綺麗ごとではない、貪欲な野心を持って 私の履歴書 Vol.15【美容師 三科光平】#2

10代から20代の男性を中心に若者から圧倒的な人気を誇るOCEAN TOKYO。OCEAN TOKYO Harajuku代表取締役の三科光平さんは、多忙を極める中、Youtubeやインスタグラムなどからスタイルを発信し、ときに美容業界の裏面を伝えてくれています。前編では三科さんの美容学校時代やアシスタント時代について伺いましたが、後編では、OCEAN TOKYOのトップという立場から、今の美容業界や後輩教育に切り込んでお話を聞かせてくださいました。

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OCEAN TOKYO創立~現在

早くにSNSをはじめたおかげで今があるんです

――OCEAN TOKYOに入るきっかけとなった、中村トメ吉さん・高木琢也さんとの出会いについて教えてください。

中村は前社のサロンの上司でした。高木は競合サロンのトップスタイリストで雑誌の撮影の現場でたまに会って挨拶するくらいでした。

――なぜOCEAN TOKYOの立ち上げメンバーに入ろうと思ったのですか?

実のところ、その話を一度断っていたんです。その当時はうなぎのぼりで調子が良かったことと、中村との師弟関係を崩すいい機会だと思ったからです。あとは、純粋に中村と高木とはライバルでいる方が面白いと思ったんですよね。その後、高木と話す機会があって、興味が湧いたんです。「この人の仕事を見てみたい」って。その好奇心だけで参加することを決めました。

――2人に出会って美容師として何か変わりましたか?

2人から得られるものはすごく大きかったです。高木はプレイヤーとしてずば抜けているなとずっと感じていたので、すごく勉強になりましたし、中村は空気作りの面で非常に勉強になりました。ただ、自分は2人のようになりたいと思ったりはせず、先輩や後輩、そして例え入社したての1年目のスタッフからでも得られるものは得たいと思うタイプなので、自分のスタンスは変わらなかったですね。

――3人体制で経営されていたときは、どのような役割分担だったのですか?

中村は外部との契約や経理の部分、あとは組織の枠組み作りを。高木は美容師さんや業界の方々へのブランディングや外交を担当。そして自分は内部の技術・サービス・SNSなどの教育や商品開発と一般へのブランディング・マーケティングを担当していました。

――OCEAN TOKYOを立ち上げてから一番キツかった時期はありますか?

OCEAN TOKYOを立ち上げてから知っていただくまでの期間ですね。一時期、全ての雑誌への露出ができなかったんです。そこで、SNSから発信していくスタイルに変えました。当時、SNSに力を入れている美容師さんはゼロに等しく、必ずSNSの時代が来ると思い、力を入れ始めました。そこから徐々にSNSを見て来てくれる方が増えていきました。

――3人体制での経営だと、やっぱり一人でやりたいなどの葛藤はありましたか?

むしろ「一人で」という気持ちは徐々になくなっていきました。後輩が増えれば増えるほど、スタッフの人生を背負っていくという気持ちも強くなっていったからです。それに、個々が得意なことに集中することで、一人ではなし得ない規模の拡大や成長スピードが生まれることを知ったからです。

――誰もが入りたいと言うくらい人気のあるサロンですが、客観的に見て、今のこの状況をご自身ではどう捉えていますか?

この状況はいつ終わってもおかしくないと思っています。

――それはなぜですか?

憧れで入ってきた子たちは憧れしか持たず、働いていても辞めていくだろうなと思います。自分の世代は、指名を取ることの難しさを経験してきていますが、受験者の方達はOCEAN TOKYOにさえ入れば人気になれると思っているんです。しかし、そんな簡単な話ではありません。それに、昔の美容業界では殴られ蹴られ休みがない中、夜中まで練習してスタイリストになっていたけれども、今は労働基準法と働き方改革の影響や、パワハラ問題などで叱ってくれる先輩が少なくなってきています。昔のように教育時間を取れなくなってきているし、本気でぶつかって来てくれる先輩も減っている。また、それを求める後輩も減っている。OCEAN TOKYOに限らずどこのサロンも教育の質というところが課題なんじゃないかなと思います。

――OCEAN TOKYOスタッフが持つ課題はありますか?

質を高めるということです。技術・接客・知識の質はもちろんですが、それを教育する質、それを学ぶ側の質、技術や接客や知識などの商品価値をお客様に説明する質を今以上に向上していかないといけないと思っています。そこで必要になる個人個人が一人で深く広く考えられるようにさせるという教育に力を入れています。

――この先の美容業界はどう変化すると思いますか?

SNS戦略が必須な時代となりましたが、現時点でその波に乗り遅れてしまったサロンや個人は厳しくなっていくんじゃないかと思っています。独立風潮が目立ちますが、経営は自分の売り上げが高いことが重要なわけではなく、そこで働くスタッフの可能性や売り上げを高めることができないと成り立たないので、ここでも経営者自身のSNSのパワーが重要になってくると思います。また、フリーランスで活動する美容師さんも今後さらに増えてくると思います。ここからは僕個人の意見ですが、確かに歩合は高いですが、1人でこなせる人数には限界がありますし、1日に担当できるお客様の人数も減らすことになる。新規を入れる枠も減り、新規が減るということは美容師人生の寿命を減らすことになるので、かなりリスクが高いと思います。5年後のことを考えたときにフリーランスになってよかったと思う人より、後悔する人の方が確実に増えると思います。

OCEAN TOKYOの今後の展望と教育

綺麗ごとではない欲を持ってほしい

――組織のトップに立つ上で大変だと思うことはありますか?

