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介護・看護・リハビリ 2025-08-26

個別性を大事にしてきた看護師時代が卒モラプロジェクトに活きて 【介護・看護・リハビリ業界のお仕事企画 看護師・卒モラ講師 長谷川みゆきさん】#2

業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載「介護・看護・リハビリ業界のお仕事企画」。今回は、看護師・卒モラ講師の長谷川みゆきさんにお話を伺います。

9年の看護師キャリアを持つ長谷川さんは、育休中に社会との繋がりを失ったことでモラ妻を経験。なにをやっても夫に腹が立つモラ妻状態を、バランスボールと人間関係の学びで卒業します。それから7年後、モラ妻当時を俯瞰で見つめ直し、「卒モラ7daysプロジェクト」を発足。立ち上げまでの道のりを聞きました。

お話を伺ったのは
看護師・卒モラ講師
長谷川みゆきさん

大学卒業後、大規模病院の神経内科病棟看護師として勤務。4年後、兼ねてから希望していた心臓血管外科の専門病院に転職。その後、訪問診療同行看護師やデイサービスの看護師を経験。看護師のキャリアと産後のモラ妻経験を活かし、2024年12月「卒モラ7daysプロジェクト」発足。現在卒モラ講師として活躍中。2人の女児ママ。

信じて待つコーチングだけでなく、導くことがあってもいい

「卒モラプロジェクトの生徒さんには『今日は○○へ遊びに行くから返事は夜になるね』と事前に伝えておきます。わたしが家族を大事にしていることが何よりの希望になるから」

――卒モラ7 daysプロジェクトの内容を教えてください。

7日間、LINEのオープンチャットで対話をしながら卒モラへの道のりを作っていきます。例えば「あなたは自分のどういうところがモラ妻だと思いますか」という課題に答えていただく。さらに「本来のあなたはどういう人だと思いますか」という課題を投げかける。何かレクチャーするわけではなく、問いかけるスタイルです。基本的にはコーチングのやり方なんですが、コーチングとは言わずセッションと呼んでいます。

なぜなら、わたしが突然意見を言い出すことがあるから。話を聞いていく過程で「わたしこんな経験したけど似てない? もしそうならこういう角度から見てみるのがおすすめだよ」とヒントを出すことがあるんです。やっぱり1日でも早く卒モラしたいと思っている人が多いので、信じて待つコーチングだけでなく、導くことがあってもいいんじゃないかというスタンスでやっています

――セッションは時間を決めて行うのですか。

24時間OKです。4~5人のグループでやることが多く、昼間仕事をしている人もいれば、夜中の3時に授乳している人も。プロジェクトに参加する7日間は通知オフにしていただいて、それぞれが都合のいい時間に参加できるようにしています。

基本的にはモラ妻であることを隠したい、本名も顔も出したくない人が多いので、LINEのアカウント不要・匿名・顔出しなしの安心安全の状態で運営しています。

――プロジェクトのゴール設定は?

やると決めたことをやれる人なんだと、自分を信じられる。
元の優しく可愛い自分に戻れる、という期待を持てる

この2点です。
生徒さんには、何度となくイライラするのをやめようと思ったのに怒鳴ってしまう、言っちゃいけないと分かっているのに言ってしまう。怒りでしか感情表現できない状況がずっと続いている方が多いので、自分自身に不信感があるんです。なので、まずは期限までに課題を提出することで自分に自信をつけてもらうことを目標にしています。

プロジェクトとして提供するには「私だからできた」ではダメ

「夫はなにひとつ変わっていません。最初からちゃんといい人でした。変わった点は、わたしが感謝とか愛情をちゃんと外に出せるようになったこと」

――プロジェクトはどうやって構築したんですか。

看護師時代は集客したこともなかったですし、講師として順調だったバランスボールを取り入れるわけでもない。それまでと全く切り離したことをやろうとしたときに、すごく自分と向き合いました。

