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ヘルスケア 2022-11-28

無月経、流産を経て。改めて気づいた「子宮=心」の大切さ【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.80 /子宮てあてセラピスト・国井由紀さん】#1

「ヘルスケア業界」のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロに、お仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。

今回お話を伺ったのは、子宮てあてセラピスト・国井由紀さん

子宮ケア専門サロン「plaisir」でオーナー兼セラピストとして活躍する国井さん。オーガニックハーブを使い、よもぎ蒸しやチネイザン(氣内臓マッサージ)、ハーブボールで子宮にアプローチした「子宮てあて」を行っています。生理の悩み、妊娠への不安など、ついつい一人で抱え込んでしまいそうな女性の悩みと真摯に向き合い、体だけでなく心まで癒してくれるサロンとして予約殺到中。今までに約3700人以上の施術を行なってきました。

前編では、国井さんがこの道に進んだきっかけや、オリジナルメゾット「子宮てあて」が生まれた経緯を伺います。

6ヶ月もの無月経に気づかなかった自分を猛省。
「よもぎ蒸し」に出会い、人生の転機に!

――この道に進んだきっかけは何だったんですか?

もともとOLとして働いていて、28歳の時にエステティシャンになりました。そこは六本木のエステサロンだったのですが、当時は夜も働いていてダブルワークをしていたので、今思うとかなり無理をしていましたね。

そんな時、友人と飲みに行ったんです。そこで、生理の話になりました。その時ふと、「あれ、私しばらく生理がきてない」って気がついたんです。毎月あるはずのものですが、手帳を見返してみると6ヶ月以上きていないことがわかりました。酔いもすっかり冷めてしまい、「これは、さすがにマズイのでは」と焦りました。

とはいえ当時の私には、「病院に行く」っていう選択肢がありませんでした。そもそも病院嫌いというのもあったんですが、6ヶ月も生理がきていないことに気づかなかったことを怒られる気がしたんです。「自分でなんとかしよう!」と思い、手当たり次第に調べました。ただ……これは本当にお勧めしません。みなさんは少しでも違和感を感じたら、必ず病院に行ってくださいね。先生は思ったより優しいですよ!

話は戻りますが、そこで「よもぎ蒸し」と出会いました。内臓を温め、リラックス効果でホルモンバランスも整えるよもぎ蒸しは、私にあっていたのか、約3ヶ月で生理もくるようになったんです。もともとお客さんとして通っていたのですが、せっかくならちゃんと勉強しようと、そのサロンで開業講座も受けました。

――そこから、すぐ独立なさったんですか?

いえ、当時はまだ独立することは考えてなくて。ただ、この件をきっかけに、「もっと自分の体を大切にしよう」と考えるようになりましたね。それまで働いていたサロンを辞め、オーガニックな施術をコンセプトにしているサロンに転職しました。オーガニックのもの、自然のものに興味を持ち始めたのも、この頃です。

その後結婚し、長男を妊娠。産休を経てサロンに戻ったのですが、今度は腱鞘炎になってしまったんです。原因は、施術で手首に負荷がかったのと、「母乳」でした。母乳に栄養を持っていかれて、体の末端まで栄養が届いていなかったんですね。しばらくは外来で注射を打ってもらいながら働きましたが、痛みは治らず、結局サロンを辞めざるを得なくなりました。

でも私、セラピストの仕事が大好きなんです! なんとか続けられないかと悩んでいた時に思い出したのが「よもぎ蒸し」。「私、開業講座受けたじゃん!」って。まだ腕に痛みがあったのでボディケアトリートメントはできませんでしたが、かろうじてできた「ヘッドスパ」と「よもぎ蒸し」でサロンを開業しました。

生理の悩み、妊活への不安……
今求められているのは「子宮へのアプローチ」

――ついに独立ですね! 当時からここ(高円寺)に?

いえ、当時は自宅兼サロンでした。施術するにはそれなりのスペースがいるので、自宅で一番広いリビングを使っていましたね。予約が入ったら2時間かけてサロンに整え、お客様が帰られたら、また2時間かけてリビングに戻す(笑)。大変ではありましたが、なんだかんだ1年半ぐらいそのスタイルで営業していました。そうこうしていたら、長男も卒乳。悩みの種だった腱鞘炎も治りました。

――当時のサロンのコンセプトは?

