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介護・看護・リハビリ 2021-07-26

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.40】利用者との会話が苦手…。会話上手な介護職になりたい!

介護の現場は人と関わるお仕事。利用者とのコミュニケーションは、介護をスムーズに、質の高いサービスを提供するためにも、お互いが気持ちよくいるためにも欠かせません。今回はコミュニケーションの要となる「会話」に必要なスキルについてお届けします。

介護職なのに利用者と上手く話せなくて悩んでいます。

介護職にとってコミュニケーション能力は大切だと分かってはいるものの、会話や雑談が苦手という人もいるでしょう。介護職も人間です。苦手なことがあっても当たり前。また、苦手意識はなくとも、自分の興味のある話題で自分の話ばかりになったり、不快を感じる意見に反論してしまい気まずくなったりしてしまったことがある人もいるのでは…?

介護職にとって利用者との会話は、信頼関係を結ぶ上でも、体調や心情を知る上でも、鍵となってくるスキルです。介護の現場における会話で大切な「傾聴」と「言葉かけ」のポイントを押さえて、会話上手になりましょう。

お話を伺ったのは…

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

 

ポイント1:立ち位置は「聴き手」でキープ

会話に苦手意識を持っていない介護職でも、相手と同じ体験を持っていたり、共感できることがあったりすると、うっかり会話に夢中になって自分の話ばかりになってしまうこともあるかと思います。ですが、話したがっている利用者はとても多く、介護職は「聴く」ことを求められています。会話が苦手な人もそうでない人も、利用者と話す際は「聴き手」に徹することを意識しましょう。話す前に心の中で「さあ、聴こう!」と言葉を発してみると、前向きに臨めるようになりますよ。

ポイント2:意見を否定せず、肯定的に聴いて「受容」する

人は誰でも、自分の話を聞いてもらえると嬉しいものです。逆に自分の考えに否定的な反応が返ってくると不安や不快を感じ、心を閉じてしまうことも。だからこそ、会話には「受容」が大切です。

介護ではよく使われる「受容」という言葉。<あるがまま>を受け入れるという意味です。まずは、利用者の言葉を受け入れて共感や同意の意を返してみましょう。その上で「○○さんはどう思いますか?」のような利用者にさらに発言を促す返しをしていくと、会話が展開しやすくなります。

とはいえ、ネガティブな言葉や考えに対しては、誰でも受け入れがたく感じてしまいますよね。そういう時は、会話においての「受容」は「<あるがまま>を受け入れる」というよりも、『相手の言葉や態度を肯定的に聴く』ことだと捉えてみましょう。そうすればネガティブな言葉にも、例えば「○○さんならどうしますか?」というようなポジティブな言葉を返せるのではないでしょうか。

ポイント3:「言葉かけ」は心に向かって会話するつもりで

利用者の中には、話したくない話題がある人、そもそも会話や雑談が苦手な人、認知症の症状があって返答どころか反応もあまりない人など、様々な人がいます。ですが、言葉のやり取りでの「楽しい雰囲気」は伝わります。

明確な言葉として聞けなくても、その人のちょっとした表情の変化や反応から心の声を聴くように心がけましょう。話したくなさそうな話題はすぐに別の話題に変える、話したそうな話題をふって聴くという意識を持つことが肝心です。

あらかじめ、利用者世代が反応しやすいネタを準備しておくと会話もしやすくなります。昭和に流行った歌や出来事などを知っておけば、「楽しい雰囲気」の助けになることも多いですよ。

「聴き上手」になるため覚えておきたい2つのこと

1. 聴き上手はアサーション上手
2. 聴くほどにネタは増えていく

アサーションとは、心理学におけるコミュニケーションでの理想的な自己表現で、『自分のことを伝え、他人にも配慮する』こと。アサーションを心がければ、自分の気持ちを上手に伝えられるようになるのはもちろん、相手の気持ちも上手に聴けるようになると言われています。そもそも、人と人が分かり合う過程は、「相手の気持ちをしっかり聴く」「伝えたいことをきちんと言葉にする」という2つの積み重ねです。「聴き上手」でいるには、自分も相手も尊重できることが大切ということです。

そして、「聴き上手」への道は、聴けば聴くほどネタが増え、会話に困ることも減ってくるという嬉しい螺旋階段です。人の話を聴くこと自体が知識や教養を身につけられるチャンスですし、特に介護の現場は人生経験豊富な利用者の方々から多種多様な話を聴ける絶好の場所。「雑学王になろう!」くらいの気持ちで聴き上手を目指してみましょう!

監修・中浜さんの「実際にこんなことありました!」

実は私も、親が認めるほど人見知りです。知らない人と話すのは得意じゃないし、積極的でもありません。ですが、今では自分のことを「人見知りの人たらし」だと思っています。

私が福祉・介護の世界に入って感じたのは、この業界の人には人見知りが多いということ。コミュニケーション力が必要だと思われる職種なのに、実際には話をするのが苦手な人が多いのはなぜなんだろうか、と常々考えていました。そこで気がついたのは、『人見知り(話をするのが苦手)な人は「聴き上手」』なのかもしれないということです。自分自身はあまり話さず相手が話す状況を作っているからこそ、利用者さんなどがお話ししやすかったり、楽しんでもらえる環境が作れているのかもしれないということです。

介護の仕事の正解は相手にあります。だからこそ相手の声を聴くということが重要なのだと思います。コミュニケーションに自信がない人は、実は介護福祉の仕事に向いている人なのかもしれません。ぜひ「聴くこと」チャレンジしてみてくださいね。

文:細川光恵
参考:「こんなときにはどう言葉をかけたらいい? 介護の言葉かけタブー集」誠文堂新光社

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