介護職 3年目の壁


求職者が少ない上に離職率が高いと言われる福祉・介護業界。その中でも特に離職率が高いのが、働き始めて1年目、3年目と言われています。介護労働センターによる調査では、平成25年10月1日から平成26年9月30日までの1年間に介護の仕事を辞めた19,246人のうち、勤務1年未満の離職者が40.1%、勤務1年以上3年未満の離職者が33.8%を占めており、全離職者の73.9%が3年以内に離職していることがわかります。

介護職員の離職状況

■勤務年数によって異なる離職理由

介護職員になって1年目の人であれば離職理由の上位にある「職場の人間関係が悪くチームワークが良く無い」「企業理念・経営(サービス)方法に不満がある」「給料が低い」などの理由で転職することに共感はできます。
しかし、3年目に入ってからこれらの理由で施設を辞めるというのはいかがなものでしょう。手取りが少ないことや企業理念が理解できない問題は1年目に気づくことでしょうから。
実は3年目の介護士が離職する理由は上記のものではなく、彼らには別の悩みや疑問が生まれるというのです。3年目になった介護士の多くは「給料が上がらない」「結婚できない」「責任が重くなった」「介護福祉士試験の不安」などの悩みが肩にのしかかってきているのです。

■給料が上がらない・結婚できない

介護職3年目の人が思う不満の1番が「給料が上がらない」ということです。彼らからすると「上がらないとは聞いていたけど、まさかここまでとは」と言った感じなのでしょう。では一般企業と比較して、介護業界の給料の上がり具合はどうなのでしょう? 以下に厚生労働省による「平成27年賃金構造統計調査」から算出した、民間一般業界と介護業界の勤務1年目と3年目の平均年収(ボーナス含む)推移をグラフに記しました。

勤続年数による平均年収推移
グラフを見てひと目でわかるように、介護職は平均年収も上昇率も一般企業に比べて低いことがわかります。民間一般業界の勤務1年目の平均年収が278万円であるのに対し、介護業界では225万円、3年目は一般企業の平均年収が363万円であるのに対し、介護業界は271万円です。上昇率も一般業界は1年目→3年目で130%、介護業界は120%であり、介護業界の給料は低く上昇率も少ないことがわかります。
「結婚できない」というのはこの「給料が低いこと」が原因のひとつであり、恋愛から結婚まで一歩踏み出す勇気が出ないとのことです。確かに、低収入では家族を養っていけるかどうか不安になりますよね。超高齢社会対策の仕事をしている介護職員が少子化に加担してしまっているのはなんとも皮肉な話です。
しかし、中にはこのグラフを見て「あれ? 介護職の給料って意外と多い」と思う人もいるようです。これらの数値はあくまでも平均なので、当然給料が低い一般企業もあれば給料が高い介護職もあります。「アメリカ人は日本人に比べて背が高い」とは言っても、身長160cmのアメリカ人もいれば身長190cmの日本人がいるのと同じ理屈です。
このグラフを見て「私はもっと少ない」「私は平均くらいかな」と思った3年目の介護職員のあなたは、もしかすると高給職に転職するチャンスかもしれません。

■責任が重くなった

3年目の社員というのは組織の中核として期待されます。この節目に覚えることも増え、“新人の育成”や“現場の業務改善”“リスクマネジメント”などのスキルを身に付けることになります。勤務3年目という短さで特養やグループホームのユニットリーダーやサブリーダーを任されることも珍しいことではありません。リーダーの責任の重さはもちろん、サブリーダーはリーダーの補佐役としてリーダーの欠けている部分を補ったり、施設内の雰囲気が悪くならないようにフォローしたりなど大変です。3年目になると、この責任の重さに耐えられずに辞めてしまう人が多いようです。
確かに3年目で新人に講義や研修を通じて教育し、新人の疑問に的確に回答しなければならないというのはかなりのプレッシャーでしょう。たった2年の先輩でも、リーダーやサブリーダーは新人からすれば介護の専門家であり知恵袋であり、疑問をなんでも解決してくれる人のように見え、頼りにされてしまいます。
中にはボランティアや実務を経験した新人もいれば、新卒で無資格未経験、社会人経験もまったく無く、何もわかっていない新人もいます。
いろんな種類の人間に教育し、成長させなければならない。施設内の不測の事態に対応しなければならない。確かに大変ではありますが、これら責任の重さに耐えて働くことにより責任感が強くなり、給与などの待遇も良くなるので、それを理由に簡単に辞めてしまうのは考え物です。

■介護福祉士試験の不安

介護福祉士の受験資格は「介護職員として3年以上の従事(実働日数540日以上)」と決められています(福祉系の学校に通っていない場合です)。つまり、勤務3年目の人と言えば、介護福祉士の受験資格獲得まで1年もないのです。受験まで1年もないわけですから、できれば働く時間を勉強時間に費やしたいと考えます。しかし、離職して受験勉強をすると条件である「介護職員に3年以上従事」を満たすことはできません。そこで、1日に数時間(8時間未満)の勤務でも雇ってくれる施設にアルバイトとして転職するのです。
受験は1年に1回しかありません。試験に落ちるとまた1年間待たなければなりませんから、仕事よりも勉強に重点を置きたい気持ちはわかります。そこで新人教育を命じられて忙しくなるとなおさらです。

■介護福祉士受験における変更点

ここで、第29回(2017年1月実施)以降の介護福祉士 試験の変更点についてご紹介します。

<実務経験ルート>
【1】実務者研修修了の義務
これまでは、「3年以上の実務経験」で受験資格を得ることができました。しかし、今後は「3年以上の実務経験プラス実務者研修を受講し修了」することが必要になります。

