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ヘルスケア 2022-10-31

美容鍼灸の真髄は、体の乱れを整え、土台を整え、その上でキレイな肌に導くこと【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.77 /治療家・上田隆勇さん】#2

「ヘルスケア業界」のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロに、お仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。

今回お話を伺ったのは、治療家として活躍する上田隆勇さん

一般財団法人 日本美容鍼灸マッサージ協会の代表理事を務めながら、「ハリウッド式美容鍼灸®」の創始者でもある上田さん。鍼灸だけにとどまらない幅広い知識と技術で、多くの人々の美と健康を支えています。

前編では、上田さんがこの道に進んだきっかけや、「ハリウッド式美容鍼灸®」が生まれた経緯を伺いました。
後編では、現在の活動内容や働き方、未来の鍼灸師に向けたアドバイスを伺います。

銀座店オープン直後の緊急事態宣言……
思い切って始めたYouTubeが今では集客の要に

――現在の活動内容を教えてください。

サロンとしては、「ブレア銀座」と「ブレア元町」の2店舗。治療家として施術もしますし、経営者としてスタッフの教育もしています。あと、協会の方では技術教育と経営支援。経営塾もやっていて、同業の人に治療法や経営の指導をしています。あとは、化粧品開発やサプリメント開発を行っていますね。

――とってもお忙しそうですね。ちなみにYouTubeの活動もなさっていますよね。始めたきっかけは何だったんですか?

いつかは、と思いながら、なかなかできていなかったのですが、決定打となったのは新型コロナの流行ですね。実は銀座店のオープンが2020年4月4日だったんですが、その3日後の4月7日に緊急事態宣言が出たんです。オープン早々、営業している場合じゃなくなってしまいました。

入っていた予約は全部キャンセルになるし、お店が開けられないのに借入したお金はどんどん減っていくし……。オープンした途端に存続危機に直面して、今ここでYouTubeをやらないと終わるな、と思ったんです。正直、どうせ潰れるなら……と、捨て身で始めました

とはいえYouTubeに関してはド素人。一から勉強するしかない。当時融資がまだ決まっていなくて、預金残高が600万円しかない中、250万円のセミナーに申し込みました。

――セミナーってそんなにかかるんですか⁉️

最初は2日間で70万円のコースだったんですけど、2日で理解できる気がしなかったので、250万円のコースに……。各院の家賃だけでも300万円必要だし、スタッフの給料を含めると赤字確定の大博打でした。これはもう身を切るしかないと思っていたら、5月15日にちょうど持続化給付金が振り込まれて。なんとか救われましたが、15分後にはほぼすべてなくなっていましたね。

でも今考えると、あの時YouTubeを始めていなかったら本当に潰れていたと思います。今でも新規のお客さまの大半はYouTubeを見て来てくださった方なので、集客の柱になっていますし、結果的によかったのかなと思います。

――ちなみに制作はどのように進めているんですか?

週に1日、「YouTubeの日」と決めて撮影しています。今は木曜日の通常配信はお休みしてショート動画にしていますが、当時は毎日アップしていたので、1日で7〜8本撮っています。企画、演者、助監督、モデルの手配、当日のスケジューリング、すべて僕の仕事なので、毎回大変です。流石にカメラマンと編集はプロに依頼していますが、サムネは僕がラフ案を出して、それに合わせて作ってもらっています。

――100万回再生を超えている動画もありますが、注目度の高い動画を作るコツはなんですか?

YouTubeは基本エンターテイメントなので、真面目になりすぎないように心がけています。最初はセルフケアも紹介していたんですが、あんまり伸びが良くなかったので、最近は、普段店舗ではどんな治療をしているかという紹介をベースに、「サロンに来られない人はこうやってケアしてくださいね」とセルフケアを挟む感じ。今でも常にトライ&エラー。試行錯誤しています。

現状掴めた感覚だと、一番大事なのは「自分は誰か」「見ている人は、僕に何を求めているか」っていうことを理解することなのかもしれません。YouTubeって検索に使われるので、見る人の悩みに対して答えを出してあげないといけないんです。

僕も最初失敗したのですが、そもそも僕が求められているのは、ツボと鍼の技術&知識じゃないですか。なのに、検索度が高いからとストレッチの動画を出したことがあったんです。もちろん伸びませんでした。そりゃそうですよね、ストレッチの動画を求めている人からしたら「あなたは誰なの?」だし、ツボや鍼の動画を求めている人からしたら「そんなの求めてない」ってなります。自分の専門性をきちんと理解した上で、これを見る人が求めているものは何かを考える。これが必要だと気づきました。

どの病院に行ってもダメだったと落ち込んでいた方が
笑顔を取り戻して元気になっていく姿を見るのが一番のやりがい

――ちなみに現在の働き方は? 代表的な1日の流れを教えてください。

だいたい6時半ぐらいに起きます。朝のルーティンは、トイレの掃除、神棚の掃除。その後般若心経を唱えて、祝詞を上げます。これは自分自身と向き合う大切な時間ですね。

そうやってセットアップしたあとは、9時ぐらいから仕事を始めて10時半にサロンの朝礼。出社することもあれば、事務所からリモートで参加することもあります。そのあとは施術だったり、セミナーのコンテンツ制作だったり、マーケティングだったり。ランチはほぼ取りません。帰宅するのは23時ごろで、そこからまた仕事をして、寝るのはだいたい2時ごろです。

――ずっと働いていますね……。お休みの日はあるんですか? どうやってリフレッシュの時間を取っていますか?

