【エステ業界動向】高まる専門店需要!分単価を高めるエステメニュー戦略とは

毎年、何百何千ものエステサロンが生まれ、たった1年の間に、そのうちの実に60%のサロンが倒産していきます。

エステサロンというのは、医療機関や鍼灸院と違い、施術に対して資格の保有が必要ありません。気軽に参入できる分野であるが故に、競合が非常に多く存在する業種です。その中でも生き残るサロンを作るためには、他社との差別化が絶対条件となります。

なおかつ、現在は慢性的な人材不足が続いており、人口減少が続く限り今後も人材不足は続きます。ターゲットとなる人数が減り、なおかつ働き手が少なくなるということは、より営業効率の良い戦略を考える必要があるのです。

エステサロンのマーケティングやブランディング戦略について、船井総合研究所でエステサロン専門のコンサルタントを務める、楠本文哉(くすもとふみや)さんにお話を伺ってきました。

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顧客が求めるのはオンリーワンサロン、必要なのは差別化メニュー戦略


これだけ多くのサロンが開業していますが、果たしてエステ自体はどの程度需要があるのでしょうか。まず、エステサロンの利用経験についてですが、ホットペッパービューティーの調査データによると、エステに行ったことのある人の割合は60%近くで、全体の半数ちょっとという数字になっています。

しかしながら、エステに行ったことがない層が美容に関心がないかと言えばそうではありません。メイクとフェイスデザインのケサランパサランの行った「自分自身の悩みやコンプレックス」に関する全国意識調査の結果を見ると、男性が69.0%、女性は83.3%が自分自身に何かしらの悩みやコンプレックスを抱えています。

悩みやコンプレックスの内容として最も多かったのは、

1位:顔(65.6%)
2位:体型(52.9%)
3位:性格(43.8%)
4位:脚(30.8%)
5位:ウエスト(23.5%)


このアンケートでは、顔というくくりですが、各パーツに分けるとコンプレックスはもっと細分化できそうです。例えば、目について掘り下げてみると、一口に目の悩みと言っても、これだけそれぞれの悩みは分かれてきます。

このように、悩みのジャンルは非常に幅が広く、パーツを極めるという方法も一種の差別化になります。

この悩みの大多数を見てわかるように、目についてはサイズが小さいことにコンプレックスを感じ、ぱっちり二重に憧れている方が多いことがわかります。

目の形を変えるとなると整形になってしまいますが、例えば眼筋のマッサージや、顔のリフトアップ施術などで、目元をくっきりさせることに特化する施術をすると、他店との差別化になるアプローチができます。

他にも、フェイシャルであれば、小顔特化、美白特化、毛穴特化、それぞれアプローチも来る客層もまったく違います。サロンの中で軸になるものを決めておくというのはすごく重要になります。サロンの特性がニッチな分野であればあるほどマニアックにはなりますが、特定の需要にささった場合、確実なリピーター客の囲い込みに成功するのです。

なんとなくオールマイティーというサロンよりも、確実に結果を出せるものがあるサロンの方が圧倒的に有利になりますので、必ず得意なジャンル・特性は打ち出していくようにしましょう。

専門店化することで集客力を高める

専門化することのメリットは集客の際に大きく表れます。現在、集客の成功はWEBが握っているといっても過言ではありません。

以前は紙やフリーペーパーでの広告が中心でしたが、3年前を機に、チラシ・フリーペーパーはほぼ0になりました。今は1万件配布して3件くるかどうか位のレスポンスです。ホットペッパーが費用対効果は良いのですが、あと月に20名ほしいなというときにHPやリスティング広告をプラスして対策すると、エステの場合確率的には元が取れることが多いです。

サロンを専門化すると、このWEB集客が非常に相性がよくなります。SEO対策という言葉を聞いたことがあると思いますが、ある程度の規模でサロンをやっていないとそこまではなかなか気が回りません。しかしながら、自分でも努力できる部分はあるのです。

例えば「フェイシャル 東京」という検索キーワードでgoogle検索でヒットする件数は約 11,100,000件です。それに対し、「目のクマ エステ 東京」の検索で約 2,760,000件。「アイケア エステ 東京」だと約 529,000件になります。フェイシャルで検索した場合だと1,000万の中にうもれてしまいますが、アイケアであれば50万件まで減ります。

ニッチな悩みの場合は、ニッチなキーワードで探してくることも多いので、ホームページやブログにそういったキーワードが多用されていると検索に引っかかりやすくなり、お客様に見つけてもらいやすくなります。これまでWEBにあまり力を入れていないという場合も、ブログやSNSで多少強化はできるので、意識することをおすすめします。

商材目線での差別化戦略


差別化できるのはメニューだけではありません。使用する商材、機械でも他社との差別化や、営業の効率化は叶うのです。最近では、顧客側がWEBで色々と検索をかけられるようになったので、知識豊富なお客様がたくさんいます。エステマニアのお客様になってくるともはやオタクの域で、スタッフよりも詳しいくらいです。

