救世主にならなくていい。何事も6割7割が大切です【ヘルスケアのお仕事 Vol.35 ブルースカイヨガスタジオ 大江清一朗さん #2】
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
前回に続き、整体とヨガを併設している「ブルースカイヨガスタジオ」の代表、大江清一朗さんにインタビュー。大学時代、師匠との出会いから骨と関節を意識した身体操作法の大切さに気付いたという大江さん。そこからトレーナー&整体師として働く中で、トレーニング+整体のメリットに気づき、整体院併設のヨガスタジオをオープンさせたそう。
中編となる今回は、そんなヨガ+整体の経営的なメリットと、大江さんがお仕事に感じているやりがいと魅力、そしてお仕事を続けていくためのアドバイスをお伺いします。
教えてくれたのは…
ブルースカイヨガスタジオ
整体師/ヨガインストラクター 大江清一朗さん
『ブルースカイヨガスタジオ』主宰、大江整体院横浜元町本院代表。 鍼灸整体師。アスレティックトレーナー。骨ナビディレクターとして、骨・関節の機能向上と効率のいい身体操作を指導。イージーヨガプロデュース『マインドフルネススタジオ代官山』でもパーソナルセッションを行う。
ヨガを入り口に、整体+ヨガで継続率アップ
―前回、ヨガ+整体を始められた経緯をお伺いしました。実際に始めて感じた、併設のメリットはありますか?
スポーツクラブに在籍していた時代から感じていたんですが、トレーニングと整体の2本柱でやっていると、お客様とのつながりが深まるし、継続率がすごく高くなるんです。継続率が上がれば、体が改善する率も高くなります。それは、ヨガと組み合わせた現在でも感じています。
ヨガに通って来ていれば、整体の日ではなくても体の調子が確認できます。逆に、整体的に取り組んで欲しい運動があった場合、継続できるように声掛けすることもできる。より密接に付き合っていけるので、どんどん良くなっていく姿が見られるんです。それって、やっぱり嬉しいじゃないですか。
また、集客の入り口としていいですよね。「ヨガ」と言えば、なんとなくでも何をしているかわかる。運動習慣をつけたいと思っている人が、ヨガを入り口に来てくれて、整体も併設しているならメンテナンスも…という流れで、関係づくりのスタートになっていると思います。
―大江さんがお仕事に感じるやりがいを教えてください。
私の場合、ベースにあるのは「自分の体を動かすことが好き」ってことなんです。そのために勉強した成果を伝えたら、お客様から喜んでもらえたので「自分に向いているのかな」と思って続けているんですね。
私は元々、勝負の世界にいたので自分の出番はライバルの失敗からという今から思うと精神的には不健康な一面もあったなと思うんです。それにきづけたのも、お客様と接した時に初めて、自分がしたことで「気持ちいいです」「よくなってきました」という言葉を聞けたから。それが、すごく嬉しくて。
今までは負かすことしか考えてなかったけど、この仕事は勝たせることで食べさせてもらえる。勝負しか考えてなかった私にとって、精神的にもよかったなと思います。
今ある自分の力で喜んでくれる人を大切にしていく
―お仕事で大変だなと感じることはありますか?
お客様の不調を思うように改善できない、というのは辛かったです。特に仕事を始めたばかりの方は、そう感じることも多いと思います。この世界は、触り方、言葉かけなど、すべてに実力が出てしまいますし、想いだけでは絶対に伝わらない部分もある。そこで辞めてしまったり、精神的にマイナスになってしまう人も多いですよね。
でもそれは、全部自分で解決しようとしているからなんです。救世主みたいになろうとして、できなかった自分がイヤになってしまう。それって疲れるし、うまくいっている仕事にも影響してしまうんですよ。
―そういう時は、どうしたら?
自分で解決するのが難しい人を納得させることに神経を注ぐよりも、最初はラクにできる人、自分ができる範囲の人を施術していけばいいんです。
人と人だから、その時の自分に「合う人」というのがあるはずです。私自身、今考えると「今に比べれば始めたばかりのころは技術的に未熟だったなー」と思いますけど、その時の実力の自分を良しとして、ファンになってくれた人がいました。まずは、その人たちを喜ばせていけばいい。
年月が経って実力が上がれば、また違う層の人がファンになってくれる。そうやって、今ある自分の力で喜んでくれるお客様を大事にしていくことが大切だと思います。そして自分で解決できなければ、別の整体院を紹介したり、「まだ実力不足で解決できないので」とコミュニケーションを取る。それができれば、大変でも楽しく働けるはずです。
あまり気張らず、自分の体も大切にして
―このお仕事を続けていくための3か条を教えてください。
1. 自分自身の健康ファーストで
自分が圧倒的に健康な状態でいないと、エネルギーを与えるヘルスケアの仕事はできません。自分の健康を守るための取り扱い説明書は、きちんと持っていたほうがいい。働き始めてしまうと自分のことを顧みるのは難しくなるので、できれば業界に入る前から自分の精神と肉体の健康について勉強しておくといいと思います。
2. 自分の健康キャパシティを知り、それに合った働き方ができる場所を探す
何時間でも働ける人もいれば、1回施術したら休憩しないと無理な人もいます。自分の健康のキャパシティを知ることで、それに合った働き方を見つけられる。昔は長時間労働を良しとしたり、新人は遅くまで働けという人もいたりしましたが、だんだん業界も変わってきています。必ず自分がやりやすいペースで、体力レベルに合わせて働ける場所はあるはずです。
3. 気負いすぎず、たくさんの相談相手を持つ
自分は何が得意で、どこまでできるのかを、きちんと把握しておくこと。そして、専門外のことはすぐに手放せるように、逃げ道をたくさん作っておくこと。それには、いっぱい仲間を作り、得意な人に紹介できるようにしておく。お客様との会話の中から何か意図口が得られることは多々あります。自分だけで抱え込まずに、持っている疑問を投げかけられる場所を持つのはすごく大切です。
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スポーツという勝負の世界からヘルスケア業界に入ったことで、「人を勝たせる」喜びに気づいたという大江さん。そして働いていくなかで、体同様、気持ちの上でも「力を抜くこと」の大切さに気付いたそう。「自分の体ファーストで」という考え方は、勉強熱心な人が多いヘルスケア業界では大切な観点ですね。次回は、大江さんが行っている整体とヨガについて詳しく教えていただきます。
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骨と関節を意識して行う整体&ヨガで目指す体作りとは【ヘルスケアのお仕事 Vol35 ブルースカイヨガスタジオ 大江清一朗さん #3】>>
取材・文/山本二季
撮影/高嶋佳代