廣田 純也 interview#3:ヘアメイクというのは心のケアにつながるもの。
美容師とは、トレンドを生み出し、流行を作り、おしゃれを届けるだけの存在なのだろうか――美容師としてのありかたに疑問を抱き、30代という若さで福祉の道へと活動の場を広げた廣田純也さん。その原動力や、社会活動を行うことによって見えた美容師の可能性について、お話をお伺いしました。
美容師だからこそ出来る社会貢献がある。こうしたことを周知することで、美容師という職業の“社会的地位”を高めることができるかもしでない――
――さっそくですが、廣田さんがなされている活動についてお聞かせください。
「そうですね。最近ではファッションショーのヘアメイクを行いました。障がい者の方がランウェイを歩くファッションショーだったんですよ。こうした場で、ヘアメイクにより変身して、人前に立つことで、みなさんの自信につながってほしい、そう思ってお手伝いさせていただきました。家族のみなさんも一緒に喜んでくれたのが、思い出深いですね。
ヘアメイクというのは心のケアにつながるもの。必要としている人はいろんなところにいて、でも今まではそういう部分には手が回ってなかったんだと、あらためて実感しました。
また、先日シンポジウムで登壇した際に、重度の知的障がいを持つ女の子ふたりと、その弟くんへの施術を行いました。それぞれをヘアメイクし、ビフォーアフターを見せ、美容がもたらす効果をメッセージとして伝える――という場を持たせていただきました。
弟くんが実は引きこもりだったのですが、このシンポジウムでのヘアメイクがきっかけにになって、最近、ギターを始めたって連絡があったんですよ。子どもたちは、可能性が未知数ですから、とてもやりがいがあります。美容により少しでも自信がつき精神を病んでしまった子どもたちの社交性に役立つような
これからも多くのこどもたちの未来を拓いていけたらうれしいですね!」
――これから目指していく活動について教えてください。
「シンポジウムに参加したり、先ほど説明したファッションショーに積極的に参加するなど、美容とメンタルとのかかわり合いについて、もっと学び、広め、関わっていきたいと思っています。「素敵!」と思えるファッションをする、自分が好きになれるヘアになる、自分が変わるきっかけになるメイクをする――美容により、たとえほんのわずかでも、“変化”や“気づき”を与えることが、障がいに向き合う勇気を与えることにつながると僕は思っているので。
また、美容を通して、障がい者【人権】を表現するようなことも行っていきたいと思っています。
こうしたことは、障がいを持つ当事者だけじゃなく、家族たちにも言えること。美容は、介助者の心のケアにもつながっていると思うんです。実際、引きこもりの学生や、障がいを持つ人の美容を行うと、「きれいにしてもらえて良かったね」と、ご家族の方々の心も、共に和らぐことが分かっているので。
もちろん、まだまだ課題は多いと思っています。実は……美容って、福祉に携わる人たちにとって、すごく遠い世界なんですよ。美容という技術を、福祉の世界でも利用できるということを、現場レベルの人たちに知ってもらうことが重要だと思っています。そのための第一歩として、今、通信制の大学に通い、精神保健福祉士という資格を取得するために勉強しています。」
――仲間を増やすこともお考えですか?
「もちろんです。一度に何人もの人の髪は切れませんし、物理的にひとりでは出来ないことが多いので。
少しずつではありますが、実力のある美容師さんで、賛同してくださる方が増えてきています。ありがたいことですね。」
――では最後に、廣田さんが考える“未来”とは?
「正しく導きながら社会復帰させなければいけない。そのために必要なのが「美容」ではないのか?と、福祉に携わるようになってから、ずっと考えています。
また、美容師がこうした社会活動を行うことで、美容師そのものの地位も向上するはず。お互いにwin winな社会にするために――福祉と美容とがもっと結びつきを強め、美容がもたらす効果が広まる、そんな未来を拓いていきたいですね。」
――ありがとうございました。
profile
廣田純也さん
33歳/神奈川県出身/株式会社Herts代表取締役/山野美容専門学校卒業後、「SHIMA」に入社。美容師としての経験を積み、25歳のときにフリーランスとして独立。美容を通した社会貢献活動を行う傍ら、中学校での講演や、シンポジウムでのセミナー開催等を精力的にこなしている。
Information
廣田 純也 interview#1:廣田純也さんが広げる「美容師の社会活動」の可能性とは>>