雇っている人数が多いのですが、みんなの将来をいいものにできるかというところですね。箱の問題だけでなく、労働時間に関して国が厳しくなっている中で、下の子たちをスタイリストまで育てるのは以前よりも難しくなってきています。実績を積む時間が足りないことと、今の子たちは打たれ弱くもあるので、限られた時間で質の高い教育をしつつ、メンタルケアまで行いながらすることに難しさを感じています。

――「怒らない」という教育方針や傾向についてはどうお考えですか?

自分は大反対です。そもそも教育者と教わる側の目的共有がしっかりできていないから「怒らない」という楽な教育方法になっていくんだと思います。お客様に満足していただくために練習や教育をする。立派な美容師になるために必要なことだと教育者も教わる側も理解し、納得しているかが重要だと思います。そして、お互いそこに愛があるか、伝えられているのか、伝わっているのかが大切だと思います。

――三科さんご自身は、OCEAN TOKYOをどのように導いていきたいですか?

自分の力で残れる美容師を育てられるサロンにしたいなと思っています。こちらは「巣立っていいよ」というスタンスで育て、育てられた側にはOCEAN TOKYOでずっと一緒に働きたい、頑張りたいと思ってもらえるサロンにすることが理想です。あとは、今後のキャリアアップの筋道を立てたいと考えています。一生プレイヤーとしてじゃないと稼げないという雇われ美容師さんのネックを解消してあげたいんです。歩合だけではない評価基準をつくって固定給を増やしたりして、定年まで満足して安心して働ける会社にしたいです。

――美容師を目指す人には、どのようなスキルや人間力を求めていますか?

大きな野心を持って欲しいですね。今の時代、TVでも本でも綺麗事ばかり並んでいますよね。僕個人としては綺麗事ではない野心を持って欲しいんです。「笑顔が見たいから」とか「感動してもらいたいから」という大義名分を掲げる学生さんがすごく多いのですが、正直、学校でクラスの子全員を好きだったかというと、そうではないですよね。誰だって得意不得意なお客様がいるし、お客様自身も笑顔になりたい、感動したいと思っているわけではなく、ただ髪が伸びたからという理由で作業的に来店するなど目的は様々。笑顔にさせる、感動させることを目標とするのが間違いではないですが、それは自分のエゴであって、やるべきことはお客様の求めたものを求めた以上に提供することで大満足していただくことだと思います。時に話さないことが満足に繋がることだってあります。

――社会人はよく「コミュ力」を必要とされますが、美容師に必要なコミュ力とは何ですか?

お客様はプロではないです。だから、カットやカラー、パーマなどの希望を伝えることも、どこがどう気になるかなどをどう説明したらいいのかもわからない方が多いです。ましてやコンプレックスを人に伝えることは中々恥ずかしいはずですよね。だからこそ、お客様から話していただく前に気づいてあげる、わかってあげるという事は大事だと思います。

――気づきの能力ですね。

それも大事ですが、こちらからの伝え方や感じさせ方も大事です。お客様が理解して納得した上でハサミを入れるためにも伝える力はもちろん必要ですし、目線の送り方や相槌の打ち方、コーミングや髪の触り方…。何となくやっている行動や言動にもお客さまは何かしら感じます。一つ一つの行動や言動で何を感じてもらいたいのか、何を感じさせたくないかの狙いはないとダメだと思います。

――どうやってそれを学べるのでしょうか?

自分は知識で補えると思っています。技術に関しても今は業界誌やSNSで広く深く学べる時代です。気づきの話でも、心理学や行動学や脳科学…。色々な分野から学んで活かす術は充分過ぎるほど世の中にはあるので。

――人と話すことが苦手だったんですよね。三科さんならではですね。

今苦手だからとか、今出来ないからとそれを避けるのではなく、欠点を長所にするまではできなくても、欠点を弱点に変えるだけでも状況は大きく変化すると思います。欲を言えば、自分の長所の活かし方を理解して武器にまでできるといいですね。

――美容師は、人と話すことが苦手な人がなれる職業というイメージがなかったです。

あくまで「苦手」というは、アレルギーのように「無理!」とまではいかないですからね。訓練次第でどうにかできると思います。

美容業界の現状と将来を誰よりもシビアに受け止めている三科さん。人脈づくりに労力を惜しまず、時代を先読みしてSNSの力に着目したことで、今のOCEAN TOKYOを築いてきました。後輩を教育する上でも、OCEAN TOKYOで生き残るためだけでなく、一人ひとりの美容師としての人生を考えていらっしゃいました。まさに、OCEAN TOKYOへ、そして後輩への深い愛情を持った方でした。

三科さんの成功の秘訣

1.人脈を広げる
2.世の流れを読む
3.自分にとっての折れない野心を持つ

▽前編はこちら▽
すべては仕事をしてお金を稼ぐために 私の履歴書Vol.15【美容師 三科光平】#1>>

Salon Data

OCEAN TOKYO Harajuku

住所:東京都渋谷区神宮前4-32-13 JPR 神宮前 432ビル 6階
営業時間:11:00~20:00(18:30)
定休日:月・第二火
三科光平 インスタグラム:@mishina.kohei
https://www.instagram.com/mishina.kohei/?hl=ja

 

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