介護福祉士の待遇や賃金問題について考える


介護を取り巻いている環境にはさまざまな問題が潜んでいます。その中でも特に問題とされているのが、介護業界の人手不足です。人手不足に対しては、さまざまな議論がされており、早急な対策が必要です。その人手不足対策の一環として、介護福祉士の待遇改善も検討されており、今後の動きに注目が集まっています。

■介護業界で問題となっている介護職の賃金・待遇

介護福祉士の賃金は、以前から他の業界に比べると水準が低いということが言われてきました。そのため、継続した働き手の確保が急務であるにも関わらず、低賃金をはじめとする様々な原因で多くの人材が離職をしています。介護福祉士全体の中でも、低賃金であることなど、待遇・労働環境に不満を抱えている人はたくさんいます。平成28年10月の社会保障審議会介護給付費分科会の資料によると、離職理由のうち、待遇・労働環境にかかわる部分では、

「収入が少ない」23.5%
「労働時間・休日・勤務体制が合わなかった」18.9%
(複数回答あり)調査データ「社会福祉振興・試験センター 平成24年度社会福祉士・介護福祉士就労状況調査」
となっています。

そんな中、今後さらに不足するであろう介護福祉士を確保するために、国が介護福祉士の賃金・待遇の改善のための対策を行っています。その一つとして「処遇改善加算」というものがあります。

この対策のために、介護職員の賃金を平均1万2,000円アップさせるための財源を確保しています。少ない財源を介護職員に少しでも回すことができるようにしているのです。また、平成28年8月2日に閣議決定した「未来への投資を実現する経済対策」により、平成29年度から平均月額1万円の処遇改善策が追加されます。しかし、事業者によっては、ボーナスカットをすることによって、実質の賃金低下を引き起こしている事業所もあります。

そこで国は、黒字になっている介護施設ではボーナスカットを禁止することを決定しました。このように、国としても介護職員の賃金・待遇改善に踏み切っています。

■介護職の給料はなぜ低いのか

介護に従事している人たちの給料が少ない、ということはずっと昔から言われてきたことです。しかし、その事実を知っている人はたくさんいるのに、なぜそのような事態に陥ってしまっているのでしょうか。

介護職の給料が低い原因は、収入を増やすための財源が少ない、もしくは事業所の支出が多いために、人件費を増やすことができないことです。

介護職の給料を賄うための財源が足りていないのは、介護サービスの提供に対する介護報酬が低いことが一つの原因として考えられます。利用する側から見ると、介護報酬が低いと自己負担額が安くなるというメリットがあるように見えますが、適正な(=介護職員が生活していくために十分な)給与が支払われる財源がなければ介護職を確保する事もままならない現状は好転しません。
逼迫する財源問題、これを解消するために、利用者の経済状況によっては、自己負担額を増やすといった対策が既に始まっています。

また、社会保障費をカバーするだけの財源を、国が確保できていないということもあり、増税を実施、もしくは検討をしています。さらに、介護保険における出費を少しでも抑えるために、介護を必要としない「健康寿命」を延ばすよう「介護予防」に取り組んでいるほか、事業所も長期的に働く正社員を採用して、浮いた採用コストを給料に充てるといった事業所もあります。

■介護職の待遇改善のために利用者が知るべきこと

介護職を取り巻く賃金・待遇を改善するためには、国や事業所が努力することはもちろん、介護施設を利用する人も現状を知っておくべきです。それは、介護施設を利用することによって、どのくらいのお金が発生しているのかということです。

また、適切なサービスを提供することも大切です。必要以上のサービスを提供していまうと、その分コストも上がり、国民全体でその無駄な費用を負担することになるからです。反対に、必要以下のサービスを要介護者に受けさせると、介護施設として最低限のサービスを提供するためには、介護職員がボランティアで介護をせざるを得ないような状況を作ってしまうのです。

利用する側からすると、値段は安くなるし介護をしっかりとしてくれると思いがちですが、それが仇となり、介護職員が減っていってしまう原因にもなりかねません。このように、介護サービスを適切な内容で受けることによって、介護全体の無駄が無くなり、介護職に従事する人の待遇改善につながることでしょう。

介護職の待遇・給料に関しては早急に改善を行わなければ、今後も進んでいく超高齢社会を支える介護職員がいなくなってしまうかもしれません。介護職員の給料が低いことには、さまざまな理由があり、一概に何が悪いということははっきりと言えませんが、国・介護事業所はもちろんのこと、利用者も一体となって、この問題に取り組むことが重要になるでしょう。



氏名: 松崎 匡(合同会社M&Yファクトリー 代表社員)
経歴: 介護福祉養成校を卒業後、障がい者福祉、高齢者福祉に携わり、アルファ医療福祉専門学校教務主任となる。その後2014年に合同会社M&Yファクトリーを設立。一生懸命な事業所や市民に向けたサポート等を中心に日々本気で活動中!



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