老老介護とは介護を必要としている65歳以上の高齢者がいる世帯のうち、介護をする人も65歳以上の高齢者である状態のこと、つまり「介護をする人もされる人もお年寄り」という介護状態のことです。
近年の超高齢社会において、老老介護は珍しいものではありません。現状の老老介護で最も多いのが「妻が夫の介護をする」というもので、次いで多いのが「夫が妻の介護をする」という状況ですが、2015年に団塊の世代が高齢者の仲間入りをします。それにより、例えば「65歳の息子が90歳の母親の介護をする」という状況も多く見られるようになるでしょう。
では実際の「年齢別にみた老老介護の割合」を厚生労働省 の調査結果から見てみましょう。
2013年の調査では在宅介護の半数以上である51.2%が老老介護であるのが現状です。さらに介護者と要介護者が共に75歳以上の割合が29.0%という事実が明らかになっています。
ところで、この「老老介護問題」、具体的にはどんな問題があるのでしょう。
老老介護の問題で大きいのは、介護をする側の負担が非常に大きいことです。若い介護者でも大変な作業を、肉体的には介護できる状態ではない高齢者が無理をしてケガをしてしまうこともありますし、介護される側がケガをしてしまうこともあります。
大きい負担は肉体的なものだけではなく、精神的な負担も付きまといます。中には精神的苦痛により自殺をしてしまう人や、老夫婦が心中を図るという事件もしばしば起こっています。
また、例えば認知症の夫を介護している妻も認知症という「認認介護」も社会問題となっています。
認認介護とは、認知症の家族を介護している人も認知症を患っている状態のことです。みなさんは「認知症の人が認知症の患者を介護できるのか」と思うでしょうが、まったくその通りです。当然、重度の認知症患者が重度の認知症患者を介護をすることなど不可能です。多くは、軽度の認知症(例:要介護1)患者が重度の認知症(例:要介護3~5)患者の介護をするという認認介護が多いようです。
2012年の厚生労働省 の発表によると、認知症高齢者数は以下のグラフのように推移すると予測されています。
日本は超高齢化により認知症患者数は増えており、要介護認定を受ける認知症高齢者は、2025年には470万人と予想され、高齢者に対する認知症患者の割合も増えていき、12.8%であると予想されています。
現在65歳以上の10%が認知症患者であり、80歳時点での認知症出現率はおよそ20%であるとされています。その前提から、老老介護のうち80歳頃の夫婦における認認介護の出現率を計算することができます。
夫婦どちらも認知症ではない確率:0.8×0.8=64.0% 夫婦どちらか片方が認知症の確率:0.2×0.8+0.2×0.8=32.0% 夫婦どちらも認知症の確率:0.2×0.2=4.0%
これにより、夫婦とも80歳頃の世帯の4%が「認認介護」をしていると推察されます。
認認介護の当然の問題として「適切な介護が行えない」というものがあります。体が動いても認知機能が低下した状態で介護するため、服薬や排泄ケアなどが適切に行えないのです。
また、二人ともに「食事を摂る」という概念自体がなくなってしまえば、命を落とすことにもなりますし、火の始末に無頓着な状態であっても命の危険にさらされます。
その他にも、介護放棄や虐待などが起こる確率が高くなると言われており、実際認知症の妻が認知症の夫を殴り殺してしまうという事件も発生しました。妻は自分が何をしたのかも、夫がなぜ死んだのかもわからないとのことです。
アメリカのある研究では、高齢夫婦の片方が認知症の場合、もう一方も認知症になる確率は健康な高齢夫婦の6倍あると発表されています。当然、二人ともが認知症の場合は、症状が酷くなるという悪循環が十分に考えられるのです。
老老介護・認認介護の原因のひとつとして「ヘルパーに来てもらうことを、本人や介護者、介護をしない家族が拒否をする」ということがあります。
「家族の介護でなんとかやっていける」、「他人を家に入れたくない」、「利用者負担金が払えない」、「家族が介護をするのが義務だ」などと考えてしまうそうです。
こうした状態を避けるためには認知症の早期発見と、地域の介護施設などに相談して協力を得ることが大切です。そのためにも「介護は恥ずかしいことではない」「状況を家族や周囲に知ってもらう」という意識を国民全員が持つことが大切です。決して一人で考え込んで、悩んではいけません。
「老老介護・認認介護」は長寿大国日本ならではの問題です。他国に類を見ない未曾有の問題に日本は立ち向かっていかなければいけないのです。
少子化対策などの国の制度や介護従事者の増加など、問題解決に必要なことはたくさんありますが、なかなかうまく進まないのも現状です。
私たち全員が他人事とは考えず、日本全体の問題として捉えて行く必要があるのです。
2017/07/14
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