介護福祉士は介護業界に携わる人のための国家資格であり、資格所持者は、介護業界におけるさまざまな職場で働けるチャンスがあります。
しかし、介護業界では長年人手不足が続いており、事業主や現場で働くスタッフを困らせています。その人手不足の要因として考えられるものの一つが、介護福祉士の給料の低さです。介護業界は他の一般的な業界に比べて、給料が低いと考えられていますが、実際はどうなのでしょう。
以下はリジョブで介護福祉士を募集している事業所(東京)の初任給を給与帯別に表したグラフです(無作為に99件選出)。
調査元:リジョブ 調査日:2017年3月21日
グラフを見ると、介護福祉士の初任給(経験者含む)の80%は17万5千万円~25万円の中に納まることがわかります。働く施設の規模や、雇用形態によっても異なりますが、一般的な介護福祉士の初任給は手取りで16万円~23万円程度になると言えるでしょう。
ボーナスを含めた初年度の年収は平均280万円程度であり、他の業種に比べると高いとは言えません。
そのため、「薄給だから」という理由で介護福祉士を辞めてしまう人も少なくありませんが、施設によっては残業や夜勤が収入に反映します。また、平均値では薄給と感じてしまうかもしれませんが、初任給が25万円以上の事業所もないわけではありません。「給与の低さは介護福祉士を続ける上でネックになる」と考える方は、事前にしっかり求人広告を確認して、給与の高い事業所を見つけるべきでしょう。
介護福祉士は、日常生活を送ることが困難な高齢者の介護をしたり、精神に障害がある人が少しでも自立した生活を送れるように手助けをする仕事です。他にも、介護を必要としている高齢者からの相談や、そのご家族からの相談を受けることもあります。
介護福祉士の業務としては、食事の介助や衣服の着脱、入浴介助などの身体介護を行うことがありますが、それらの業務は、慣れるまでは体力的に辛く、体を酷使しなくてはなりません。他にも掃除や買い物、調理などの生活援助で、一日高齢者に付き添うことがあるため、要介護者と長い時間を過ごすことがあります。
このように、介護福祉士は体力仕事が多いのが現実です。そのため、腰痛などにより仕事を続けられなくなってしまう人も少なくありません。しかし、身体介護にはコツがあり、正しい方法で介助をすることで腰痛などの危険はかなり少なくなります。
平成25年度介護労働実態調査 ((財)介護労働安定センター)社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室の集計によると、介護職員のうち40歳~49歳の割合は22.4%、50歳~59歳の割合は19.7%であり、正しい介助方法を身につけることにより、中高年であっても体力的に問題なく仕事を続けることができます。また、年齢に応じて夜勤のない事業に転職するなど融通が利くので、実際に「体力的に辛い」という理由で介護福祉士を辞めてしまう人もいますが、うまく働いていけば長く続けられる仕事であると言えます。
「高齢者のために働いて感謝をされたい」「高齢者にありがとうと言われると嬉しい!」という思いから介護業界に足を踏み入れ、介護福祉士の資格を取る人も少なくないでしょう。しかし、実際に働いてみると感謝してくれる高齢者ばかりではありません。
利用者の中には「仕事なんだから介護をして当たり前」を考える人もいますし、介護従事者を召し使いのように扱ったり見下したりする人もいます。認知症が進んでいる高齢者は介護をしても感謝をしない(感謝をしていても言葉や態度に繋がらない)ことがほとんどであり、中には介護者を泥棒扱いしたり、急に怒鳴ったりする人もいます。
介護業界に足を踏み入れる時に思っていた「介護福祉士は利用者から感謝される仕事だ」という理想と、現実のギャップを感じて辞めてしまう人もいます。
「高齢者に感謝されたいから介護職」という考え方ではなく、「高齢者の役に立ちたいから介護職」と考えた方が、理想との違いにショックを受けることは少ないでしょう。
介護福祉士だけではなく、介護職を辞める(辞めた)理由の第一位は「職場の人間関係に問題があったから」であり、全体の26.6%を占めています(平成26年「介護労働実態調査」より)。
人間関係の問題というのは業種・職種に関係なくよくある問題ですが、中でも介護の業務はスタッフ同士の連携・チームワークが重要視されます。しかし、介護の世界は女性の割合の方が多いことが原因で、チームワークがうまく機能しないことがあるというのです。
女性社会の場合、派閥ができることが多く、大きな施設になるとそういった派閥がいくつかできます。その中で“違う派閥の人”や“どこの派閥にも属さない人”は、陰口を言われたり酷い時にはパワハラ(虐待)を受けたりするのです。
「介護福祉士資格を持っている人が、無資格の人に苛められることはないでしょう?」と思うかもしれませんが、実際にあった介護福祉士の体験を1つご紹介します。
介護福祉士の仕事は辛いこともたくさんありますが、介護福祉士だからこそ味わえる嬉しい体験もあります。辛い経験をしたからといって、「介護業界全体がこんな感じなんだ」と、介護業界自体を辞めてしまう必要はありません。だからと言って我慢し続ける必要もありません。あなたの適性にあった職場は必ずあります。転職の際には「採用してくれるならどこでも」ではなく、しっかり調べた上で応募するようにしましょう。
氏名: | 菊地雅洋(北海道介護福祉道場・あかい花 代表) |
経歴: | 1960年8月12日・北海道上川郡下川町鉱山にて出生 社会福祉士、介護支援専門員、家庭生活総合カウンセラー2級、厚生労働省認定ケアマネジメントリーダーなど 北海道介護福祉道場・あかい花 代表、医療法人資生会・介護老人保健施設クリアコート千歳 事務次長 (その他)北海道福祉教育専門学校非常勤講師、一般社団法人みらい福祉研究所・介護福祉アカデミーセミナー講師、登別市介護認定審査会委員、北海道地域密着型サービス外部評価員、総合健康推進財団訪問指導員など…… |
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