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ヘルスケア 2023-10-10

どんなにAIが発達しても、人の体は人の手でケアする必要がある【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.117/柔道整復師・加藤智雲さん】#2

「ヘルスケア業界」のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロに、お仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。

今回お話を伺ったのは、柔道整復師・加藤智雲さん

恵比寿で首専門の整体院「極(KIWAMI)」を開業している加藤さん。「らせん操法」という一子相伝の奥義を使って首の歪みを調整し、首から全身を整える施術を行なっています。

前編では、柔道整復師になったきっかけや、首から全身を整える「らせん操法」について詳しく伺いました。
後編では、加藤さんの代表的な1日の流れや、この仕事のやりがい・魅力、未来の柔道整復師に向けたアドバイスを伺います。

余計なことはせず、少しでも良いから
毎日「何もしない時間」を作る

――1日の流れはどんな感じですか?

営業は11〜20時まで。日曜が定休日で、1人あたり30分〜1時間の施術を行います。多い時で1日7人ぐらいの予約があります。

――ルーティンなどはありますか?

10時ぐらいに出社して、20分程度瞑想。その後掃除をして、お客さまの施術を終えたら片付けをして退社します。

僕は基本的に、サロンから1歩外に出たら仕事のことを考えないようにしているんです。よく整体師の人は「道ゆく人の体を見るだけでも、体の歪みが気になる」と言いますが、僕は全く気にしませんし、気になりません。

またプライベートでは余計なことをせず、できるだけ毎日少しでもいいから「何もしない時間」を作るようにしています。

――ストレス発散などはどうしていますか?

海や川、緑など、自然に触れることですね。公園を散歩したり神社を参拝したり、自然の中に身を置いて自分自身を整える時間を大切にしています

より深刻な悩みを持つ人にもアプローチできるよう
医療的な施設ともタッグを組んでいきたい

――加藤さんにとって、柔道整復師のやりがいや魅力はなんでしょう?

その場で変化が起こることですね。目の前に辛い症状で悩んでいる人がいて、その人を楽にしてあげられる。痛みが和らいで体が楽になるということは、人生を変化させているんです。その瞬間に立ち会えた時、「いい仕事をしているな」と思います。

僕のところに通うお客さまは、一瞬の心地よさを求めている人達ではありません。辛い症状を改善させたい、常にいいコンディションでキープしたいという、意識の高い人達なんです。

正直、その時の心地よさだけを求めるのであれば、マッサージ家電でもいいですよね。昨今の家電は優秀です。今後はもっとAIが発達していって、いろいろな仕事が奪われるでしょう。でも、人の体をケアするのはやっぱり人。機械でもできないことはないでしょうが、できて3割ぐらいだと思います。整体の仕事が完全に奪われることはないでしょう。

そして何より柔道整復師は、体さえあればどこでだって仕事ができるんです。場所を選ばないというのも、魅力の一つですね。

――裏を返せば、自分の体が全てであり、商売道具である、ということですよね。健康のために何か気をつけていることはありますか?

やはり食事は大切ですよね。僕は基本的に小麦製品を食べません。年に2〜3回は食べることがあるかもしれませんが、意識的に食べないようにしています。

というのも、小麦のグルテンは腸にへばりつくと言われ、僕はあまり体によくないと思っているんです。あくまで僕の持論で人に勧めるわけではありませんが、僕は食べないようにしています。

あとはタンパク質をしっかり摂ること。そして適度に歩いて運動をすること。どれも基本的なことですが、規則正しい生活こそ健康の秘訣だと思いますよ。それさえできていれば、体調を崩すこともほとんどありません。

――今後力を入れていきたいことや、新たな目標などはありますか?

今、首専門の整体をやっているので、お医者さんと提携したり、意識の高い人たちが集まるフィットネスジムと提携したり、もう少し深刻な悩みを持つ人にもアプローチできるよう、医療的な観点でタッグを組んで活動していきたいです。そしてその活動を日本全国に広げて、いずれは海を越えて展開できるといいですね。

世界で活躍する日本人整体師はたくさんいます。でも僕が目指すのは、拠点はあくまで日本。日本で活動を続けながら、日本の「らせん操法」を世界に発信していくのが今後の目標です。

さまざまな職業・人に触れて経験値を増やし、
自分の目標をしっかりとらえることが大切

――これから柔道整復師を目指す人が学んでおくと良いことや、経験しておくと良いことなど、アドバイスをお願いします。

自分自身が柔道整復師という職に合っているかどうかを見極めるには、いろいろな仕事を知っておくことも大切だと思います。そのためにも、いろんな仕事を経験してみるのもいいのではないでしょうか。

あと、いろいろな人に会うこと。ただし、「つるむ」というのはちょっと違います。僕は同業の友人がほとんどいないのですが、それは傷の舐め合いをするような関係性は、技術を向上する上で障害になると思っているからなんです。

正直「協会に属する」というのも、今の時代を考えると少し古いと思います。僕のように個人で活動している人たちがどんどん増えて、そういう人たちの輪が広がっていくのはいいことだと思いますし、そういうコミュニティは今後作っていきたいなと思いますが、協会に属することであぐらをかいてしまっていては、腕は磨けません

――なるほど。

もちろん、技術を高めるのも、ビジネスとして成功するのも、働き方としては両者とも間違っていないので、先ほども少し話しましたが、自分の目指す先を早めにイメージしておくのがいいですね。目的が定まると、現実で起こる展開のスピードが速くなりますから。

そのためにもいろいろな仕事を知る、いろいろな人と会う。そしていろいろなところに行って、さまざまな経験を積む。一つの物事に固執せず、たくさんの経験をしましょう。でも、自分の芯はしっかり持って、目的がブレないように気をつけてくださいね。

――では最後に、柔道整復師の心得3箇条を教えてください。

・自分を大切にする

自分自身が整っていないと、いい施術は提供できません。この仕事は「人のためにする仕事」と思われがちですが、まずは自分自身を大切にしないと、他の人を大切にすることなんてできないと思います。

・ずっと技術を高めていく

ある程度技術が高まると、「ビジネスにしなさい」と言われることもあります。僕もそうでしたし、実際、紆余曲折していた時期もありました。でもそれって、今後もずっと技術を高めていく覚悟と意識をしていないと、いずれ破綻します。まずは技術を磨くことに専念しましょう。

・つるまない

先ほどもお話ししましたが、お互いを高め合える関係なら別です。でも、大抵の場合は同調してくれる仲間が欲しいだけというのがほとんど。そういう馴れ合いをする仲間は必要ないと、僕は思います。自分の考えをしっかり持っていれば、周りの同意を求める必要はありませんから。

取材・文/児玉知子
撮影/喜多二三雄

information

首専門 ハイパフォーマンス整体「極(KIWAMI)」
住所:東京都渋谷区恵比寿西1-6-7 サニーガーデン 402号
電話:03-5458-7628

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