成重松樹 interview #1:『美容師』と『写真家』だから思えることとは

成重松樹さんの美容室koko Mänty (kissa)。koko Mänty (kissa)(ココ マンテュ キッサ)とはフィンランド語で、koko=サイズ、すべて。Mänty=松。kissa=猫という意味で、猫好きな成重松樹さんのお店ということになります。
オープンは2010年。koko Mänty (kissa)は、「お客さんと一緒に歳を重ねていきたい」という成重さんがひとりで対応するマントゥーマン体制。着実にファンが増え、現在はスケジュール調整もなかなか大変なようです。
成重さんは美容師としてだけではなく、実は写真家でもあるのですが、今日は美容業界での歩み、またお店作りへの考えなどを聞いてみました。

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考えていなかった独立

店内

――まずは美容師になられてから独立されるまでをお話ください
出身は九州の大分県です。地元の高校を卒業して東京の美容専門学校へ行きました。20歳で美容師として恵比寿の個人店へ就職し、アシスタントを3年勤めてスタイリストに。以来、ずっと同じお店で働いていました。

独立しようって気持ちは全然なかったんですよ。仕事については「真剣に取り組むこと」だけを考えていました。いつか歳をとったときに、どこかで、一対一で接客するような店をやってもいいかなぐらいは何となくイメージしてましたけど。

ではなぜ独立したのかっていうと唐突に聞こえるかもしれませんが、職場への不満ではなく、働き方への疑問を感じはじめるようになったからです。勤めていると、当たり前ですけど、いくら自分に時間があるからって勝手なことはできませんよね。

今日はお客さんもいないし、天気がいいから散歩へ行こうとか、本を読んでみようとか。他愛もないことですけど、してみたいことがあっても周囲の状況を見て自粛することに疑問をもつようになってしまって。そんな状態がしばらく続きました。

あるときふと(生きてゆければいいんじゃないか)って思いまして。そうしたら、「バイトしたってご飯ぐらいは食べられる。なら本当に好きなことをやっていこう」って答えが出ました。そんなときに今の物件と出会えて、ここでやろうと思ったんです。

恵比寿のお店は僕が辞めることを伝えると、信じられないことに、お客さんを紹介してくれたり、お店ができるまで面貸しで使わせてくれたりと本当に助けてくれました。だから実は今でも「独立した」という気持ちがもてません。人様のお陰で何とかやれている感覚です。

内装は、建築家の友人に助けてもらったりもしながら、4か月かけて自分でやりました。オープンしたのは2010年の12月24日です。4か月の間も家賃は発生していたので、頼んだ方が安かったかもしれません(笑)。

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自分らしいお店を目指して

成重さん

――koko Mänty (kissa)はどのようなお店でしょうか?
僕とお客さんが一対一というマントゥーマン体制なので、たぶん他のところよりお話する機会が多いかもしれません。人がいないからお客さんも話しやすいみたいです。スタイリングも会話の中で決まったり。「提案」というより「相談」のような感じです。

ひとりでやってますから予約人数は限られてしまいます。お断りし続けるのも申し訳ないので、なるべくご利用していただけるように朝は早いと7時半、たまに7時から始めることもあります(通常8時から)。夜はこの辺は暗いので、女性のお客さんなら9時には終わるようにしています。

お客さんは、今は地元の方が多いですね。広告は一切していないんです。「SEO対策をしませんか?」って営業の方が来られるのですが、「不動前、美容室」で検索する人もあまりいないと思うんですよね(笑)。

今は広告宣伝よりも、お客さんに満足していただいて、また来ていただけることを考えています。新規のお客さんが100人いらっしゃるより、ひとりのお客さんがずっと来てくれるような美容師でありたいし、お店にしていきたいので。

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人との出会い、つながりに感謝

成重さん

――成重さんにとって美容業の魅力とは何でしょう?
これは美容師ならではなのかもしれませんが、髪型によって切る順番がありますよね。ここがポイントだから、それを活かすために、どこから切っていくかとか。他の人から見えないような場所でも、料理で言う隠し包丁のように切っておくことがあるんです。

その、人からは見えない場所であったとしても、そこが綺麗に仕上がっているというのはとても重要なんです。誰も知らない、切った僕しか見られないけど、その美しさは確実に存在している。わかりにくいですか(笑)?でも、美容師になってよかったと思う瞬間のひとつなんですよ。

話は髪型から変わりますが、本当は存在してるのに見られることがない、気付かれない美しさや良さって世の中にはたくさんあると思うんですよ。そういうことを考えさせられるようになったのは美容師になったからでしょう。写真にも通じる面があります。

また、さまざまな人たちと出会えるのも美容業の特徴、いや一番の魅力かもしれない。ただ会うだけでなく、お話もたくさんできますし。人との出会い、つながりが僕にとっては何よりも大切なことなので、この仕事に感謝しています。

profile

成重松樹さん

成重松樹さん

1983年大分県生まれ。
2010年より目黒不動前で美容室koko Mänty (kissa)を営む。
2013年9月に写真集「髪が裸なのでとても怖い、と君が言う。」(TAKAIYAMA.inc)が出版され、以後は写真家としても独自のアート活動を妻のきくちゆみこさんと共に行ってきている。

salon data

koko Mänty (kissa) (完全予約制)

〒142-0061
東京都品川区小山台1-32-1リファインかむろ坂1F
TEL/FAX:03-6303-9589
http://kokomanty.com/
MAIL:mail@kokomanty.com

成重松樹 interview #2:仕事をするならもっと自分を楽しませていい!>>

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