「ママの疲労回復」で、よもぎ蒸しで体をメンテナンスして、ヘッドスパでリラックスしてもらいたいという願いを込めていました。

その中で、リピーターになる人、ならない人を見比べてみたら、生理の悩みがあったり、妊活に不安を感じていたり、「子宮」をケアしたい方がリピーターになってくれているって気づいたんです。そもそも私も生理がこなくて悩んでいた時に「よもぎ蒸し」と出会ったので、もっと子宮にアプローチした施術をしたいと思うようになりました。

そこからご縁があり、「ハーブボール」のトリートメントを取得しました。これは、タイでは子宮のケアとして、病院でも施術されている手技なんです。これは全身を芯から緩ませない女性におすすめです。

そして「チネイザン(氣内臓マッサージ)」。実は私、2人の先生からチネイザンを学んだんですが、チネイザンっていろんな流派があるんですよ。

最初に学んだのは、内臓をしっかり触って直接刺激を与え、そこに溜まっている陰と陽の感情にアプローチする施術。マッサージ要素が強いかもしれません。もう一つは、内臓を包み込むように優しいタッチで触り、感情を読み解く施術です。これは、どちらかというとセラピー要素が強いです。どちらにもいいところがあるので、私は今、この2つを織り交ぜて施術しています。

また、「子宮調整」も学びました。これはタイの助産師さんの中で、150年以上前から口頭で受け継がれているマッサージなのですが、動脈と静脈を抑えながら、子宮に血液がしっかり届くようにする施術です。妊娠する準備が整った子宮に導くアプローチなので、基本的には妊活中の方に行うものですね。

子宮と心はつながっている!
流産を経て改めて学んだ、「自分を大切にすること」

――それらの学びを経て、「子宮てあて」のメソッドが確立していったわけですね。

そうなんです。ここに行き着くまでには本当に色々ありました。実は私、長男を出産した後、流産を経験しているんです。

ちょっと話が遡りますが、1年半のリビングサロンを経て、ここ(高円寺)にサロンをオープンさせました。その頃私は経営塾に通っていたのですが、経営塾って、がっつり数字を意識するのか、メンタル的な部分を学ぶのか、いろいろな指導方針があるんです。私は数字を意識した経営塾に通っていたので、当時、月7桁(100万)の利益を出すまでの過程をつくるっていう目標で、ひたすら営業していました。

一方でその頃、私は2人目を妊娠していたんです。体を一番気遣わないといけない時期なのに、とにかく仕事、仕事、仕事……。お客さまに喜んでいただくために……と、がむしゃらに働いていたら、流産してしまったんです。

毎日泣いて過ごしましたね。でも、その中で気づいたんです。「私は『この仕事が好き』『お客さまを元気にしてあげたい』っていう思いでやってきたのに、自分のことは後回しにしていた」「それが流産につながったんだ」って。

それからは、自分の体や心を大切にするようにしました。それまでは、長男が保育園に行っている間の約8時間で3人のお客さまを施術していたのですが、1日1〜2人限定に。自分の体もそうですが、何より一人一人のお客さまと、今まで以上に丁寧に向き合うようにしたんです。

――辛い思いをされたんですね。

その経験が今の私を支えてくれています。その後、次男を妊娠できて、元気に生まれてきてくれましたし、本当によかったです。

私は「子宮=心」だと思っています。みなさんも少なからず経験があると思いますが、忙しかったりストレスが溜まっていたりすると、生理が遅れたり、PMSがひどくなったりすることがありますよね。これは子宮と心がつながっているしるしです。

というのも、子宮は命が誕生する場所なので、自分の命(=心)を大切にしているか、自分より他を大切にしているか、それにまつわる感情が集まりやすいといわれています。そのため、自分の命(=心)が大切にできていないと、子宮からサインが出るんです。それは生理不順だったり、生理痛だったり、いろいろですが、これは「もっと自分らしく生きていいよ」「あなたらしく、自分の命(=心)を大切にして」という子宮からのアドバイス

そういった子宮のサインを読み取って、労わり、癒す。そして、その先にある「自分を大切にする」「自分として生まれてきてよかったと感じる」という当たり前のことに気づいていただく。これが今のサロンのコンセプトであり、私のモットーですね。

子宮について、たくさん学ばれている国井さん。「子育てと並行しての仕事と勉強は大変じゃなかったですか?」と伺ったところ、「私、運がいいんです! 『学びたい』と思った時に、ちゃんと学ぶ場に出会える。あとはもう『やる?orやらない?』となれば、やるしかない(笑)! 夫は大変かもしれませんが、『どうにかなる!』って飛び込んじゃいます」とのこと。そのパワフルさとエネルキッシュさこそ、成功の秘訣かもしれません。

後編では、現在の活動内容や働き方、今後の目標、未来のセラピストに向けたアドバイスを伺います。

取材・文/児玉知子
撮影/喜多二三雄

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information

子宮ケア専門サロン Plaisir
住所:東京都杉並区高円寺北2-34-4 Mクリーンビル 3F

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