盛るまつエクから、コンプレックス解消のまつエクへ 人気サロンから学ぶ売上アップの秘訣
まつエクといえば、「盛る」「派手にする」というイメージがいまだに根強いですが、それは一昔前の話です。まつエクの技術は基本的には変わらないものの、トレンドはメイクトレンドに引っ張られる形で年々変化しつつあり、サロン側もアップデートが必要です。
人気サロンと廃業してしまうサロンの差は今どこにあるのでしょうか。
今回は、お客様に長く愛されるサロンになるための秘訣を、一般社団法人 日本アイリスト協会で代表理事をつとめる、志太 しおん(しだしおん)さん、同協会で名誉認定講師をつとめる福井 チワコ(ふくいちわこ)さんに話を伺いました。
必要なのはコストの明確化と商材知識
まず、サロンの経営を安定化させるためにもっとも大切なことは、いかにリピートしていただくかという点です。
そのためには、技術はもちろんのこと、お客様への提案力とヒアリング能力、すなわちカウンセリングの質が重要になりますが、その前段階でさらに重要なことがあります。それは、徹底的なコスト管理と、正しい商材知識を身に着けることです。
まずコストに関しては、客単価を決める重要な要素であり、細分化して計算できているか、売上についてどのあたりを目指しているのかを明確にする必要があります。
サロンが迷走するもっとも多いケースでいうと、価格設定です。価格競争が激しいエリアの場合、強気すぎる価格設定はそれだけで負け戦となってしまいます。
しかし価格競争のみで戦った場合、利益率は下がり、回転率のみで勝負する形になってしまうため、カウンセリングの時間を削るなど、結果的に接客の質が下がってしまい、顧客満足度をあげることができません。売りが「安い」ことになってしまうので他店との差別化もできず、少ない利益率で戦うことになるので、経営を続ければ続けるほど、モチベーションも下がってしまいます。
その場合は、オプションのメニューを強化したり、店販品の販売に力を入れるなど、価格の安さを補完する戦略が必要になります。
正しい商材知識でコスト面のロスをなくす
もうひとつ重要なのが商材知識です。こちらはメニュー構成を考える際、原価としていくらかかるのかを計算するうえで欠かせないものですし、実はカウンセリングにも欠かせません。
商材知識をしっかりもっていれば、カウンセリングの際の提案の引き出しもおのずと増えますし、そのお客様に最適な商材が理解できるようになるので、コスト面でのロスがなくなります。そうすると1人のお客様に対して、最大限の利益率で、最適な提案ができるようになるのです。
アイラッシュも安いものから高いものまでいろいろあります。価格設定についても5000円・7000円・9000円など細分化が必要です。カールひとつとってもCカールJカール以外にもたくさん種類はあります。カールで値段を変えるなどの工夫もよいでしょう。
一度質のいいものを使うと、それに定着するお客様も多いのですが、まずそれぞれの商材のメリットデメリットをきちんと説明できるのかが非常に重要になります。
お客様によってはものすごい知識がある方もいる反面、間違った知識をもつ方もいるので、そのあたりをきちんとカウンセリングできればお客様の誘導も可能になります。
お客様に正しくご案内するためにも、商材知識は必須となります。
また、まつエク装着時や在庫保管する環境についてもきちんと知識をもっておく必要があります。
どんなに技術があっても、知識がないせいで仕上がりが悪くなることがあります。たとえば美容院併設のサロンの場合、排水溝やシャンプー台の近くでの施術や商材の保管は致命的です。まつエクのグルーはアルカリ性の影響を受けやすいので、カラー剤やパーマ液と相性が悪いんです。
それを知らずに、10日ほどでまつエクがとれてしまって技術に自信をなくしてしまうスタッフもいます。
目に見えないトラブルを防ぐためにも、サロンで取り扱う商材についてはしっかりと知識をつけておきましょう。
新人でも回せるお店作りと店販の強化で安定した客回転率を作る
まつエクでリピートを獲得するための重要なポイントのひとつが、きれいな状態が長もちするかどうかです。お客様としては、長もちする=来店頻度が下がるのでコスパが良く技術力の高いサロンという評価になります。
まつエクのもちについては、技術はもちろんですが、お客様の日々の過ごし方も大きく影響します。店販品を強化するにあたって、施術中にアイメイクのクレンジングの注意点を説明しつつ、サロンで扱うクレンジングをおすすめするなど客単価をあげる動線作りをしていきましょう。
普段のクレンジングについて伺ったりアドバイスをするのはほんの数分ですが、その数分で顧客満足度にも間接的につながり、なおかつサロンの評価もあがるのであれば、回転率をあげるよりもよほど利益率のよいものになります。
また、スタッフが複数人在籍している場合、スタッフの技術力に差がでないようにするのも気を付けるべきポイントです。
先述した商材知識に関連しますが、複数人のスタッフがいてその中に新人のスタッフがいる場合、品質や特徴だけではなく、装着のしやすさなども頭に入れておかなくてはいけません。
品質がよい=すべてのお客様が満足できるわけではないというわかりやすい例です。
