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ヘルスケア 2023-01-22

「ひとりでも多くの人に漢方を届けたい」気持ちを原動力に、漢方と薬膳の普及に努める【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.85 薬膳コンシェルジュ 杏仁美友さん】#1

ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。

今回は、一般社団法人 薬膳コンシェルジュ協会の代表兼講師を務める杏仁(きょうにん)美友さんにインタビュー。漢方・薬膳と出会う以前はまったく違う業種のIT系事務勤務をしていたとのこと。漢方・薬膳に惹かれたきっかけ、また、漢方・薬膳を広めようと思った経緯はなんだったのでしょうか?

前編では漢方との出会いからIT系事務から転職した経緯、漢方を広めるために薬膳に着目した経緯や協会を設立するに至るまでのお話をお聞きします。

教えてくれたのは…

薬膳コンシェルジュ 杏仁(きょうにん)美友さん

自身の症状が漢方によって回復したことを受け、漢方を学ぶことを決意。学校に通い、国際中医師の資格を取得して卒業。その後、薬種商(現在でいう登録販売者)の資格を取得しようとしたタイミングで薬膳を広める活動に注力し、協会を立ち上げる。現在は、漢方と薬膳を広めるために講義や執筆を行う。

杏仁美友さんのInstagram:@yakuzenpr

長年の悩みだった生理痛が短期間で完治し、漢方の魅力に気づく

――まずは、漢方に関心を持ったきっかけをお聞かせください。

学生の頃から生理痛がひどかったことがきっかけです。長年のあいだ市販の鎮痛剤を服用をし続けて騙し騙し過ごしてきましたが、子どもを出産したあとに症状が悪化してしまったんです。薬もだんだん耐性がついてきて効き目がなくなってしまったのでしょうね。

このまま市販の鎮痛剤を服用し続けるままでは回復は見込めず、根本的な治療が必要だと感じ始めていました。そんなときに見つけたのが漢方だったんです

ただ、その頃の漢方は祖父祖母などの年配の方が服用しているイメージで、若い女性が漢方に手を出すには気後れするようなものでした。ですが、長年悩まされていた生理痛が少しでも楽になるならば…と思い、なるべく入店しやすそうな雰囲気の漢方薬局に向かいました。

――実際に足を運ばれてみて、いかがでしたか?

「漢方薬局に足を踏み入れるまで、何件かはしごをしました」杏仁さんも最初は躊躇した経験があるとのこと

症状を話してみると、「いつも何を食べていますか?」「好きな食べ物は何ですか?」などヒアリングを丁寧に行ってくれました。ずっと悩んでいた症状に対して丁寧にヒアリングしてくれたことが、私はすごく嬉しくて

そもそも漢方は、体質チェックが肝心で体に流れている「気・血・水」や五臓のバランスを見て、不足している部分は補い、滞っている部分は巡らすように処方するものなんです。もちろん、その漢方薬剤師の方も東洋医学の知識を交えながら、体の不調に合う漢方を処方してくださいました。

漢方にまつわるさまざまな理論を聞いたことで、漢方や薬膳について興味を持ち初めました。

しかも処方いただいた漢方を服用したら、なんと10年近く悩んでいた生理痛の症状が1年くらいで完治。それに感動したと同時に、同じように悩んでいる人がいるはずだと感じ、「私と同じように生理痛で悩む女性に広めたい!」という想いが生まれ、漢方を処方する薬種商
(※2009年に薬事法が改正されたことに伴って廃止。現在は「登録販売者」という資格に移行)になることを目指し始めました。

「漢方を広めたい」という強い気持ちから、薬膳の可能性に着目

――まずはどんなことから始めたのでしょう?

