介護福祉士は国家資格? 受験に必要な要件は?|取得するメリットや合格するためのポイントも紹介
これから介護職を目指す方や、すでに介護の現場で働いている方のなかには、「介護福祉士の資格を取りたい」と考えている方も多いと思います。しかし、どのように資格を取ればいいのかわからない、他の福祉系資格との違いがわからないと疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、介護福祉士資格を取得するにはどのようなルートがあるのかを説明しながら、介護福祉士を含めた3つの福祉系資格(介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士)の業務内容の違いについて解説します。
介護福祉士の資格は国家資格?

介護福祉士は、福祉系分野のなかで社会福祉士・精神保健福祉士と並び、介護系では唯一の国家資格です。おもに高齢者の身体介護、生活援助などの仕事に携わるための資格で、この資格を取得するには国家試験に合格しなければなりません。
国家試験を受験して合格すれば取得できる!
介護福祉士になるためには、まずは国家試験の受験資格を得る必要があります。国の指定する養成施設や福祉系高校を卒業するか、数年の実務経験を積むことで受験資格が得られ、その後国家試験に合格し、登録名簿に登録することで介護福祉士として認められるのです。
国家試験の受験資格ルートは4つ!

介護福祉士の受験資格を取得するためのルートは「実務経験+実務者研修ルート」「新カリキュラムルート」「旧カリキュラムルート」「養成機関ルート」の4つがあります。それぞれどのようなルートなのかを詳しく見ていきましょう。
①実務経験3年以上+実務者研修ルート
介護等の実務経験と実務者研修を修了することで受験資格が取得できるルートです。これまでは実務経験を3年以上積めば受験資格を得られましたが、2007年度におこなわれた法改正により、2016年度からは実務経験に加え、養成施設等における「実務者研修」の修了が必須になりました。
よって法改正後は、「実務経験3年以上」だけでは受験資格は得られません。
②福祉系高校ルート|新旧カリキュラム・特例高校
福祉系高校を修了することで受験資格が取得できるルートです。このルートは、2009年度以降入学者の「新カリキュラムルート」、2008年度以前入学者の「旧カリキュラムルート」、および「特例高校ルート」の3つのルートがあります。
新カリキュラム(2009年度以降入学者)
2009年度以降に福祉系高校に入学した人は、新カリキュラムルートになります。新カリキュラムルートで修了した人は、卒業と同時に受験資格を得られます。
特例高校など(2009年度以降入学者)
2009年度以降に特例高校(介護福祉士養成の基準を満たす高校および中高一貫校)に入学した人は、卒業後に実務経験(9カ月以上)を積むことで国家試験の受験資格を取得できます。
なお、受験申込時には介護技術講習を受けるかどうかを決めることができ、受講した場合は実技試験が免除されます。受講しなかった場合は実技試験に合格しなければなりません。
旧カリキュラム(2008年度以前入学者)
2008年度以前に福祉系高校に入学した人は、旧カリキュラムコースになります。旧カリキュラムを履修して卒業した人は、そのまま国家試験の受験資格を得られます。ただし、新カリキュラムと違い、受験申込時に介護技術講習を受けるかどうかを選択する必要があります。受講した場合は実技試験が免除され、受講しなければ実技試験は必須です。
実務経験が必要になることもある!
3つの福祉系高校ルートのうち、特例高校ルートでは9カ月の実務経験が必要です。また、新カリキュラムルートでは自動的に実技試験が免除されますが、特例高校ルートと旧カリキュラムルートでは、国家試験の申込時に介護技術講習を受けることで実技試験が免除となります。
③養成機関ルート|専門学科で学ぶ
介護福祉士養成施設で1~2年以上知識・技術を習得し、受験資格取得を目指すルートです。この場合、高等学校卒業後に介護福祉士養成施設で学ぶルートと、福祉系大学や社会福祉士養成施設などを卒業後に、介護福祉士養成施設で学ぶルートがあります。いずれの場合も、実技試験は免除されます。
2016年度までは、介護福祉士養成施設を卒業すれば介護福祉士の資格を取得できましたが、法改正により、2022年度以降に施設を卒業した人は国家試験の受験が必要になります。
高校卒業から養成機関修了まで
普通科の高校を卒業した人が養成機関を修了するためには、2年以上通う必要があります。福祉系大学・社会福祉士養成施設・保育士養成施設などを卒業した人は、養成機関を修了するために1年以上通うことが必須です。
2016年度までに卒業した場合
上述したように、2022年度以降に養成機関を卒業した人は、資格取得のために国家試験の受験が義務付けられます。2016年度までに養成機関を卒業した人は、受験することなくそのまま資格取得・登録が可能です。
2017年~2021年度卒業の場合
2017年4月1日から2022年3月31日までに養成機関を卒業する人は、例外措置として「卒業後5年間」は介護福祉士の資格を保持することができます。5年後も継続して資格を保持するためには、5年間(猶予期間)のあいだに国家試験に合格するか、もしくは卒業後5年続けて介護業務に従事することが必要です。
2022年度以降に卒業する場合
2022年度以降に養成機関を卒業した人は、国家試験の受験が必須となります。
④経済連携協定(EPA)ルート|外国人介護職員
政府は、EPAによって外国人介護職員の受け入れや支援事業を推進しています。外国人であっても、指定の受入機関で3年以上の実務経験を積めば、介護福祉士の受験資格を取得することができます。このルートでは受験申込時に介護技術講習または実務者研修を受講するかどうかを選択でき、受講すれば実技試験は免除されます。
通信講座でも資格は取得できるの?

