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弁護士に聞く!「トップスタイリストの歩合に残業代は含まれるのか?」

お客さまにもスタッフにも愛されるサロンであるためには、法律の知識が欠かせません。今回は、実際にあった裁判例から学び、愛されサロンへの道を探ります。
テーマは「トップスタイリストの歩合に残業代は含まれる?」です。

トラブルを回避し、愛されサロンへ
事件概要
トップスタイリストが、ヘアサロンを経営する会社に対して未払い残業代を請求。
トップスタイリストは営業時間外でも予約が入れば対応。店長以下のミーティングにも参加し、業務報告なども担当していた。こうした業務から残業代が発生すると主張。
会社側は、アシスタントは基本給で働くことに対し、スタイリスト以上は歩合給がつき、そこに職務手当が含まれるので残業代は発生しないと主張。
判決内容
2年分の未払い残業代全額にあたる278万円の支払いを会社に命じた。

残業代とは、実際に働いた時間が所定労働時間もしくは法定労働時間を超えたときに割増しも含めて雇用主が支払わなければいけないものです。

前提として、雇用契約と会社の規模は関係ありません。個人経営であっても、法人であっても、そこに労働者がいる以上、労働契約が発生するため、基本的には雇用契約は書面でつくらなければいけません。

雇用主は、残業代を「固定残業代」として、つまり固定で支払こともできます。例えば契約書に「基本給は15万円、残業手当5万円」と記せば、残業代は、残業手当に含まれており、手当を上回る分は支給しないという意味です。ただ、含んでしまえば問題はない、ということではありません。実際の残業の時間が手当に見合ったものでなければなりません。激務が生じているにも関わらず、含んでいるから…は通用しません。

美容師の場合、自主的にカットなどの練習をする、自主的に先輩から指導を受けることがあるでしょう。これは残業とは言えません。しかし、事実上、参加しないといけない環境になっているなら、これは業務と見なされ、残業代が発生します。
また、残業の内容は問われません。例え、スタッフがミスをして業務が発生したとしても、業務は労働時間と見なします。そこには対価が発生するのです。

トラブルを回避し、愛されサロンへ

さて、この事案では、雇用主は、トップスタイリストを管理監督者だと主張しています。

(※管理監督者…労働基準法は、労働者の労働時間や休日に関して規定を設けているが、管理監督者はそうした規定の適用が除外されている。管理監督者には法定労働時間の枠がなく、何時間働いても時間外労働にはならない。)

しかし、人事・労務管理への関与が限定的であったこと、タイムカードにより出退勤管理を受けていたことなどから、経営者と一体的立場にあるといえないとして、管理監督者該当性を否定しました。

そして、基本給・歩合給の賃金体系が美容師業界はで一般的であっても、労働基準法に違反しているとして、会社側に残業代の支払いを命じました。

トラブルを回避し、愛されサロンへ

雇用契約に関し、インターネット上からひな形をとったり、知り合いのサロンに契約書を見せてもらい数字を変えて使っていたりする雇用主も少ないでしょう。これでは不十分です。弁護士の指導をうけ雇用契約をつくることが最も理想的です。また、今ある雇用契約を一度チェックしてもらい、どんなリスクがあり得るか知っておけば対策ができます。ラインを知っていればトラブルや訴訟にはなりにくいでしょう。

近年、残業代をめぐる相談・訴訟は増えています。この背景には、残業が常態になっている現状があるのかもしれません。人を使って働かせている以上、就業時間を超えた場合は残業代が発生します。雇用主は、意識を高める必要があります。

働く人は、最初に契約内容をよく確認して就職先を選ぶといいでしょう。また、残業代を請求する権利はあります。もし請求する場合、自分で手帳に就業時間を書き込んでいれば証拠になるし、お店にタイムカードの情報があれば、それを裁判で提出させることも可能で、難しい請求ではありません。

しかし、美容業界で働く人たちは常に知識・技術ともにレベルアップをしていかなければならず天井はないと言います。そうなると一般の世界のルールは適用しづらい部分もありますので、一概に残業したからその分を請求、とストレートに考えるのは難しいかもしれません。あくまでも不当な労働の場合ということを念頭に置いておきましょう。

インタビュー対象者

プロフィール

弁護士 大山 京

渋谷六本木通り法律事務所
東京都渋谷区渋谷3丁目6番2号エクラート渋谷ビル8階
TEL : 03-6868-3923

1979年横浜市出生。青山学院大学卒業
2015年 渋谷六本木通り法律事務所を開設し、独立。
民事事件・刑事事件のほか知的財産事件や医療事件まで幅広く業務を行っている。

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