新人のスタッフの場合、品質的なよしあしや、自分のスキルにあった商材選びは難しいので、オーナーサイドで先回りして、そういった部分まで見据えたメニュー作りをしていきましょう。きれいに装着できればお客様のリピートにもつながり、新人の場合は自信にもつながりよい循環が生まれます。
アイラッシュサロングランプリから見る人気サロンのあり方
先述したように、コスト設計や商材選びはサロンを経営していくうえで非常に大切なポイントですが、マイナス要素がないという点も人気サロンの条件として欠かせないものになります。
たとえば、いくら技術面で優秀なアイリストでも、不愛想な場合リピーターはつかないケースが多いです。また、非常におしゃれな店舗なのに掃除がいまいちだと、お客様が衛生面で不安に感じてしまいます。
自分の店舗がどのような状況であるのかを客観的に判断してもらえるおもしろいコンテストが、日本アイリスト協会が主催する『アイラッシュサロングランプリ』です。アイラッシュサロングランプリのコンセプトとしては、サロンの品質向上が第一にあります。評価についてもお客様をきちんとおもてなしできているかに重点を置いているため、いわゆる技術コンテストとは異なります。
覆面調査員が電話で予約をとって、実際に訪問して、接客してもらって審査します。技術だけではなく、トータルの満足度で評価をおこなうため、店販品のディスプレイがほこりをかぶっていたり、サロン側も気づいていなかった部分を指摘することが多いです。
報告書は各サロンにフィードバックしており、点数とコメントもしっかり戻ってきます。
まつエクの業界の中にも色々コンテストはあり、大体が仕上がりや技術の評価です。技術面のコンテストの場合は、とくにモデルを連れて参加しないといけないのが難点で、地方のサロンなど、物理的な負担が大きいせいで参加したくてもできないサロンも多くいらっしゃいます。
アイラッシュサロングランプリはエントリーのみで覆面審査員が店舗まで来るので、審査のために会場に出向くという必要がなく、地方のサロンでも参加しやすいのがメリットといえます。
色々なサロンを審査をしていて思うのは、しっかりしているサロンは混んでいますし、お客様のフォローもできています。
Wチェックをしているサロンさんもあり、何本装着したかまで教えてくださるサロンもあります。そういったサロンはカウンセリングもとても丁寧で、「より良いサービスの為に施術後にもうひとりのスタッフが確認させていただきます」と事前に説明がありました。
仕上がりのチェックも3面鏡でしっかりチェックしてもらうなど、こまごまとしたところまでサービスがいき届いています。
接客面や衛生面のように、お客様からだとフィードバックを得られないような部分にまでチェックが入るので、サロンの弱点を見つけるきっかけにもなります。
アイラッシュサロンで高い評価を得るサロンに共通していえることはお客様へのホスピタリティの高さでしょう。カウンセリングを含めた接客の丁寧さ、サロンの居心地のよさ、そのトータルバランスでお客様が安心して過ごせるサロンとなるようです。
なかなか、自分のお店の中ではトータルの満足度の分析は難しいので、お客様が心地よく過ごせているかどうかを確認するためにもアイラッシュサロングランプリのように、第三者に評価してもらうことはおすすめです。
今後のまつエク売上アップには、コンプレックス解消提案が必須
結局のところ、お客様の満足度を高めるためにはトータルバランスのとれたサロンづくりが必要となってきます。それにプラスアルファで、よりオーダーメイドに近い提案ができるかどうかで、お客様からの信頼度もよりあげることができます。
ここ数年、メイクのトレンドがよりナチュラル志向になってきたこともあり、「目を大きくみせる」ためのまつエクから、「すっぴんに自信がもてる」まつエクにシフトしつつあります。
たとえば、骨格診断などを組み合わせて似合う目元を分析する、トータルアイデザイン検査というカウンセリングを実施しているサロンもあります。近年アパレル業界や化粧品業界でもパーソナルカラー診断や骨格診断など、プロに分析してもらい、より自分に似合い美しくみえるものを見つけていくというオーダーメイド型の診断がトレンドになりつつあります。
もちろんまつエクも、目の形やまつ毛の生え方などで、お客様のご希望に沿うのが難しい場合もあります。それでも最大限そのお客様の希望に近い形で似合うまつエクの装着ができるかという点が、今後のアイリストに求められるスキルとなってくるでしょう。
幸い、まつエクの施術に必要な美容師の資格をとるにあたり、顔や頭の形を含めて提案するトータルデザインについて学びます。美容師資格が必要になったことで、目だけでなく全体を俯瞰して目元をつくっていくという感覚をもちながら施術できるアイリストが増えてきました。
サロンだけでなく、メーカー側の動きも今後注目要素といえそうです。
このナチュラル志向のトレンドとオーダーメイドの傾向はまだまだ続きますので、まつエクを装着する際にも意識していくと仕上がりの満足度もよりあがりやすくなるでしょう。
人気サロンになるためには、いかにお客様のコンプレックスを解消できるかどうかがリピートの分かれ道になるといえそうです。
※「アイリスト」は有限会社ローヤル化研の商標です。
出典元:
一般社団法人 日本アイリスト協会 アイラッシュサロングランプリ
アイラッシュサロン アンジェラ