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ヘルスケア 2021-04-28

【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.27】ぜんき整体院 石井謙蔵さん流 整体師の手技・技術

ヘルスケア業界のさまざまな職種にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』の企画。

これまで、整体師として施術・指導を行っている「ぜんき整体院」の石井謙蔵さんに、ヘルスケア業界に入ったきっかけや整体師のお仕事の魅力について、お話を聞いてきました。今回は、その手技・技術にフォーカス。石井さんが作り上げた「経絡内臓整体」について教えていただきます。

お話を伺ったのは…

ぜんき整体院/ぜんき整体スクール
代表 石井謙蔵さん

大手ITメーカーに15年勤めた後、整体術および東洋医学古典理論、経絡治療、指圧を学び、市川派剛柔流空手道を礎に、2005年「ぜんき整体院」を開院。2006年には整体スクールを開校。知的生産型の現代社会に通用する、内臓整体整体術を広めている。

自然と同調しバランスの取れた「生きた身体」に戻したい

―石井さんが掲げている「経絡内臓整体」について教えてください。

「経絡内臓整体」とは、東洋医学の理論「経絡治療」をベースに、武術と気功で培った体術的な身体の操作と、整体の技を組み合わせて作り上げた施術法です。

内臓整体というと、いわゆる「腸もみ」のようなものをイメージするかもしれませんが、それとは全く違うものです。痛みや不調がある部位に直接アプローチするのではなく、メンタルを含む身体全体を相対的に見て、経絡を中心にバランスを整えていくことで不調を取り除いていきます。

―「メンタルを含む身体全体のバランスを整える」と言うと?

東洋医学では、人間の体を全体の「機能」として見ていきます。それぞれのパーツは、身体の一部として正常に機能しないと意味がない。じゃあ、どうなったら「正常に機能している」と言えるかというと、自然と同調しているかどうかなんです。自然は、バランスを保ちながら、絶えず変化し、循環していくものです。本来、人間の体もそういうものなんですね。

しかし現代人は、ストレスも多く、脳をたくさん使っています。いわゆる自律神経が、交感神経優位になっている状態。交感神経は結果として上部に熱を溜め込む働きがあるので、脳に熱が溜まってしまいます。すると、体内の循環がうまくされず、バランスが崩れて、様々な不調が出てきます。西洋医学的に言うと、自律神経の失調です。

内臓を整体していくことで、副交感神経を活性化し、交感神経の働き過ぎを抑えていく。すると、自律神経のバランスが整い、感じていた不調が緩和されていきます。

―内臓を整体することで、自律神経のバランスが整うんですね。

内臓、とくに消化器官は副交感神経支配です。自律神経は拮抗神経なので、交感神経優位になると、副交感神経支配の器官は動きが鈍くなります。脳に熱が溜まって興奮状態になると、内臓の動きが悪くなる。現代人は、こういう状態の方がとても多いです。

逆に、内臓を正常に動かしてあげると、副交感神経が活性化されます。すると、拮抗神経である交感神経は鎮まっていく。脳に溜まっていた熱が循環されることで、正しいバランスを通り戻すことができます。

押すのではなく「乗る」。現代人に合わせた力の加え方が大切

―施術の主な流れを教えてください。

まずはカウンセリングを行い、鏡でご自身の歪みをチェックしていただきます。合わせて、動作について簡単な検査を行い、施術に入ります。

施術では、まず脈を診て、五臓の虚実を判定します。そして出した見立てに合わせて、内臓の整体を行い、次に経絡に沿って身体全体に触れていきます。「本治法」と言うんですが、痛いところを施術するのではなく、どこに不調があるかを診ながら、身体全体を調整していきます。

身体の機能は相対なので、施術をすればどんどん変化していきます。途中で脈を診ながら変化を確認し、それに合わせて術を施していきます。仰向け、うつ伏せで行い、最後に検査をして終了です。

―施術のなかで大切にしていることは何ですか?

もっとも大切にしているのは、カウンセリングです。カウンセリングが、施術のうち半分以上のウエイトを占めていると言えます。

東洋医学の見立てには、望診(ぼうしん)、聞診(ぶんしん)、問診(もんしん)、切診(せっしん)の4つがあります。目や耳で感じ取れること、どんな訴えをしてくれるか、手で触れて直に感じた情報など、すべての感覚を総動員して、お客様自身を立体的に見ていく。

だから、ドアを開けて入ってきたところから、カウンセリングは始まっていますし、施術に入って身体に触れている間も、ずっと見立て続けています。

―カウンセリングのポイントは?

お客様の話だけで判断しないこと、その裏を読み解くことです。問診の際に出てくる言葉って、必ず取捨選択したものです。感じている症状を説明するために選んだ言葉の裏には、お客様自身で「関係ないかな」と判断したものがあります。実際は、そこが重要だったりするんですね。

なので、望診、聞診で見立てていたものについて訴えがなければ、「こんなことないですか?」と聞いて引き出していきます。お客様本人も気が付いていないこともありますから。

―身体に触れる際の手技のポイントは?

触れる時は、絶対に押さないこと。現代人は、ちょっと押すだけで、すごく身体が疲れちゃうんです。肉体労働とかしていて、身体がタフな人は大丈夫なんですが。

強い圧をかけると、交感神経が活性化されます。現代人は交感神経優位になりがちなので、そういう状態に強い圧を加えると、余計に助長されてしまうんです。

圧をかける際は、身体に力を入れずに、体重の移動によって圧をかけていきます。僕は「乗圧(じょうあつ)」と呼んでいます。指先だけを使わず、手のひらや腕でポイントを押さえながら、体重を乗せていくイメージです。

そのためには、正しい足腰の在り方がなければいけません。そこに空手などの武術の経験が活きています。

―必ず両手を使っているのは何故ですか?

陰と陽のように、二極があるからエネルギーが生まれます。両手でバランスを取りながら、身体を読んで技をかけています。

施術のなかで、どんどん身体は変わっていきます。歪みもどんどん動いていく。それを手で感じながら、合わせて技を施していくことで、正しいかたちに戻していくんです。

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武術の経験と、整体の技、東洋医学の知識が組み合わさって生み出された「経絡内臓整体」は、知的生産性が高くなり自律神経が乱れがちな現代人を救うために誕生しました。「みなさん、頑張り屋さんなんですよね」と笑う石井さんから、忙しい現代人のことを助けたいという思いやりが感じられました。そんな優しさと東洋医学の理論に裏付けされた「経絡内臓整体」、ぜひ参考にしてみてください。

▽#1はこちら▽
【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.27】ぜんき整体院 石井謙蔵さんが整体師になったきっかけとは>>

取材・文/山本二季
撮影/高嶋佳代

Infomation

ぜんき整体院

住所:東京都台東区台東1-34-6 埼畜ビル1F
TEL:03-6315-3034

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