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ヘルスケア 2022-04-17

多くの人にストレッチの大切さを広めたい!【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.55 理学療法士 尾形竜之介(オガトレ)さん #1】

ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。前・中・後編でお送りします。

今回はストレッチ系YouTuberの先駆けとも言える尾形竜之介さん、通称オガトレさんが登場。理学療法士、トレーナーとして活動後、YouTubeをスタート。現在ではチャンネル登録者数100万人を超えています。

前編となる今回は、尾形さんのこれまでの道のりと、現在の働き方についてお聞きします。

お話をうかがったのは…

理学療法士・ストレッチ系YouTuber 尾形竜之介さん


株式会社OGATORE代表。理学療法士、トレーナー。宮城県気仙沼市在住。市立病院で理学療法士として実務を経験後、体の不調をもっと身近に解決できる手段を提供したいとの思いで、2019年からYouTubeを開始。ストレッチ系YouTubeチャンネルでは登録数日本最大級(100万人超)。
YouTubeチャンネル:「オガトレ」

一対一の関係で深く関わりたいという気持ちから理学療法士へ

理学療法士として6年の活動後、
2019年よりYouTubeチャンネルをスタート

――まずは理学療法士を目指したきっかけを教えてください。

もともと教えることが好きで、子どもたちと関わりたいという気持ちがあり、高校2年生までは国語の先生を目指していました。でも高校3年生で進路について考える機会があり、教師はどうしても一対一の関係が作りにくく一対多数になってしまうなと思ったんです。

自分が何かをすることで、相手の人生が良い方向に行くような手助けがしたい。それには、一対多数よりも一対一の方が、相手に与えられる影響は大きいんじゃないかと思いました。

リハビリやトレーニングをする理学療法士の仕事なら、教えることもできるし、一対一での取り組みもできる。そこに魅力を感じて、理学療法士を目指し始めました。

――卒業後の活動は?

専門学校で3年間学び、卒業後は地元・宮城県気仙沼市の急性期病院に就職しました。そこでは理学療法士としてリハビリ室に勤務し、主に脳外科・整形外科の患者さんのリハビリと、スポーツリハビリを中心に担当していました。病院勤務でも、スポーツ選手や子どもたちと関わる機会がとても多かったのが特徴的だと思います。

――トレーナーとしても活動されていたそうですね。

理学療法士として働き始めて1年ほど経ったころから、スポーツリハビリにも取り組み始めました。でも初めて担当した女の子のリハビリがうまくいかず、高校生最後の大会に出られなくなってしまったんです。その反省もあり「何とかしたい」という気持ちが強くなって、病院で待っているだけじゃなく、自分から現場に行って怪我をする前の予防に取り組みたいと思ったのが、トレーナー活動を始めたきっかけでした。

――リハビリが上手くいかなかった…とは?

当時1年目の理学療法士の僕は怪我のことばかりを気にして、その子の背景や想いを考慮せずにリハビリをしてしまったんです。その子は、とある高校の女子バスケ部のキャプテンで、2年生の冬に怪我をしてしまい、リハビリがうまくいけば最後の高総体に間に合うという状況でした。

女子バスケ部の3年生は5人しかいないこと、3年生最後の大会をみんな一緒に勝ちたいという想いがあったこと…。それを考慮せず怪我のことを考えて自主トレをセーブしてリハビリを行った結果、焦りから僕が伝えていた以上のトレーニングをしてしまい、結果的にまた同じところを怪我してしまいました。これは完全に僕のせいです。

そこでの気づきがあって、スポーツをしている子どもたちの怪我が減るように何かしていきたいと思いました。それから5年間、理学療法士とトレーナーを併行して活動してきました。

予防の大切さを伝えるためストレッチ系YouTuberに転身

2019年1月よりYouTubeチャンネルをスタート。
当初はスポーツをする子ども向けの動画だったそう

――ストレッチ系YouTubeを始めた理由は?

理学療法士としてリハビリを行いながら、トレーナーとして地元のスポーツ少年団を始め、小・中・高の部活動、県選抜の子たちなど、いろんな年代、いろんな運動レベルの子どもたちと関わりました。そのなかで田舎の現状を知ったんです。部活動の顧問はそのスポーツの未経験者であることが多く、指導者もトレーナーもほとんどいない。怪我をしたときに行ける病院の数も圧倒的に足りず、往復3時間かけての通院や1時間以上の待ち時間も当たり前…。

どうしても田舎では理学療法士・トレーナーを必要としている人が多すぎると感じました。僕は一対一にこだわりたくて理学療法士になり活動してきましたが、一対一だけでは救いきれない。そこで田舎でも関係なくどこでも見られるYouTubeで怪我の予防やストレッチのことを発信したら、困っている子たちを救えるんじゃないかと考えました。

――お仕事は併行されたんですか?

やるからにはストレッチの大切さを広められるくらい大きな影響力を持つまでやりたいと思ったので、YouTubeを始めるタイミングで仕事は一旦すべて辞めました。突き抜けるためには、両立は絶対無理だと思ったんです。

でも当初は収益もありませんから、副業として訪問リハビリやフィットネスジムの責任者をしたり、土日には病院へトレーナーをしにボランティアで行ったりしていました。その活動も昨年まで続けていたので、YouTubeを始めてから2年はかなりハードワーカーでしたね。3時間睡眠という生活がずっと続きました。

その結果、昨年は精神的に体調を崩してしまって…。やっぱり自分で自分をご自愛できていない、健康じゃないのに、誰かを健康にすることは難しいと感じました。それから働き方を変えたんです。

地元気仙沼市で起業。地方でもチャンスがある姿を見せたい

「ニュアンスが変わってしまい伝わらなくなるから」と
編集作業も外注せずにご自身でされているそう

――現在の働き方を教えてください。

自身の健康の大切さに気づいてから、すごく寝るようになりました。8時間睡眠で無理のない、健康的な生活をしています。体調もすごくいいですし、肌もキレイになりました(笑)。

大体、週に3~4本の動画をアップしているので、その分撮影があります。

YouTubeも軌道にのり、ここ1・2年はトレーナーの活動をしたいという気持ちが大きくなっていたんですが、コロナ禍になったことでそれも叶わず…。今はYouTubeに集中しているところです。たまに気仙沼市の公民館や小学校から授業やレッスンの依頼があり、一緒にストレッチをして体のために大切なこと、継続するために必要なことを伝える活動もしています。

――ずっと気仙沼市で活動されている理由は?

まずは地元が好きということ。あとは地方在住でもチャレンジできるし、自分のやりたいことができるんだという事例になりたいんです。

知名度の高いYouTuberって、地方出身はいても在住ってほとんどいないんですよね。何か目立つことをするには都会の方が有利なのは重々承知しているんですが、そういう事例ばかりになると田舎の子どもたちがどんどん離れていってしまう。それってすごく悲しいことだし、いろんな産業が衰退していくのも目に見えていますよね。

だけど今は、田舎でも自分のやりたいことができる世の中になってきている。だから僕は気仙沼に今もいるぞというのをアピールしていきたいし、子どもたちに背中を見せたいと思っています。
…………………………………………………………………………………………………
一対一だけでは救いきれない多くの人たちにストレッチの大切さを広めるためYouTuberになった尾形さん。YouTuberとしてハードワーカーになり体調を崩したことで、現在は働き方を変えたそう。それでも週3~4本の動画配信に加え、オンライン塾も展開しています。

次回は尾形さんがヘルスケアに関わるお仕事に感じる魅力や、これから目指そうとしている人へのアドバイスをお聞きします。

取材・文/山本二季

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