注目アーティストTHE REMMY・イセキ リエさん 息の長い美容師を目指して #1
2015年、裏原宿にオープンした「THE REMMY」(ザ・レミー)は、山下浩二さん率いる「Double/HEARTS」(ドゥーブル/ハーツ)で長年に渡り活躍した、上田竜二さんとイセキ リエさんが経営するサロン。
アシスタント時代からかわらない可愛らしい風貌のイセキさんは、ナチュラルなショートやボブスタイルに定評があり、数多くの女性美容師の中でも秀でた存在。あらゆる作品に彼女のセンスやエッセンスがにじみ出ている、才能溢れる方です。
そんなイセキさんが尊敬する山下さんの下を離れ、夫婦での経営に挑戦した経緯についてお聞きします。
師匠に「そろそろ自分たちでやってみたら?」と言われて
――イセキさんはHEARTSのスター選手という印象でしたが、なぜ独立したのでしょう?
「そんな!そもそもその頃は特に独立する気はなかったんです。あるとき山下さんから“そろそろ自分でやってみなよ”と背中を押していただいて(笑)。
それが、オープンする半年ぐらい前の出来事です」
――山下さんのアドバイスなのですね。珍しいパターンですね。
「ですよね(笑)。スタッフがふたりも抜けるとなると普通はイヤなんじゃないかと。それなのに師匠が背中を押してくれるなんて、本当に懐が深い方です」
――え~。そんな独立もあるのですね。
「私自身も思うのですが、上の世代がいつまでも残ると下にチャンスがなくなるじゃないですか。下の子の成長のためにも、この時点で独立するのがベストだったと思います。
とはいえ「THE REMMY」は2015年の4月にオープンしたのですが、同じ年の3月20日までHEARTSで働いていたんです(笑)。
サロンに立ちながら新しいサロンのスタッフを集めたり、内装のことやホームページの作成などを手掛けたりと、たくさんの方に協力してもらいましたが、それでもバタバタでした。
独立にあたり、山下さんから言われたアドバイスが「一からスタッフを育てた方が自分たちの成長につながる」ということ。だから短期間で面接を繰り返して大変でしたね」
そんな目まぐるしい日々を経て、「THE REMMY」はイセキさんのご主人である上田竜二さん、イセキさん、4人のアシスタントの計6名でスタートする。
経営は主人に任せ、内装や作品などデザインに関わることは私が担当
――ご夫婦での経営って、実際のところどうですか?
「う~ん。でも、経営は主人が行っているので私は口出ししません。同業者ですから、同じことを二人で行うと意見が対立したとき、どちらも引かないじゃないですか。だから、経営は主人に任せていますね。反対にホームページなどに掲載するヘアの作品やスタッフ教育などは私が行っています。あと、お店の内装なんかも私が手掛けています。
私たち夫婦って好きなものや作るものが正反対なんです(笑)。私はナチュラルでシンプルなものが好きなんだけど、主人はモード感のあるデザインが好み。違うタイプだから、運営もきっちり分けて行うのがいいみたいですね。
あと、共同経営ってお金の問題が出た時に大変そうなイメージですが、私たちは夫婦。夫婦だとお財布はひとつだから、金銭面でトラブルになることはないですね」
――24時間一緒だと、家に帰っても仕事の話をしたりするのですか?
「帰宅時間も違うので、それはないですね。しかも、美容師になってからは家には寝に帰るだけです。食事も外食になってしまうし、ふたりの時間はないですね。これはHEARTSにいた頃となにもかわらないかな」
山下さんからは息の長い美容師になろうね、と言われて育った
昔から可愛らしい雰囲気で、ずっと変わらない印象のイセキさん。こう見えて今年で40歳になるそうです。
――原宿に出店した理由はなんですか?
「この辺で仕事をしていた美容師さんでも、今は違うエリアに出店する人も多いみたいですね。でも、原宿で育った私にとってはそれ以外の場所が思いつかないんです。そもそも美容師友達がいなので、情報もなくって(笑)。
結局、私にとってはお客様が全てですから、お客様さえよければいいんです。私の担当する方は30歳以上の大人の方が多くなっていますが、ここに来て下さるだけで光栄です」
――出店するにあたり、山下さんからアドバイスはありますか?
「アドバイスというか、自転車でたまにふら~っと立ち寄ってくれるんですよ。うれしいです。それと、出店するから…というわけではなく、山下さんからは〝息の長い美容師になりなさい”と常々言われて育ちました」
――今はインスタなど、SNSでパッとスターになる人もいますね。
「そもそも、私はその分野は疎いタイプで。ほとんど活用していません。それより技術を磨くことを大切にして今がある感じ。技術に真摯に向き合っていないと、お客様にその姿勢って不思議と伝わってしまいますから。美容師ですから、とにかく技術。楽して成功なんて、ありえませんからね」
おっとりとしていてシャイな性格のイセキさんですが、実は2016年にはJHA(ジャパン ヘアドレッシング アワーズ)でグランプリを獲得しています。エロティシズムというテーマでありながら、あえて“すっぴん少女”のショートヘアスタイルを打ち出したイセキさん。2回目のインタビューでは、その理由や戦略についてお聞きします。
取材・文/小澤佐知子
撮影/田中大三
Salon Data
THE REMMY(ザ・レミー)
HEARTS/Doubleに17年間所属した上田竜二さんとイセキ リエさんご夫婦によるサロン。カットひとつで顔の見え方や印象が変わることを軸に「本物のカット」を提供。レザーによる繊細でナチュラルな質感に仕上がる。店内はNY風のユニセックスな印象で、エントランスにはイラストレーター小幡彩貴さんの作品が描かれている。原宿という場所にありながら、大人世代も多く通うこだわり感の詰まったおしゃれサロン。
http://www.the-remmy.tokyo/
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