介護業界は離職率が高いことでも有名です。離職理由としては「給料が低い」「仕事(労働条件)がキツイ」などがほとんどだと思われがちですが、実態はそうではありません。確かにこの業種は“薄給でキツイ仕事”という声を聞きますが、仕事を辞めるとなるとそこの部分が原因となることは少ないのです。
上表は介護の現場で働く人に聞いた「以前の職場を辞めた理由」をまとめたものです(介護老人センター 平成26年「介護労働実態調査」より)。これによると転職理由の第1位は、4位の「薄給」や10位の「仕事内容」を抑えて「職場の人間関係」によるものなのです。
しかし、「職場の人間関係」とひと口に言っても職員同士の関係、入居者同士の関係、職員と利用者の関係など様々ですが、離職するほどの理由になる問題は職員同士の人間関係がほとんどのようですので、ここでは職員同士の人間関係の実態と対策のコツについてポイントを絞ってご紹介します。
人間関係の問題というのは職種問わず、一般企業のサラリーマン間にもよくある問題です。中でも介護の業務はスタッフ同士の連携・チームワークが重要視されます。しかし、介護の世界は女性の割合の方が多いことが原因で、チームワークがうまく機能しないというのです。「女性が多いと人間関係が悪いの?」と思われるかもしれませんが、女性の場合は派閥ができることが多く、大きな施設になるとそういった派閥がいくつかできます。その中で“違う派閥の人”や“どこの派閥にも属さない人”は、陰口を言われたり酷い時にはパワハラ(虐待)を受けたりするのです。
では具体的にどのような人間関係のトラブルがあるのか、実際の介護職員の体験を元にご紹介します。
ここに上げた例以外にも、たくさんの事例があります。
・パワハラ(殴る・蹴る・怒鳴る)
・嘘の仕事内容(連絡事項)を伝える
・雑用(みんなが嫌がる仕事)だけをさせる
・無視する
・私物を勝手に捨てる(隠す)
などです。まるで子どものいじめのようなものもありますが、実際このようなことが行なわれている介護施設があるのです。
どういった人がいじめるタイプ、いじめられるタイプなのでしょう。
例えば、誰にでも優しくて、言葉遣いが丁寧で、人当たりが良くて、仕事ができるAさん。
そういう人は当然上司からは高く評価され、後輩や利用者からも好かれます。Aさんは決していじめられるタイプではないはずです。
しかし、先輩の立場であるにも関わらず仕事ができないBさんがその人を見たらどう思うでしょうか。その先輩BさんはAさんの評価を低くするためにAさんを陥れ、自分のアピールをする可能性があるのです。もちろん、全員が全員そんなことをするわけではありませんが、ここで言いたいのは「優しくて人当たりが良くて仕事ができるような、完璧な人でもいじめられる可能性がある」と言うことです。しつこいですが、Aさんはいじめられやすいタイプではありません。先輩Bさんがいじめやすいタイプなのです。
では、いじめやすい人の特徴、いじめられやすい人の特徴をそれぞれ見ていきましょう。
<いじめやすい人の特徴>
・自分に自信がない人(前述の先輩Bさんのようなタイプ)
・仕事に対するプライドが高い人
・周囲に頼られることに生きがいを感じている人
・私生活での不満が大きい人
・リーダータイプに憧れる人(決してリーダータイプではない)
・褒められることが大好きな人
<いじめられやすい人の特徴>
・自己顕示欲が強い人
・逆に意思表示(意見)がはっきりしない人
・注意されると黙ってしまう人
・オドオドした話し方の人
・腰が低すぎる人
・外見によるもの(顔・体型・髪質・ファッションなど)
仕事場の人間関係で困った時に解決できる方法は限られており、大きく「我慢する」「職場環境を改善する」「転職する」の3つの方法に分けられます。では、それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
┃我慢する
