入浴介助が遅くなってしまう理由とは? 安全に早く終わらせるコツを紹介
入浴介助は3大介護といわれ、介護職の中でも特に難しい仕事内容のひとつ。そのため、先輩職員や利用者から「入浴介助が遅い」と指摘を受け、悩んでしまう方も少なくありません。
安全やプライバシー、快適さにも気づかいながら、迅速かつ適切な対応についてきちんと学び、つねに取り組む姿勢が大切です。
そこで今回は、入浴介助が遅くなる理由にあわせて、改善方法や早く終わらせるコツを紹介します。
業務がスムーズに進めば利用者や先輩職員からの指摘を減らせるほか、頼もしい存在として活躍できます。本記事を通じて入浴介助が遅い理由を見つけ、改善につなげましょう。
入浴介助が遅くなってしまう理由とは?
ここでは、丁寧さ以外の理由で入浴介助が遅くなってしまう理由を解説します。なぜ入浴介助は遅くなってしまうのか、その理由について詳しく見ていきましょう。
1. 入浴介助が苦手・技術が未熟
入浴介助に対して苦手意識があったり技術が不足していたりすると、必然的に遅くなります。
苦手意識や技術の未熟さがあると、ひとつひとつの作業に遅れが生じ、スムーズな介助ができなくなってしまうのです。
また、利用者の体に触れることで怪我をする可能性をおそれたり、介助方法が間違っていないかを必要以上に心配したりしながら取り組むと、介助内容ばかりが気になり、時間がかかりやすくなります。
2. 入浴させる人数が多い
入浴させる人数が多いと、総合的に時間がかかってしまいます。たとえば、1人あたり15分の入浴時間で10人の介助をする必要がある場合、単純計算でも15分×10人=2時間半かかります。
入浴介助では利用者のバイタルチェックなど、入浴以外の業務も担うケースも多いことから、その分だけ遅くなってしまうのです。
3. 人手不足
人手不足によって遅くなっている可能性もあります。職員数の少ない事業所に多く見られるケースですが、利用者数に対して入浴介助を担当する職員が少なすぎるなど、人員配置の問題があることが考えられます。
たとえば、2名の職員で5人の利用者の入浴介助をするのと、1名で5人の利用者を入浴させるのでは、後者の方が明らかに多くの時間がかかることがわかるでしょう。
この場合は職員一人で解決できない問題であるため、事業所全体の改善が求められます。
入浴介助の手順を見直そう!
入浴介助が遅れてしまう理由は、丁寧かつ適切な対応を心がけるほかに、人手不足や苦手意識・技術面の未熟さが挙げられます。
ここでは、これまでの介助方法を見直すために入浴介助の基本について解説します。
入浴介助の目的とは?
入浴介助は、利用者の清潔を保つこと、感染症を予防すること、そしてリラックスさせることを目的として行われています。
私たちが入浴する目的とまったく同じで、介護が必要な方にとっても、入浴は生きるうえで欠かせない習慣の一つです。
しかし、私たちと違うのは、入浴するのが体の不自由な人であること。そのため入浴介助は、利用者ひとりひとりの体と心にあわせた工夫が求められます。
入浴介助を行う前の注意点
入浴介助は、その名のとおり介護が必要な方の入浴をサポートする仕事。そのため、他人の体を自身が責任を持ってきれいにする必要があることから、以下3つの注意点を押さえたうえで取り組むことが大切です。
・利用者の体調が悪いときは無理をしない
・安全を優先した入浴を意識する
・できることは利用者自身にやってもらう
入浴介助をおさらいしよう!