基本毎日仕事ですが、子どもが4歳と1歳でまだ小さいので、子どもと遊ぶ時間はできるだけ確保するようにしています。あと、最近はなかなかできていませんが、神社を内観して一人会議。自分自身と向き合う時間がリフレッシュというか、頭をクリアにする時間ですね。

――この仕事のいいところややりがいを教えてください。

一番のやりがいは、病院でなかなかよくならなかったという方がサロンに来て元気になっていく姿を見ること。病気で落ち込んでいた方に笑顔が戻る瞬間とか、車椅子に乗って通っていた子が、自分で歩いて来るようになったりするのを見ると、この仕事をやっていてすごく良かったと思います。

あと、美容鍼をやっていると、モデルさんとか女優さんとか、アーティストの方ととかもいらっしゃるのですが、みなさんなぜか、どんどん有名になっていくんですよ。おかげで「パワースポットサロン」とか「人間パワースポット」と言われるようになりました(笑)。

あと、アスリートの方にも東洋医学の鍼は注目されています。鍼を使うトレーナーもいるにはいるんですが、どうしても西洋医学の考え方がベースになっているので、カバーできない部分があるんですよね。僕らがサポートに入ることで、コンディションが上がっていい結果が出ると喜んでくれるし、僕も嬉しいです。

鍼灸師が美容を行う意義は「土台を整えること」。
その思いを受け継ぐ鍼灸師を育成したい

――今後力を入れていきたいことや目標はありますか?

鍼灸師が美容をやる目的は、体の乱れを整え、土台を整え、その上でキレイな肌に導くこと。表面だけをキレイにするのであれば、化粧品や美顔器に取って代わられるので、生き残る道はありません。逆を言えば、根本原因である土台の乱れを整えてあげられるのは、鍼灸しかいないと思っています。

なので今後の目標は、鍼灸師が美容を行う意義をしっかり伝え、その思いを受け継ぐ鍼灸師を育成すること。そうすれば少しずつ予防医学も発展するだろうし、社会貢献にもつながると思っています。

――これから鍼灸師を目指す人や、さらなるステップアップを目指す人にアドバイスをお願いします。

江戸時代、鍼灸師になるためにはマッサージ(あん摩)がうまくないとなれなかったと言われています。というのも、人の体をちゃんと触ることができ、筋肉の動きを理解して初めて鍼を扱うことが許されたそうです。

ですが昨今の鍼灸の学校では、手を怪我したら繊細な作業ができなくなるので、「あまりマッサージをするな」と教えられることもあるようです。もちろん指導する先生によっても考え方が変わると思いますが、僕はこれは間違いだと思います。人の体もまともに触れない人が、皮膚のその奥にアプローチする鍼を上手に扱えるとは思えません。マッサージが下手な人は鍼も下手なはずです。

なのでできることなら1年、せめて半年でもいいのでリラクゼーションサロンなどで働いて、たくさんの人の体を触り、手の感覚を磨いてください。大きな体の人と痩せた体の人では、筋肉のつき方も動き方も全く違います。これなら鍼灸師の資格を取る前でもできます。その上で鍼を使うと、グッと上達が早くなりますよ。

あと、みなさん東洋医学はしっかり勉強していると思いますが、西洋医学の勉強も怠らないでください。先ほども話した通り、われわれはジェネラリストでなければいけません。お客さまは西洋医学を受けた上で、それでも良くならないからと救いを求めているんです。西洋医学を理解していないと、何もアドバイスできません。両方バランス良く学んでください。

――ありがとうございます。では最後に「治療家の心得3ヵ条」をお願いします。

・お客さまの生涯の美と健康のパートナーになれるよう、今何が必要なのかを考え、提案する
・お客さまのためにも、自分自身の体を整える
・医療の学びに終わりはないので、常に学び続ける

お客さまを元気にするはずの治療家が、元気がなく弱々しかったら、相手も不安になりますよね。人間誰しも体調が悪い時がありますが、お客さまの前に立ったら「人間パワースポット」のスイッチをオン。整った姿でいることもプロの心得です。

前編・後編を通じて、熱い思いを語ってくださった上田さん。1日のスケジュールを伺った時、「こんなハードスケジュール、誰も憧れないよ!」と笑ってらっしゃいましたが、どんなに忙しくてもパワフル&エネルギッシュに活動されているのは、「人間パワースポット」として常に心と体を整えていらっしゃるからなのかな、と感じました。
貴重なお話をありがとうございました!

取材・文/児玉知子
撮影/喜多二三雄

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美容鍼灸・不妊・難病治療専門鍼灸院 ブレア銀座
住所:東京都中央区銀座2-11-5陽光銀座セントラルビル7F
電話:03-6264-7702

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