7年前プロのモラ妻をしていた自分が、どうやって今に至ったのかめっちゃ振り返りました。当時の自分を眺めて、わたしはこういうことが嫌だったのかな。夫に対してこういうところが羨ましかったのかな。

――渦中にいると見えないことってありますよね。

そうですね。卒業しているからこそ俯瞰で見れて、そこで気づいたことをバーッと書き出す作業から始めました。それをプロジェクトとして提供するには、私だからできたことではダメなんですよね。再現性がないので

――長谷川さんだからできたんでしょ?と言われてはダメということですね。

その通りです。私だからやりきれたのかなと一瞬思ったこともあるんですけど、たぶんみんなに共通する要素が絶対あるはず。例えば自分のことを何で評価していたか、親にどんな声かけをされていたかとか、みんなに当てはまることと個人的なもの、超オリジナルなものを分類して、みんなに共通するであろうトラブルの発端とそれにどう対処したかを拾い集めてプロジェクトが完成しました

看護師時代大事にしてきた「個別性」が卒モラプロジェクトにも活きて

「看護師の看板を降ろしても、人との関わり方は変わりません」

――みんなができることをピックアップすることは、商品としてはすごく大事ですよね。プロジェクト受講生の変化は?

心の持ちようや生き方が軽くなったとおっしゃる方が多いです。プロジェクトの7日間「それ今日じゃなきゃダメ?」「誰が言ってきたの?」「明日じゃダメなの?」と毎日問われることで、プロジェクトが終わってからもふとその質問が浮かんでくるそうなんです。それまで自分で自分に謎のミッションを課していたけど、「誰にも言われてないよね」、「やらなくても誰も困らないよね」と自問自答できるようになることで軽くなっていく。

――すごい変化ですね。

そうですね。それから子どもの気持ちがちゃんと聞けるようになって、子どもってかわいいいんだということを思い出したという方も。良い子に育てなきゃと思っているから、共通してお母さんがやりすぎちゃってることが多いんです。だから遊ぶのは40分までとお母さんが決めるのはではなく、子どもに8の針までと決めさせる。そうすると決意が違うから、子どもはそれを守るんです。「試してみたら、出かける前に驚くほど時間ができました」とおっしゃる受講生の方も。

――まさにコーチングを越えたセッションですね。

正直、生徒さんは課題に答えることでいっぱいいっぱいなんです。現在上の子が2~5才の受講生がいるんですけど、子どもにどんな大人になってほしいか、自分はどういうお母さんでいたいか、そんなことを考える余裕もなく、とにかく今日を間に合わせなきゃ。こんなに自分のことを考えたことがなかったから、自分のために時間を使えることですごく満たされたとおっしゃいます

――そんな波及効果も。最後に、看護師としてのキャリアは現在の活動に活かされていますか。

もちろんです。「患者さんには個別性がある」ことを大事に看護師の仕事をしてきたんですが、それが現在にすごく活きていると思います。患者さんのたった一回の人生の中にたまたま入院が入ってきただけ。病気から患者さんを見るのではなく、ひとりひとり違う患者さんを見る。気づかないうちに落とし穴に落ちてしまったモラ妻もそれと同じなんです。看護師時代、たくさんの患者さんやご家族に出会い、それぞれの個別性と関わらせてもらったことが、卒モラプロジェクトにもすごく活かされています。

卒モラプロジェクト発足に活かされたこと&必須だったことは

1.看護師時代、患者さんだけでなく家族までケアしたこと

2.看護師時代、患者さんそれぞれの個別性を大事にしたこと

3.商品化のため再現性のある項目をピックアップしたこと

看護師のキャリアとモラ妻経験を元に「卒モラ7daysプロジェクト」を立ち上げた長谷川さん。自らの経験からくる説得力はハンパなく、「関わる人や場所が変わっても関わり方に変わりはない」という言葉が印象的でした。

撮影/森末美穂
取材・文/永瀬紀子

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看護師・卒モラ講師 長谷川みゆき
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