ここからは入浴介助のおさらいとして、手順と気をつけるべきポイントを解説します。
これまでの入浴介助を振り返り、改善できる部分はないか探してみましょう。
1. 脱衣所や浴室を準備する
まずは脱衣所や浴室の準備をしましょう。脱衣所はヒートショックを予防するため、暖房器具などを使用し、浴槽には38〜40度程度の湯を張りましょう。
次に浴室内にある備品が揃っているかを確認します。なお、入浴に不足している物があるからといって利用者を残して外に出るのは厳禁です。あとあと取りに行くことのないよう、利用者を移動させる前に必ずチェックしましょう。
2. 脱衣所へ移動介助
ヒートショックに配慮した脱衣所や浴室・湯船、そして必要な物がすべて揃ったら、脱衣所へ利用者を移動させます。
このとき、利用者には「◯◯さん、お風呂の時間なので一緒に行きましょう」といった声かけを行いますが、入浴を好まない利用者もいらっしゃるでしょう。
入浴が苦手な利用者には「少し温まりに行きましょう」「体をさっぱりさせませんか?」のように、入浴を連想する言葉を使わずに誘導するのがポイントです。
このとき、体調やトイレのほか、皮膚科を受診している利用者なら入浴後に塗る必要のある薬の有無も確認しましょう。
3. 浴室へ移動介助|洗髪などの準備
次に、利用者を浴室へ移動させましょう。洗髪などの準備をしたら、職員側でシャワーの湯温をチェックし、利用者に声かけしながら足元からお湯をかけましょう。
必要に応じて「お湯は熱くありませんか?」「さっぱりして気持ちがいいですね」など、利用者に配慮した声かけをするのがポイントです。
4. 洗髪と洗体
次に洗髪と洗体です。利用者に「シャンプーしますね」「体を洗っていきますね」など、ひとつひとつ声かけをしながら進めます。
このとき、床ずれや薬の副作用によって、頭皮・全身の皮膚に異常がないかをチェックしながらやさしく洗うのがポイントです。
5. 浴槽へ移動介助
洗髪・洗体が終わったら、次は浴槽へと移動し、利用者を入浴させましょう。多くの事業所には浴槽周りに手すりが設置されているので、手すりを利用してもらったり職員が体を支えたりしながら移動させてください。
入浴は利用者がのぼせないよう、つかりすぎないうちに上がってもらうのがポイントです。利用者の入浴時間は事業所によって異なるので、入浴介助を担当する前に職員に確認しておくとよいでしょう。
6. 入浴後のケア
最後に入浴後のケアとして、湯冷めしないうちに手早く着替えのサポートをしましょう。
利用者によっては皮膚科で処方された薬を入浴後に塗る必要があるので、体を拭いたタイミングで塗ってください。
着替えが終わったら、利用者へ水分補給を促し、体調変化によるトラブルを防ぎましょう。
安全に早く終わらせる4つのコツを紹介!
入浴介助は、利用者の体調を配慮しながら適切に対応することが求められます。そういった意味では、無理に早く終わらせる必要はないと言えるでしょう。
しかし、苦手意識があったり技術面が未熟であったりすれば、普通以上に多くの時間を要し、利用者にも職員にも負担がかかります。
ここでは、安全に早く終わらせるための入浴介助のコツを紹介します。これまでの入浴介助を振り返りながら、追加できるポイントを自分なりに見つけていきましょう。
1. 導線と効率を見直す
入浴介助を安全に早く終わらせるには、導線と効率の見直しを図りましょう。たとえば、これまでの入浴介助を振り返り、もっと効率よくできる部分はないかを見直してみるのです。
現状の方法が非効率な動きになっていないかを見直すことで、あらかじめ準備しておくべき物やいつも迷ってしまう工程などが見つかり、対策を立てることができます。
入浴にはタオルやシャンプー・リンス・ボディソープ・衣料などが必要になるのは明らか。そのうえで、利用者ひとりひとりに必要な物があればリストアップしておき、不足がないよう準備できる工夫をしておくと、効率よく入浴介助できるようになるでしょう。
2. ほかの職員との連携を取りやすくする
入浴介助は、利用者の体調や任される人数によって、どうしても時間がかかることがあるのも事実です。そういった意味でも、入浴時はできるだけ2名以上の職員で動き、利用者や職員全体の負担を軽減する工夫をしましょう。
事業所によっては、少ない人数で入浴介助をおこなうことも珍しくありません。車椅子を使う利用者であれば、歩行が困難だったり体を自由に動かせなかったりする方もいます。
入浴介助では利用者を第一に考えて動ける環境作りを意識しましょう。
3. 業務を分担する
入浴介助はお部屋へのお迎えから脱衣、洗体・洗髪、入浴後の介助までさまざまな工程がともないます。
そのため、不安や苦手意識をお持ちの方は、入浴担当者以外とも業務を分担することで、速やかに終わらせることができるでしょう。
入浴前はバイタルチェックや体調の確認などがあり、入浴後にはしっかりとした水分補給を促さなければなりません。
作業に慣れ、苦手意識を克服するためにも、入浴担当者以外でもできる業務を割り振るのが望ましいでしょう。
4. 時間配分を決める
入浴介助に時間が決められていないなら、自身で時間配分を決めてしまうのも手段の一つです。
一人あたり何分で入浴させるかを決め、優先順位をつけながら不要な動作を排除して入浴介助を行うことで、時間内に適切かつ安全に入浴介助できます。
時間配分を決めるなら、これまでの入浴介助を振り返り、どれくらいの時間を要したかをイメージしておくことで、無理なく進められるでしょう。ただし、最優先は利用者の安全確保であることはしっかり意識することが大切です。
入浴介助は安全第一! できることから見直そう
入浴介助が遅くなる理由には、苦手意識や技術面の未熟さのほか、入浴介助を担当する職員の不足が挙げられます。
しかし、入浴介助で大切なことは、利用者の安全を確保し、怪我や事故を防ぎながら取り組むこと。無理に早く終わらせようとすれば、さまざまなトラブルにつながる危険性があります。
まずはこれまでの自身のやり方を振り返り、効率化できる部分はないか、改善できるポイントはないかをチェックしてみてください。
自身で気付いたことを意識しながら紹介した方法を試せば、きっと安全かつ早い入浴介助ができるようになるでしょう。