【2】実務者研修における受講期間の短縮
実務者研修の期間は通常6か月(450時間)ですが、それまでに修了している研修によって、450時間の受講を満たさなくても研修修了が可能となります。所定の研修と、それによる必要受講時間を以下に記します。

修了した研修 必要受講時間 免除時間
介護職員初任者研修 320時間 130時間
介護職員基礎研修 50時間(医療的ケア) 400時間
訪問介護員研修1級 95時間 355時間
訪問介護員研修2級 320時間 130時間
訪問介護員研修3級 420時間 30時間


【3】実務経験3年未満でも「見込み受験」が可能
これまでは「筆記試験当日(毎年1月)までに実務経験が3年以上あること」という決まりでしたが、見込み受験の制度により、「年度(3月)末までに実務経験3年以上を満たす場合は受験可能」となりました。これまでは2月から働き始めた人は、受験までに約4年間待たなければいけなかったのですが、これにより1年早く受験できるようになったのです。

<養成施設ルート>
これまでは養成施設を卒業すれば国家試験を受験しなくても介護福祉士の資格を得ることができていたのですが、2022年からは国家試験の受験が必要になります。
2017年~2021年までは新システムへの移行期間であり、この間に養成施設を卒業する方の国家試験の受験は任意です。
この期間中については未受験や不合格の場合でも、養成施設卒業後の5年間は介護福祉士を名乗ることができます。また、この5年の間に国家試験に合格するか、連続して介護職に従事していれば6年目以降も介護福祉士の資格を保持できます。

第28回(2016年1月)試験からは、社会福祉士の国家試験日と重ならないように変更されていますので、介護福祉士と社会福祉士の同時取得も可能となっています。

■介護業界は転職経験者が多いから、転職もOK!

これまで紹介して来たように、介護業界はいろんな理由で1年目、3年目に離職・転職する人が多いことはわかっていただけたと思います。「でも、たった1年や3年で辞めて、新しい仕事が見つかるの?」と不安に思う人もいるでしょう。しかし、超高齢社会の現在、介護業界は常に人手不足状態にありますので、一般企業に比べて経験や年齢に関わらず転職しやすい業界であると言えるでしょう。
ただ、人手不足であるため簡単に退職できない傾向にもあるようです。通常、一般の会社は退職の一か月前に伝えるというのがルールになっていますが、介護職の場合は新しいスタッフを採用するまでに時間がかかってしまいます。常にギリギリの人員で運営しているため、一人辞めただけでも他のスタッフにとってはかなりの負担になってしまいます。できるだけ早く、二か月以上前には退職の意思を伝えて、円満な退職をしましょう。

■まとめ

仕事を辞めてしまう人が多い「3年目の壁」。彼らが辞めてしまうのには「給料が上がらない」「結婚ができない」「責任のある立場への重圧」「介護福祉士試験への不安」など様々な理由があります。
「責任のある立場への重圧」に関しては、それ自体が仕事内容を認められてきた証であるため対処が難しいところではありますが、それ以外については転職することで対処できることがほとんどです。
超高齢社会の日本の介護業界は常に人手不足であり、一般企業に比べて転職が容易であるため、求人広告の募集要項や待遇をしっかり調査し、やりがいのある職場を探しましょう。



<リジョブ介護 人気カテゴリ>
職種ガイド 職種ガイド 介護施設ガイド 介護施設ガイド 介護問題 介護問題 介護ニュース 介護NEWS 介護インタビュー 介護のひと オススメ求人 オススメ求人

介護のバックナンバーはこちら

家族同士で支え合い、施設に助けられた14年。

島田洋七さん 島田洋七さん タレント:島田洋七さん 1950年2月10日生。72年に漫才師としてデビュー。75年、洋八とのコンビでB&Bを結成。80年代の漫才ブームの先駆者となる。「もみじまんじゅう」のギャグが […]

2017/07/14

人生の最後を幸せにする仕事、それが介護なんです。

上条百里奈さん 介護福祉士、モデル:上条百里奈さん 2003年に中学の職業体験で介護を体験、感銘を受ける。高校在学中にホームヘルパー2級の資格を取得。白梅学園短期大学福祉援助科に進学し、介護福祉士資格を取得。卒業後、老人 […]

2017/07/14

神奈川のおすすめ介護求人14案件

神奈川のおすすめ介護求人をご紹介!介護福祉士、ホームヘルパー、機能訓練指導員、理学療法士など多数!リジョブの営業スタッフが実際に会社や事業所に伺い、そこで感じたことやお会いした代表の方の印象なども掲載しています。介護の求人を探すなら「リジョブ介護」。

2017/05/31

東京都のおすすめ介護求人

東京のおすすめ介護求人52案件

東京のおすすめ介護求人をご紹介!介護福祉士、ホームヘルパー、機能訓練指導員、理学療法士など多数!リジョブの営業スタッフが実際に会社や事業所に伺い、そこで感じたことやお会いした代表の方の印象なども掲載しています。介護の求人を探すなら「リジョブ介護」。

2017/05/26

埼玉のおすすめ介護求人14案件

埼玉のおすすめ介護求人をご紹介!介護福祉士、ホームヘルパー、機能訓練指導員、理学療法士など多数!リジョブの営業スタッフが実際に会社や事業所に伺い、そこで感じたことやお会いした代表の方の印象なども掲載しています。介護の求人を探すなら「リジョブ介護」。

2017/05/17

大阪のおすすめ介護求人1案件

大阪のおすすめ介護求人を一挙にご紹介!リジョブの営業スタッフが実際に会社や事業所に伺い、そこで感じたことやお会いした代表の方の印象なども掲載しています。実際に接している営業スタッフだからこその見えたこと、感じたことを就職 […]

2017/05/08

職種別の記事まとめ