナーの方々へのコーチングに加え、熊本国府高校陸上部のコーチとしても指導に当たらせてもらっています。セラピストとしては、ランナーへの鍼灸マッサージを行いながら、治療院の運営も行なっています。
―では、高岡さんが「ランニング」に携わるお仕事に就かれたきっかけを教えてください。
元々、中学3年の夏まではサッカーでゴールキーパーを務めていたのですが、「これからは自分で勝負を決められるスポーツがやりたい」と思ったことがきっかけで、サッカーを引退後に陸上をはじめました。そこから、高校・大学・社会人となった今でも、陸上競技、ランニングに関わり続けています。
「ランニング」に関する仕事に漠然と興味を持つようになったのは、高校に入ってからでした。中学で熊本県を代表する全国レベルのランナーになれたことで、高校は福岡県の陸上伝統校に入学しました。けれど、高校に入ってからは怪我をしてばかりで陸上が楽しくなくなってしまい、そのときから「なんで怪我が治らないのだろう?」ということをつねに考え、体の仕組みについて興味を持つようになりました。
その後、大学に入学してからも陸上を続けてはいましたが、怪我を全くせずに走ることは難しく、怪我をするたびに鍼灸院や治療院に通って痛みを改善してもらっていました。
そして自分の進路を大きく変えるきっかけとなったのが、大学最後の箱根駅伝でした。僕は出場できるチャンスがあったのですが、最後の調整の段階で肉離れを起こしてしまい、出場が叶わなくなったという悔しい思いを経験しました。この出来事が一つのターニングポイントとなり「人間の体をもっと知りたい」「ランナーの怪我を改善するために鍼灸師になりたい」と強く思うようになりました。既に卒業後は私立学校の教師になることが決まっていたのですが、先方に自分の思いをきちんとお伝えし、教師の道ではなく鍼灸師になるための学校に入学を決めました。
「裸足で走ること」が怪我を避けるカギになると気づきました
―そこからどのようにして現在に至ったのでしょうか?
鍼灸マッサージの専門学校に3年間通った後、母校である帝京大学のトレーナーとして駅伝部に入りました。そこで学生の治療を行なっていくなかで、治療で一時的な痛みを軽減することはできても、再び練習をすると痛みが戻ってきてしまう学生がたくさんいることに気づいたんです。そこから「ベッドの上で治療するだけでなく、根本的に走り方を見直さなければいけない」と思い、ランニングコーチとしての勉強をはじめました。
そのなかで「BORN TO RUN」という本を読み、人間の本来の走りはシューズに頼った走りではなく、裸足の走りだと気づかされました。それからすぐに僕自身が裸足で走りはじめ、本の内容の実証をはじめました。ときには怪我をすることもあったのですが、そのたびにどこを改善すべきなのかに気づくことができ、走り続けていくうちに「怪我をしない走り」を身につけることができました。現在は、そのときに生み出したメソッドをベースにしてランニングコーチとしても活動しています。
―では、どのようにして高校のランニングコーチになられたのでしょうか?
僕の場合は、大学卒業後に勤める予定だった高校に再びご縁をいただけ、現在陸上部のコーチとして携わらせてもらっていますが、やはり信頼関係・交友関係がベースとなっている部分は大きいです。あとは、まわりの人たちと比べたときに僕が目立った活動をしていたということが、興味を持っていただけるきっかけになったのかなと有り難く思っています。
―「セラピスト」と「ランニングコーチ」の2軸を大事にされている理由を教えてください。
僕のなかでは「ランニングのパフォーマンスを上げること」と「ランニングの怪我を改善すること」は同一線状にあるので、ランニングコーチとセラピストの仕事はどちらも欠かすことができないんです。お客様のお悩みが「パフォーマンスアップ」なのか「怪我を改善する」なのかによってアプローチの方法は変わってきますが、人間本来の走りを目指すというゴールは同じなんです。
―高岡さんの出社から退社までの一日のタイムスケジュールを教えてください。
スタジオでお客様の治療を中心に行う日のタイムスケジュールです。自分のオンラインサロンの投稿を挟みながら、通常の業務を行なっています。
「ランニングコーチ」と「セラピスト」の2軸で多くのランナーを支えている高岡さん。「裸足で走ることが人間本来の走りを意識づける」というお話もとても印象的でした! 次回は高岡さんが考えるお仕事の魅力と、これからランニングコーチ・セラピストを目指す人たちへのアドバイスをご紹介します。
▽#2はこちら▽
【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.13】ランニングコーチ&セラピスト 高岡尚司さんが語る「仕事の魅力」>>
取材・文/小沼奈央(レ・キャトル)
撮影/石原麻理絵 (fort)