一般的には歳を重ねることにより、身体的能力にどのような変化が起こるのでしょうか。以下のグラフは専門家のご意見の下、リジョブが概算した「年齢による能力の変化」です。
【視力】
静止視力(静止した対象を見る能力)よりも動体視力(動いている対象を見る能力)の方が、年齢による低下が顕著に出ています。70歳を越えると動いている物に反応するのがかなり困難になります。
【聴力】
年齢を重ねるほど、高い音(高周波数)が聞こえにくくなります。低い音(低周波数)は、年齢による変化はそれほど大きくありません。
【体力】
高齢により全体的な体力が低下しますが、中でも顕著に表れているのがバランス能力です。高齢者が杖をついて歩いているのは、足腰の筋力低下によりバランスをとることが難しいためです。
こちらが今回ご協力くださった株式会社高研さんが開発した「高齢者体験セット」です。
※「株式会社高研」のウェブサイトより転載
今回、こちらのセットをお借りして高齢者体験をしてみました。
今回、「高齢者体験セット」を着用して歩いてみるコースをご紹介します。
リジョブが入っているビル内で上記のコースを歩いて、タイムを測定します。まず、通常(未着用)の状態でタイムを測定し、次に「高齢者体験セット」を着用してタイムを測定し、比較します。また、どの区間で多くの時間がかかっているかを把握するために、lap1~4でラップタイムを測定します。
まずは通常測定です。測定に協力してくれたのはリジョブスタッフのMさんです。
<スタート地点>
こちらの苦悩も知らず本人は楽しそうなので、このままスタートしてもらいましょう。
「よーい、スタート!」
<自動ドア>
単に歩くだけなのに、カメラを構えるとちょっと動きが硬くなるMさん。
廊下を歩き、扉を開けると……
<階段>
豪華な階段です。上りはじめの段階(左)でlap1を計測。そして、階段を上り終えた時点でlap2を計測。
<手動扉>
扉を開けます。写真を撮りやすいように、わざわざ体を避けてくれました。
この後、5メートルほど廊下を歩くと……
<カードキー扉>
この扉の向こうはリジョブの社内なので、カードキーで開ける必要があります。セキュリティは万全です。カードをかざして「ピッ!」と鳴ったら、lap4計測です。
扉の向こうを10メートルほど歩いて靴を脱いだ後、椅子に座ります。
<着席>
はい、これで通常測定終了! これからが本番です
通常測定が終わってゆっくりしているMさんですが、続いてこれを着てもらいます。
<高齢者体験セット>
私も手伝って、5分ほどで着替えは完了。
「写真を撮るので、顔をこっちに向けてください」と言ってもこの状況です。
<スタート地点>
顔が下を向いています。
「Mさん、辛い箇所はありますか?」
Mさん「背中が固定されてるから、顔を前に向けたらしんどいんです」
「なるほど、そういう仕様ですからね……」
Mさん「視界が狭い、肘と膝が曲がらないのと……」
いろいろと辛い状態になっているようですね。しかしながらスタートはしてもらいましょう。
「よーい、スタート!」……あれ? 動きませんね。動けないほど辛いのでしょうか?
「Mさん? 動けないんですか?」
Mさん「え? スタートかかってますか?」
どうやら、耳栓の影響でスタートの声が聞こえなかったようです。
「じゃあ、肩を叩いたらスタートしてください。動き出したら時間測定します」と言うと、スタートしてくれました。
<自動ドア>
Mさん「見えにくい……動きにくい……」。
と、言いながらもなぜか笑っています。
<階段>
階段に差し掛かりました。ん? 今まで以上に視線が下を向いているようです。
Mさん「下向いてないと、足元が見えないから怖いんです……」
視界が狭く、動き辛い状態での階段は流石に大変そうです。手すりと杖をフル活用して上っています。
<手動扉>
疲れて休んでいるように見えるかもしれませんが、本人は一生懸命に扉を開けようとしているようです。
<カードキー扉>
カードを手に取るのに苦戦しながら、なんとか「ピッ!」。
指先が不自由になり皮膚感覚が弱くなるため、カードを手にするのも大変だそうです。
本人が言うには、必死に肘を曲げようとした結果、この写真の状態になるとのこと。
<着席>
通常時より大幅に時間を使いながらも、なんとか着席。
本人は座って休んでいるそうですが、とても休めているようには見えません。
とにかくお疲れさまでした。
では、測定時間をご覧いただきましょう。
体験セット着用時、通常時の2倍以上の時間がかかりました。一番時間がかかったのはlap2(階段)で、通常の2.41倍の時間がかかりました。やはり、お年寄りに階段は辛いようです。
その次に時間がかかったのはlap3で2.27倍です。カードキーを手に取ってかざすのに時間がかかりました。階段に比べて体力的に辛いという感覚はありませんでしたが、手先を使った細かい作業という意味で時間を費やしてしまったようです。
細かい作業というのは高齢者にとって、どの程度大変なのでしょうか。
追加作業として、Mさんには{財布からお金を取り出して、自動販売機で缶ジュースを買う}という作業をしていただきました。
体験セットでは、皮膚感覚を鈍くするために手袋を着用し、その上からゴムを着用して筋力低下を再現しています。
Mさん「一回お金掴んだら、後は普通の時とあんまり変わらないけど、財布から100円玉を掴むのが大変ですね」
しかも実際は上記写真(右)の状態の上、ゴーグルにより視界が変わるため、写真で見るより更に大変な作業になるでしょう。
「体験セットのゴーグルは高齢者特有の視力の状況を調査し、中でも重い症状の高齢者に近い状態を再現しています」とのこと。すべての高齢者の方が、このような状況ではないということなので、お間違えのないように。
では実際、ゴーグル着用時にはどのように見えているのでしょう。
上の画像は、実際ゴーグル着用時に見えた状態を再現するために加工した画像です。
視界が狭くなり、少し黄色く見え、文字がぼやけて見えます。
今回、年齢を重ねることにより発生する障害を再現する「高齢者体験セット」を体験したMさんに、感想を聞いてみました。
Mさん「視界は狭なる。耳は聞こえにくくなる。体は自由がきかなくなる……。年とると大変なことばっかり……けど、わかったことが1個だけありました」
「ん? 何かありました?」
「体験セット着けて動いたらすごく疲れるから、その後のジュースが普段より美味しく感じますね!」
重労働のあとの1杯を思う存分に堪能してください。
2017/07/14
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