どんなトラブルが介護問題になっているかという話の前に、そもそも「成年後見人」とは何かということを理解していきましょう。
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が十分ではない方(成年被後見人:以降「本人」と記載)の権利を守り、本人を法律的に保護・支援するための制度を指します。
判断能力が十分ではない人は、不動産や預貯金など財産の管理や介護サービス施設の入所手続きなどが難しい場合があります。また、悪徳商法など、本人に不利益な契約であっても理解できず契約を結んでしまい、被害にあう恐れがあります。成年後見制度とは、このような方を保護・支援する制度なのです。
また、家庭裁判所によって選ばれた、本人の保護・支援をする人を「成年後見人」と呼びます。成年後見人は、本人の意思を尊重し、心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人を支援していきます。たとえ後見人が本人の親、子、兄弟などの親族であっても、本人の財産を本人以外の人のために使うことはできません。後見人は、あくまでも本人のために必要な範囲で財産を管理します。
※後見人の職務は、本人の財産管理や契約等の法律行為に限られており、食事の世話や実際の介護は、後見人の職務ではありません。
既に記述した通り、成年後見人になれるのは家庭裁判所によって選ばれた人のみです。
現状、本人と成年後見人の関係性では親族・司法書士・弁護士・社会福祉士が多いようです。2013年の資料では全体の42.2%が親族で、親族なかでも最も多いのが本人の「子」です。
大切な財産を任せるのですから、「信頼できる親族に成年後見人になって欲しい」と考える人が多いのでしょう。しかし、親族による後見人トラブルもたくさんあるようです。
近年、成年後見人がその地位を悪用して、自己の権利を主張できない本人の財産を後見人自身のために使う「業務上横領事件」が頻発しています。その事例の一部を以下に紹介致します。
さて、大都市に集中している高齢者が地方に移住することにより、その地方にとって何かメリット、もしくはデメリットはあるのでしょうか。
■自宅のローン返済を親の財産で―― 認知症である本人の娘が、夫婦で建てた自宅のローンを親の財産で返済した。後見人には当然家庭裁判所の監督が入るので、バレないわけはない。
横領事件は後見人が親族の時に限ったものではありません。親族以外でもこのような事件は頻繁に起こっているのです。
■行政書士が500万円を横領 成年後見人として財産を管理していた元県議の行政書士(63)が被後見人である男性(52)の銀行口座から500万円を自分名義の銀行口座に移し横領した。男は業務上横領の罪で逮捕された。
■弁護士が総額約9億円を着服! 弁護士の男(65)は、交通事故や医療過誤の損害賠償訴訟で支払われた賠償金の他、成年後見人として預かっていた財産など、計22件で総額約9億円を着服していた。 地裁は男に対し、懲役14年の判決を言い渡した。
厚生労働省発表の統計によると、後見人による財産の横領等、後見人が適正に任務を遂行できていないとして、職権を解任される件数は年々増加しているようです。
以下のグラフは、「成年後見人の職権解任件数の推移」です。これは、財産の横領による職権解任のみの数ではありませんが、このグラフからも年々増加していることがわかります。
意図していなかったとしても、万が一後見人が本人の財産を本人以外のために勝手に使用したり、不適切な管理によって使途不明金や損害を発生させたりした場合には、後見人を解任され、損害賠償請求を受けるなど民事上の責任を問われるほか、業務上横領などの罪で刑事責任を問われることがあります。
成年後見人には重い責任を負う覚悟が必要なのです。
本人の財産で高額な支出をする場合や、本人のために必要な支出かどうかを迷う場合には一人で判断せず、まず家庭裁判所に相談することが大切です。
2017/07/14
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