例えば先述したWEB集客ですが、ホットペッパービューティーのサイト内ではキーワード検索がかけられます。

痩身専門で検索をかけてくるケースが非常に多く、ホットペッパービューティーのキーワード検索では「ハイパーナイフ」というラジオ波の機械の名称での検索数が昨年はかなり多かったです。顧客側で具体的な機械の名称を検索をかけるケースも結構あります。

ハイパーナイフ自体も業者向けでの展示会でも大きく出展しており、メーカー側のPRサポートが大きいこともありますが、その機械を導入するだけで検索される数字があがるということは十分考えられます。他にも、エンダモロジーやインディバのように、ある程度知名度がある機械になってくると機械の名称で検索をかけられることも多くなります。

他にも、小顔矯正や筋膜リリースのようにその年のトレンドで特定のキーワードが検索されることも多く、サロン側は定期的にトレンド要素もチェックするようにしましょう。

分単価の上がる高速脱毛機

ここ最近では、女性の脱毛専門サロンが飽和状態になりつつあります。脱毛はエステサロンだけでなく、美容皮膚科系のクリニックも競合になる手ごわいジャンルです。エステとクリニックでは価格という部分で圧倒的にエステが安く有利ですみわけができていたのですが、現在はクリニックの低価格化が進み、金額面での差がかなり縮まってきています。

そうすると、医師という専門家に軍配があがりやすくなります。エステでは、一時期飽和状態だったところに、高速脱毛という新たな種類の脱毛機が発売され、そちらがすごい勢いで導入サロンを増やしました。

SHR脱毛という方式の脱毛で、ジェルの上から広範囲に弱めの光エネルギーを連続して当て、熱を「毛包」に集中させて脱毛する新しい美容脱毛です。痛みはほとんど感じず暖かさを感じる程度です。従来の脱毛は毛根のメラニン色素をターゲットとしていたので、ゴムで弾かれたような痛みが伴いましたので、痛みの改善だけを見ても大きなメリットです。

何社かでていますが、例えばLUMIXという高速脱毛機は、なんと全身の脱毛施術時間が約20分。導入サロンでは回転率は何と今までの10倍にもなっているそうです。人の採用がなかなか難しく、店舗の回転率を上げたい場合は、こういった機械をチョイスして回転率をあげるということも正解でしょう。産毛レベルの細い毛や色素の薄い毛にも反応するそうなので、毛残りによるクレームがでにくくなるのもメリットでしょう。

顧客側からしても、今まで全身脱毛の場合3時間程度拘束されていたのが、1時間未満で終了するというメリットがあります。

脱毛単体で見ると、現在は医療脱毛の勢いの方が強いです。最近では、アリシアクリニックのように、脱毛専門を謳うクリニックも増えてきており、医療機関の一番のハードルであったコスト面が、低価格に移行してきており、エステの脱毛とのコスト差が埋まりつつあります。

エステ脱毛は医療脱毛に顧客を持っていかれる可能性が高いです。湘南美容外科のように低価格かつ広告宣伝をしっかり行うクリニックをはじめ、脱毛は医療機関のコンサルタントも力を入れており、地域の皮膚科でも脱毛機導入で数百万売り上げが変わるケースも出てきています。エステ業界の脱毛については医療機関の脱毛の低価格化がどの程度進むか・広告の規制やホットペッパービューティーのような広告媒体が増えてくることで今後の市場は大きく左右されるでしょう。

つまり、エステ対医療機関の脱毛では、エステはコスト面以外で勝負が難しいので、医療機関の低価格化がさらに進むと、利益を圧迫する可能性があります。そういった点で、高速脱毛機など、なにかしらの差別化を行うのが賢明と言えるでしょう。

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他社との差別化をしているメニュー構成例


トレンド要素も把握しつつ、顧客の潜在ニーズを引き出していくのはお店のブランディングをする上で非常に大事な要素です。エステに行かない人の中には金銭面の問題だけではなく、行くことが面倒くさい、どう選んでいいかわからない、という層も一定数います。

しかし、先述したコンプレックスへの調査で分かるように、なにかしらのコンプレックスというのはみんな抱えています。そういった潜在ニーズを持っているけれどエステに来ていない顧客を引き出すことができるか、その点も他社との差別化で重要なところでしょう。

例えば小顔矯正も近年人気の施術のひとつです。最近人気のspeed小顔という、小顔特化のサロンを例に考えてみましょう。

一昔前まではフェイシャルと言えば美顔やアンチエイジングがメインで、小顔のケアになるとリンパマッサージでのムクミとりが中心でした。韓流ブームの際コルギという骨と筋肉に圧をかけて骨の位置を矯正するという手技のものが流行ったこともあり、その頃から骨目線での痩身が流行りつつあります。

昔は骨や筋肉のアプローチの場合柔道整復師や鍼灸師の国家資格保有者を抱える整骨院がやるものという認識がありましたが、最近では治療にならない範囲で、エステでの骨へのアプローチが多く見られます。

このspeed小顔は「顔の歪みを矯正することで、顔のむくみやたるみにアプローチする」をコンセプトに、新規体験も20分1,500円というかなりお手軽な料金で集客しています。こちらのサロンは「時短」で結果を出すという部分も他社との差別化になります。