会社の先輩に無視されても、後輩も一緒になって暴言を吐いて来ても“我慢”、もしくは“笑顔”で対応します。しかし、そう簡単ではありません。酷いいじめに対して耐え抜くためにはかなり強い精神力が必要です。「なんで、私ばっかり……何も悪いことしてないのに……」と思うと更に悩みが深くなってしまいます。しかし、前述したように、完璧な人でもいじめられる世の中なのです。少し視点を変えて「人間なんだから嫌われてあたりまえ!」ぐらいの意識でいると、気持ちに余裕ができます。
ただ、我慢できるかどうかはいじめの質・程度にもよります。我慢することで取り返しがつかない状態になってしまっては大変なので、暴力を振るわれた場合などは我慢せず被害届を出すようにしましょう。
┃職場環境を改善する
「職場の利用者さんは大好き、待遇も最高! イヤなのは人間関係だけ……」という場合は、できるだけ職場環境を改善したいですよね。しかし、ひと口に「職場環境を改善する」と言っても、実際はそう簡単な努力でできることではありませんし、即効性がある対処方法はありません。しかし、長く続けることにより改善する方法や、悪化しない方法はあるので参考にしてください。
<挨拶をする>
大人としてやって当たり前のことなのですが、できていないところはたくさんあります。挨拶をしていたとしても無愛想なものであったり、小さい声であったりします。挨拶は仕事仲間とコミュニケーションを取る第一歩です。あなた本人が率先して挨拶をして、他のスタッフの挨拶を促しましょう。
<分け隔てなく話す>
仕事場には話しやすい人、話しにくい人がいて当然です。しかし、特定の人だけと仲良くすると派閥ができてしまいます。広く浅く、誰とでも分け隔てなく話すことが大切です。また、AさんとBさんの仲が悪い場合、Aさんと話している時にBさんにも話を振るようにします。すると、AさんとBさんは会話をしないといけない状況になります。もちろん、AさんとBさんが、仲が悪いことを知らない(忘れていた)振りをしなければいけませんから、多少の演技力は必要です。
<反対派閥の良い情報を与える>
Aさんと仲が悪いBさん。この二人はお互いにまったく話をしようとしません。その場合、Aさんの良いところをBさんに、Bさんの良いところをAさんに、会話の中で自然に伝えることができると良いですね。また、AさんとBさんの共通点(趣味や境遇など)をそれぞれに伝えるとお互いに共感性ができ、少しは話してみたいと思うかもしれません。
しかし、これだけやってもどうしても無理な場合は、「自分だけでもいじめの対象から外れる」ことが大切です。そのためには少しでもいじめられる要因を減らすことです。
<いじめの対象にならない方法>
・早めに出社する
・清潔感のある外見(服装・髪型など)を保つ
・仕事が忙しくても感情を表に出さず、笑顔で働く
・笑顔で挨拶をする
・悪口を聞かされても「そうなんですかぁ」程度の返事に留め、便乗しない
清潔感があり笑顔、仕事に対してもまじめな人は、なかなかいじめの対象になることはありません。仕事場での付き合いは「広く浅く」にしておきましょう。「あの子は腹を割って話してくれない」「本心が見えない」と、陰で言われるかもしれませんが、それがいじめの要因になることはないでしょう。
┃転職する
一番簡単な対処方法が転職です。人間関係が悪い職場なんて辞めてしまい、人間関係が良い職場に転職するのです。これを「逃げ」と言う人もいますが、「逃げ」の何が悪いのでしょう。自分が被害に合うくらいなら、他人なんか気にせず逃げちゃいましょう。求人サイトでもたくさんの募集がありますし、転職エージェントに登録するのも良いでしょう。
しかし、「転職したらまた人間関係が悪い職場だった」なんてことになっては元も子もありません。人間関係が良い職場かどうかは、求人ページの内容や面接時、見学時に職場の裏側を見抜くことができます。どういったところをチェックすれば良いかわかるように次のチェックリストを作りましたのでご利用ください。
チェック内容 | 項目 |
---|---|
□ 常に求人募集をしている案件ではないか | 求人情報ページ |
□ スタッフ全員の笑顔の集合写真はあるか | |