介護福祉士資格を取得するには実技の習得も必要なので、通信教育のみでの資格取得は認められていません。ただし、資格取得に必要な「実務者研修」の受講科目の多くは通信講座でも受講できます。
実務者研修の科目のうち、「介護課程Ⅲ」と「医療的ケア(演習)」は通信講座では受講できないので通学が必須です。この2科目以外は通信で受講可能ということになります。
介護福祉士の資格を取得するメリット

介護福祉士の資格を取得することで、いくつかのメリットを得ることができます。ここからは、介護福祉士の資格を取得するメリットについて、いくつか代表的なものを紹介します。
1.より専門的な技術や知識が身につく
介護福祉士の資格は、介護資格のなかで唯一の国家資格であり、上位資格に位置しています。そのため、資格を取得するためには、より専門的な技術や知識を身につける必要があります。
資格取得に向けての学習を通じて、高度なスキルを習得でき、その後介護の現場で活躍が期待できるというのは大きなメリットと言えるでしょう。
2.業務の幅が広がる
介護系の業務のなかには、「特定の資格所持者しか従事してはいけない」とされている業務も存在します。介護福祉士の資格を所持していると、現場での介護業務に加えて、サービス提供責任者など、管理業務をおこなうことができるようになります。
これらの役職は、各事業所に一定人数の配置が義務付けられているため、介護福祉士の資格所持者は介護業界の求人需要が高いと考えられます。
3.収入アップが期待できる
収入アップが期待できるのも、資格を取得するメリットのひとつです。
厚生労働省から、介護従事者の平均給与が「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果(案)」で公開されています。
このデータによると、保有資格なしの平均給与が270,530円、介護職員初任者研修の資格保持者の平均給与が302,910円に対し、介護福祉士の資格保持者は平均給与が331,690円と、高い水準にあります。
介護福祉士資格取得をすることで、給与が上がる可能性が高いと言えるでしょう。
引用元
厚生労働省:令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果(案)
4.就職・転職に有利になる
介護職の求人は、有資格者という条件があるものもあります。介護福祉士は介護職の資格のなかでも上位の国家資格であるため、保有していることで多くの求人の条件を満たすことができます。
5.キャリアアップにつながる
介護職は段階的に資格を取得することで、キャリアアップを目指すことができます。
東京都と愛知県の例を見てみると、介護福祉士の資格を取得することによって、介護支援専門員(ケアマネジャー)の受験要件のひとつを満たすことができます。また、認定介護福祉士の受講要項でも、介護福祉士の資格所持が要件のひとつになっています。
このように、介護福祉士の資格を取得することで受験できるようになる資格もあるため、介護職のキャリアアップを目指すなら取得しておいて損はないと言えるでしょう。
引用元
公益財団法人 東京都福祉保健財団:令和5年度 東京都介護支援専門員実務研修受講試験
愛知県:受験資格者(平成30年度の場合)
介護福祉士の合格率はどれくらい?試験は難しい?

介護福祉士の資格で気になるのは、合格率や難易度ではないでしょうか。
厚生労働省は、過去の介護福祉士の合格率を発表しています。そのデータによると、過去5年の合格率は7~8割ほどで、国家資格のなかでは比較的合格率が高めと言えるでしょう。
ただし、受験要件ルートのひとつに実務者研修の修了があるように、受験者はもともと介護の知識や技術が高い人が多いです。
そのため、決して「かんたんに誰でも合格ができる資格」とは言えず、きちんと勉強する必要があります。
引用元
厚生労働省:介護福祉士国家試験の受験者・合格者の推移
厚生労働省:介護 プレス資料(厚生労働省用)
介護福祉士の試験に合格するためのポイント