先述した高速脱毛の例でもわかるように、時短で効果を出せれば、顧客も予定を組みやすい上予約もとれやすいので通いやすくなり、店舗側としても回転率があがり営業効率が上がるのでWINWINなのです。この小顔矯正のよいところは、オイルマッサージと違い、化粧を落とさなくても良いというのがメリットでしょう。せっかく時短で結果が出ても、その後結局ドライヤーで髪を直したり、1から化粧をするとなるとサロンの中のドレッサースペースで時間が大きくとられてしまい意味がなくなります。

お客様側からしてもエステの後に予定があるとまた化粧をしなくてはいけないので、そのままできると予定の隙間に入れられます。時短で予定に響かず、かつ結果がでるという点が、手軽にエステに通いたい女子に人気の秘訣と言えます。もちろん、このspeed小顔はSNSの戦略や、芸能人の使い方も非常に上手なのでそういった点でも若者向けのマーケティングの成功例と言えます。

伸び悩むメンズエステ市場、今後のメンズサロンの経営戦略


エステは女性のイメージが強いですが、メンズの市場も最近は活性化してきています。メンズの場合、集客はほぼ、お腹周りの痩身と脱毛の需要と言えます。特に、ヒゲ脱毛の需要は高いのですが、エステ市場としてはまだまだ苦戦しているようです。

メンズエステの市場としては全体で200億ない程度です。規模としてはまだ導入期にもさしかかってないですね。まず、入口としてはヒゲ脱毛でしょう。そこから全体に伸びるかどうかというところでしょう。男性はジムの市場の方が大きいと言えます。

暗闇でのフィットネスなど、エンターテイメント性の高いジムも増えてきました。男性の場合だと、ライザップをはじめとした10万円以上するパーソナルトレーニングや、都心部ですと富裕層向けのラグジュアリーなスポーツジムもいくつか増えてきています。そういった富裕層向けのジムの場合、24時間運営やラウンジの完備など、顧客が満足できるサービスを充実させ、付加価値付けをしています。

そういった富裕層向けのジムに見られるように、ターゲットを絞り込むというのは非常に重要です。富裕層向けのジムは普通のパーソナルトレーニングジムに比べて6倍くらいの金額設定ですが、それでも集客はできています。エステについても、ある程度ジャンルを絞り込んだ方がうまくいく可能性はあります。

男性の場合は筋肉量も多いため、自分で運動することでダイエットの効果も出やすく、ボディメイクも兼ねてジムが人気があるため、エステで痩身という視点になかなかいかないようです。
また、脱毛についてはメンズの市場もクリニックが非常に力を入れていますが、エステ脱毛は徐々に伸びています。

医療機関でもエステサロンとほぼ変わらない金額で集客することが増えてきて、広告宣伝に関しても、知名度の高い芸能人を使い、テレビ・WEB・雑誌・電車の中吊り広告と、かなり力を入れて宣伝していますが、医療機関の脱毛の場合は出力が強いため痛いというデメリットがあります。

男性の方が痛みに弱い方が多いことと、ヒゲ脱毛の場合特に毛が太いので痛みが強く出やすい点で、痛みの少ないエステ脱毛に流れてくるケースもあります。そのため、メンズエステの伸びしろとしては、脱毛が一番期待できるでしょう。また、男性の場合だと付加価値としてのエステは需要がありそうです。

最近では、ジムの施設に併設して筋膜リリースの施術を受けられる施設や、EMS(筋肉運動)の全身スーツを着て、負荷をかけながら運動するような施設も見られます。エステと併用することでより効果的にボディメイクができるので、一部のマニアックなメンズ向けに、差別化された複合型エステも需要があるといえるでしょう。

他にもたばこを吸う男性の場合ホワイトニングの需要があったり、エステ×○○という形で、別のジャンルと組み合わせて訴求するという点も他社との差別化につながるでしょう。男性女性の市場問わず、今エステ市場についてはオールマイティーよりもよりパーソナルに悩みを解決してくれるサロンが求められていると言えそうです。

出典元:
ホットペッパービューティー総研「エステサロン調査」
株式会社ケサランパサラン 自分自身の悩みやコンプレックスに関する意識調査
マイナビニュース 目にコンプレックスがある女性の6割が「大きい目になりたい」と回答(ケサランパサラン調査結果より)
株式会社エストラボ ルミクス脱毛
speed小顔
株式会社ケサランパサラン 「目の悩みとコンプレックス」についての調査結果(2016年4月4日発行のリリース紙面)

Profile

楠本文哉さん Fumiya Kusumoto

船井総合研究所の中で最もエステ業界に精通し、船井総研の中でもエステ業界のクライアントを最も多く抱えるエステ専門のコンサルタントである。 得意とするテーマは、「WEBを活用した集客・見込み客の最大化」、「多種多様な業種からのエステ事業への新規参入支援」である。 現在は、年商2000万円の企業から年商30億円の企業クラスまで、年間300回を超える個別コンサルティングを全国で行っている。 常に地域1番店を作るためのコンサルティングは顧問先様から好評を得ており、個別コンサルティングの依頼は1年先まで埋まっている状況である(2019年1月現在)

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