成重松樹 interview #3:美容師、写真家として僕が写真を撮る理由がある

成重松樹さんは東急目黒線不動前駅で、美容室koko Mänty (kissa)を営んでいます。koko Mänty (kissa)(ココ マンテュ キッサ)とはフィンランド語で、koko=サイズ、すべて。Mänty=松。kissa=猫という意味。お店のコンセプトは「松樹サイズ」であること。
「松樹サイズ」とは何か?成重さん自身の言葉で紹介しましょう。「それはボクができることをやるということ。一生懸命、気持ちよくやるということです」そして、これには美容師としてということと、もうひとつ別の意味もあるようです。
成重さん、実は写真家としてもご活躍中。これまでに数々の写真集、イベントへの参加、また展示会の開催なども行っています。美容業だけでなく、なぜ写真も撮り続けるのか?その理由を伺ってみました。

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ただ撮ることがおもしろかった

カメラ

――写真との出会いを教えてください。
上京してから、中古のトイカメラを買ったり、古い物が好きなので、クラシックな安い一眼レフに一目惚れして買ったりはしていました。でもお金がなかったし、フィルム代、現像代もけっこうかかるので、そういつも自由に撮っていたわけではありません。

月に何十本も撮るようになったのは今のお店を出してから、この6年ぐらいです。独立して、自分のための時間を持てるようになったことと、ちょうどその頃に妻と出会って、「写真を撮りたい対象」ができたからです。

ただおもしろいから撮っていただけなのですが、あるときに1年くらい撮り溜めていた写真をプロのデザイナーさんが見てくれて、「写真集を作ろう」って言われたのが転換点かな。それまでは、自分の撮影したものが出版されるとは考えたこともありませんでした。

2013年、山野英之さんがデザインした成重さんの写真集「髪が裸なのでとても怖い、と君がう。」がTAKAIYAMA.incから出版され、すぐに完売。山野さんは成重さんの作品を初めて見たときのことを「不覚にも泣いてしまった。僕もこんなふうに世界を見たいし、感じたい」と書いています。

自分の中の変化

写真集

――写真集の出版はどのようなターニングポイントになったのでしょう?
自分の中に変化が起きたんです。それまでは、ある意味ピュアに撮っていたのだと思いますが、どこかで商品として売れることを意識したり、一方でそういう思いから離れなければという気持ちをもつようになりました。

また、「テーマ」も意識するようになりました。何も考えずにシャッターを押していたのが、(俺は今、何を撮っているのか?)と心の中で自分と会話するようなったというか。正確には、撮る瞬間は反射的かもしれません。ただ、撮ったあと、撮る前、つまり常日頃からそう問うようになったんです。それも写真集という形になって、人に見てもらうようになったからですね。

ただ、いわゆる「技術」については、僕はあまり意識しすぎないようにしています。技術は、くり返しの中で身につけていきたいという思いがあって。それよりも、まず好きであること。好きなことは続けていけるでしょうから。

何度もやってみて、やってみて。それでも、(技術的にこういうこともできたらいいな)ってなったら改めて本を読むようにしています。独学?いえ、きちんと勉強されている方たちに比べたら、とてもそうは言えないですよ。

写真の楽しさは撮っているときだけでなく現像を待っている時間にもあります。僕はフィルムを使っているので、例えば今日の撮影をしているときに、昨日撮った現像の結果を想像してみたり。だから撮影・現像と楽しめる状態が毎日続いてます。

成重さんは、妻のきくちゆみこさん(詩人、翻訳家)を被写体に作品を撮り続けています。美容師としての独立、ゆみこさんとの出会いが写真という「形」になり、さらに写真集や展示会、選書フェアなどのイベントへと展開していきます。

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撮り続けてきた理由

写真

――その後も数々の写真集が出ていますね。
毎年秋にあるイベント「東京アートブックフェア(アート出版に特化したブックフェア、個性豊かなアートブックやカタログ、アーティストブック、そしてZINEをつくる出版社やギャラリー、アーティストなどが国内外から一堂に集結)」に合わせて作っています。

今は出版だけでなく、僕の写真と(詩人でもある)妻の「言葉」でコラボした展示会も行っていて、それも大きな楽しみです。ここ最近ふたりで取り組んでいるテーマは「思い出すこと」。「忘れない」ではなく、「思い出すこと」が重要なんじゃないかって感じています。

忘れていたからこそ思い出す。朝起きたとき、自分が自分であることを思い出し、妻が妻であることを思い出し、今日仕事があることを思い出す。そう考えたら、「この世界は人々の思い出で形作られている」のではないかって。

2016年に展示イベント「わたしがぜんぶ思い出してあげる/あなたがぜんぶ思い出してくれる」を行った成重さんとゆみこさん。今年2月には代官山蔦屋書店が、おふたりの選書フェア「成重松樹・きくちゆみこ『思い出すための、本。』」を開催しました。

髪は切っても、その後伸びていくし変わっていくものじゃないですか?その良さはもちろんありますが、「何か形としても残したい」という欲求が僕の中にはあるんでしょうね。写真を撮り続けてきた理由のひとつだと思っています。

profile

成重松樹さん

成重松樹さん

1983年大分県生まれ。
2010年より目黒不動前で美容室koko Mänty (kissa)を営む。
2013年9月に写真集「髪が裸なのでとても怖い、と君が言う。」(TAKAIYAMA.inc)が出版され、以後は写真家としても独自のアート活動を妻のきくちゆみこさんと共に行ってきている。

salon data

koko Mänty (kissa) (完全予約制)

〒142-0061
東京都品川区小山台1-32-1リファインかむろ坂1F
TEL/FAX:03-6303-9589
http://kokomanty.com/
MAIL:mail@kokomanty.com

成重松樹 interview #1:『美容師』と『写真家』だから思えることとは>>

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