介護福祉士の試験に合格するためには、きちんと学習して試験対策をする必要があります。試験に向けた勉強方法など、合格するためのポイントについて見ていきましょう。
1.自分に合った勉強法を探す
まず、自分がどんな勉強法で勉強すれば一番効率的に学べるのかを知りましょう。介護福祉士の試験勉強をするには、スクールに通う・通信講座を受講する・独学で勉強するなど、いくつかの方法があります。それぞれの勉強法にはメリット・デメリットがあるのでよく確認し、自分の性格やライフスタイルに合っている方法を探しましょう。
2.過去問を解いて傾向を把握する
介護福祉士の資格試験に限らず、試験勉強では「過去問を解く」ということがとても重要です。過去問を解くことで、頻出問題や出題傾向がわかるため、どこを重点的に勉強すればよいのかが把握できるからです。また、全体の問題数や、自分の解答時間もわかります。実際に時間を計って解いてみることで、試験当日の時間配分も徐々に掴めてくるでしょう。
なお、介護福祉士の過去問は、社会福祉振興・試験センターホームページで公開されています。
引用元
社会福祉振興・試験センター:[介護福祉士国家試験]過去の試験問題
3.過去問をもとに反復学習をする
過去問を解くことで、自分の苦手な科目、自分が間違えた理由なども把握することができます。たとえ同じ過去問であったとしても、何度も解いて反復学習をすることで、苦手科目を克服できる可能性が上がります。
4.得意な科目で得点を稼ぐ
介護福祉士試験の合格基準は、総得点の60%ほどを得点することと、すべての科目で得点することです。苦手な科目でも得点する必要があるとはいえ、得意な科目をさらに伸ばすことで総得点を稼ぐことができます。
試験の目標は合格であって、満点を目指すことではありません。完璧にこだわらず、得意な科目でより得点できるよう勉強しましょう。
引用元
社会福祉振興・試験センター:[介護福祉士国家試験]合格基準
同じ国家資格だけど…社会福祉士や精神保健福祉士とはどこが違うの?

福祉業界には3つの国家資格があります。介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士の3つで「三福祉士」とも呼ばれるようです。ここでは、三福祉士それぞれの違いについて解説していきます。
社会福祉士はどんな仕事をするの?
社会福祉士は年齢・性別・障害問わず、なんらかの問題で日常生活を送ることが困難になっている人に対して、支援やサポート・指導・助言をおこなうことが仕事です。
介護福祉士とはココが違う
介護福祉士の仕事は、おもに身体的介護が必要とされる高齢者を対象としています。社会福祉士は高齢者、知的障がい者、身体障がい者、精神障がい者、生活保護が必要な人(低所得者)など対象者が幅広く、この点が介護福祉士との大きな違いです。
サポート対象者の範囲が広い分、社会福祉士は福祉系の知識だけでなく、法律・心理学など幅広い知識が必要です。また、介護福祉士の勤務先は特別養護老人ホームなどの介護施設が中心ですが、社会福祉士は障がい者施設、医療機関、福祉事務所、社会福祉協議会など、勤務先の幅も広くなります。
精神保健福祉士はどんな仕事をするの?
精神保健福祉士は、精神的な障害を持つ人々に対し、社会復帰や日常生活が正常に送れるよう指導やサポートをおこなうのが仕事です。精神障害を患う本人だけでなく、その家族に対する相談、アドバイスもおこないます。
介護福祉士とはココが違う
介護福祉士はおもに高齢者を対象とした仕事であることに対し、精神保健福祉士は精神障がい者に特化して仕事をおこないます。そのため、精神保健福祉士は精神障害における専門知識や、精神障害を患う人とコミュニケーションするための心理学の知識が必須です。
精神保健福祉士の勤務先は、精神病院・総合病院の精神科(心療内科)・福祉施設などになります。
介護福祉士は高齢化の進む社会を支える重要な仕事のひとつ

介護福祉士資格の取得の仕方や、他の福祉系資格との違いについてご紹介しました。「三福祉士」と呼ばれる国家資格のなかでも、介護福祉士の必要性と役割は近年特に多くなっています。高齢化が進む日本において、介護福祉士の人手不足が顕著になってきており、ますます需要が高まっているからといえるでしょう。
団塊世代が75歳以上になる2025年は、介護人材が30万人近く不足すると予測されており、他の「福祉士」よりもさらに一段と多く求められる資格となるかもしれません。
引用元
厚生労働省:ソーシャルワーク専門職である 社会福祉士に求められる役割等 について
公益財団法人 東京都福祉保健財団:令和5年度 東京都介護支援専門員実務研修受講試験
社会福祉振興・試験センター:[介護福祉士国家試験]過去の試験問題