漢方について学ぶために国立北京中医薬大学日本校に通い始めました。1年、3年と二つのコースがあったのですが、当時私は2歳の子どもを育てつつ、勤務していたIT系事務の仕事と両立しなければならなかったので1年を選択。というのも、学びながら途中で年数を変更することができるタイプの学校だったので、様子を見ながら変更の可能性も視野に入れた選択でした。

学んでいくうちにもっと深く漢方を学びたいと思う気持ちが強まり、3年に変更しようとしたのですが…子どもの保育園などのスケジュールが合わず、断念。翌年に入学することを目指しました。

入学までの空いた期間は、最初に通っていた学校で漢方に結びついている薬膳の大切さを知ったので薬膳についても学ぼうと思い、精力的にスクールやセミナーを受講。その後は、目標通り遼寧中医薬大学付属日本中医薬学院に入学し、漢方の専門家と言われている国際中医師の資格を取得して卒業しました。

――子育てに別の仕事に…両立するには大変そうと感じます。それからは、薬種商の資格取得を目指して?

webなどのサイトでライターとして活躍した経歴から、「正しい理論をわかりやすく伝えることの大切さを知りました」。と語ってくださった杏仁さん

実はその頃、気持ちに変化があって…。

――どんな変化だったのでしょうか?

以前より学校に通いながら、漢方や薬膳などの学んだ知識を忘れないようにと、メルマガの配信を始めてたタイミングでした。一部の読者の方々へ薬膳の手軽さも伝わり、徐々に反響をいただくことも増え始めていた頃、メルマガ配信を見てくださった出版社の編集者から「薬膳の本を出版しませんか?」とお声がけがあったんです。それも難しい面をなるべく取り除き、日常生活で取り入れやすい野菜を中心とした親しみのある内容を想定していらっしゃっているとのこと。

私はそれを聞いて、メルマガ配信で薬膳に興味を持ってくれる人が多かったことを思い出し、薬膳に興味を持ってもらえれば漢方にも興味を持ってくれるのでは?と思いつきました。

そもそも漢方を販売しながら薬膳の知識を広めることとの両立って難しいと感じていたこともあり…薬膳を広め、漢方の認知度を上げることに専念しようと決めました。

漢方と薬膳を普及させるために、協会を設立

――薬膳を広めるためにどんな活動を始めたのですか?

まずは、薬膳を身近に感じてもらえるようにと思い、料理教室を始めました。飲食店を間借りをさせていただき、ハーブに詳しい友人と私とのふたりで1年間、毎月1回を目安に行いました。

――反応はいかがでしたか?

「薬膳って簡単に摂れるんですね」とか「毎回美味しいです」などご好評はいただいていたのですが、肝心な薬膳の理論があまり伝わっていなかったようで…。「この野菜はこういった効能がある」や「こういうふうにいい働きをしてくれる」など具体的な効能を感じられるのかを浸透させられていなかったようでした。

どうしようかと考えていた頃にちょうど、原因不明の発熱の症状があり、検査を含めて入院することになってしまい…。それによって初めて仕事に穴をあける事態にまでになってしまったんです。その出来事がきっかけとなって、今後も活動を続けていくには他にスタッフが必要と考えるようになりました。

加えて、料理教室を開催した際の反省点から漢方や薬膳の知識をひとりで広めることに限界があると感じ、入院中に薬膳コンシェルジュ協会を立ち上げることを決めました。同時に、事務仕事との両立が難しくなったので一本に絞り、漢方と薬膳を広めるために注力し始めました

決めてからすぐ企画書を作成し、かねてよりメルマガなどで知り合った同業の方や学校の先輩、ライター業務の取材先で知り合ったに何人か連絡してメンバーをそろえることにも成功。薬膳を中心とした活動を指針に、新たな一歩を踏み出しました。


漢方・薬膳の効果を肌で実感し、広めるために活動を始めます。その第一歩として協会を立ち上げた杏仁さん。後編では、その詳しい活動内容と今後の展望などを伺います。

取材・文/東菜々(レ・キャトル)
撮影/喜多二三雄

 

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