□ “求める人材像”欄が“誰でもOK”的な表現になっていないか | |
□ 一般的な求人に比べて給与が高すぎないか | |
□ 面接官は無愛想ではないか | 面接時 |
□ 職員の年齢や経験値に隔たりはいか(面接時に質問する) | |
□ 採用を焦っている感じはないか | |
□ 見学はさせてくれたか | 見学時 |
□ 利用者は楽しそうか | |
□ スタッフ同士が笑顔で活発に挨拶をしているか | |
□ 新人教育(研修)の様子は問題ないか(「笑顔がない」など) | |
□ 利用者の家族はいつでも面会(訪問)可能か |
<求人情報ページ>
常に求人募集をしている施設は、常にスタッフが足りないと言うことです。つまり採用されても人間関係や待遇の影響で、すぐ辞めてしまう人が多いことが懸念されます。また、リジョブでは求人広告に写真を載せることができます。そこにスタッフの笑顔の集合写真があると、スタッフ全員で何かのイベントを達成した実績があるということです。スタッフ全体で何かを成し遂げる職場は人間関係が良好な傾向にあります。更に、“求める人材像”という項目もありますが、そこに「無資格OK 未経験OK」だけしか書いていないと、「とりあえず誰でもいいから欲しい」という状況であることがわかります。それだけ困っているということは、それだけスタッフが定着しないということです。
人間関係が悪い、仕事内容が過酷などの理由でスタッフが定着しない職場は、スタッフがすぐ辞めてしまうことも予測しています。そのため高い給与で人材を集めようとします。他の施設と比べてあまりにも高い場合は怪しいかもしれません。
<面接時>
面接官が無愛想な施設で働こうとは思わないでしょう。ですが、実際こういった面接官が少なくないのも事実です。普段から職場で笑顔でのコミュニケーションが無いため、愛想よく振舞えないのです。
「何か質問はありませんか?」と聞かれた時に、“職員の年齢や経験値に隔たりはないか”を確認しましょう。例えば40代ばかりの職場だと、そのグループで若い新人を辞めさせていると考えられるからです。いろんな年代のいろんな経験値のスタッフがいる職場は、派閥もなく仲の良いことが多いのです。
面接官の言い方にもよりますが「明日から(もしくは今日から)入れますか?」など、焦っている感じがある場合は要注意です。人手がかなり切羽詰まっているのでしょう。経験や資格に関しての質問がないのに上記のようなことを言われた場合は特に注意が必要です。
<見学時>
まず見学をさせてくれない施設は問題外です。スタッフや利用者の様子を見られたくないということですから。利用者の家族が面会できる状況にないのも同じ理由です。
見学をさせてもらえたら、利用者の様子を見るようにしましょう。スタッフの関係性が悪い職場の利用者は気を使って、笑顔が消えると言われます。もちろん、直接スタッフの様子を見ることも大切です。スタッフ同士が笑顔で会話しているかの他、新人研修をしている様子なんて見ることができたらラッキーです。今度はあなたが同じように教えられるわけですから。
これらの項目のすべてがチェックできないと人間関係が悪いというわけではありませんが、スタッフの関係性を知るために必要な項目です。面接が終わったあとでチェックしてから働くかどうかを決めましょう。インターネットで口コミが載っている場合もあるので、参考程度には見ても良いかもしれません。
職場の人間関係は働く人にとってかなり重要です。対策としては「我慢する」「職場環境を改善する」「転職する」の3つをご紹介しましたが、一番のオススメは「転職する」です。
介護業界は人間関係の悪い職場が多いと言われますが、人間関係が良好な職場もたくさんあります。チェックリストを上手く利用して、是非人間関係の良い職場へ転職をして、楽しくやりがいのある介護スタッフ生活を送りましょう。
2017/07/14
2017/07/14
2017/05/31
2017/05/26
2017/05/17
2017/05/08
職種別の記事まとめ |
---|