訪問看護ステーションの管理者って?4つの役割や向いている人の特徴、必要な資格についても解説
訪問看護を利用する人が住み慣れた環境で過ごすことのできるように、在宅看護ケアサービスを提供する施設のことを訪問看護ステーションといいます。
しかし、この施設の管理者になるには、一体どのような資格や能力、経験が必要となるのか詳しく知らない方もいるのではないでしょうか?
本記事では、訪問看護ステーションの管理者の仕事の概要や管理者の4つの役割、勤務の条件や実際に働くまでのプロセスを解説します。訪問看護ステーションの管理者としての仕事内容を知りたい方は、参考にしてみてくださいね。
訪問看護ステーションの管理者とは?
そもそも訪問看護ステーションを運営するためには、ある一定の条件を満たしている「管理者」になる方が必要です。この章では、訪問看護ステーションの管理者になるための条件や、管理者が担当できないことについて紹介します。
訪問介護ステーションについての詳細はこちら:訪問看護ステーションとは? 訪問看護ではどんな風に働くの?
専従かつ常勤の看護師・保健師
管理者になる条件は、「専従かつ常勤の保健師または看護師であって、適切な指定訪問看護をおこなうために必要な知識および技能を有するもの」だと定められています。
しかし、保健師と看護師は国家資格であるため、一定期間の必要なカリキュラムを養成機関で修了し、卒業したあとにようやく受験資格を得られるのが特徴です。
職務経験の具体的な規定はありませんが、事業申請時には管理者の経歴は審査対象のひとつ。そのため、前述した条件を満たすためにも、病院や療養施設、訪問看護ステーションでの実務経験、もしくは訪問看護に関する研修を受講することが望ましいです。
管理職にふさわしいとされる人は、前項の条件を満たしている人です。ただし、5年以内に以下の指導があった場合は、対象外ですので、ご自身が当てはまっていないかしっかり確認するようにしましょう。
・保健師、もしくは看護師の業務停止が命じられている
・管理者として変更の指導を受けている
・管理職としての責務に関わる理由から取り消し処分を受けている
管理者は兼務できるの?
管理者として施設の管理業務に支障がなければ、同じ事業所内や敷地内、隣接している施設での従業員業務の兼業は可能です。
ほかの施設の訪問看護ステーションの管理職との兼業は、事業の管理に支障をきたす恐れがあるため、認められていません。
ただし、管理者が長期療養や出張などやむを得ない理由によって業務がおこなえない場合、ほかの職員が管理者になることが認められているようです。
この場合、訪問看護に関する豊富な知識と経験を持ち、地方厚生局長が承認した人のみが該当者となります。そのため、事業所は速やかに条件を満たしている有資格者の人材を確保することが求められるでしょう。
管理者の4つの役割とは|ケアの改善と訪問看護サービスの質の向上のために
管理者は、つねに利用者さんとそのご家族の立場に立ち、提供する看護ケアやサービスの質の向上に努めなくてはいけません。
また、質の高い看護ケアの提供には実際に看護を実践するスタッフとの連携やほかの施設、あらゆる職種との密なコミュニケーションが重要です。つづいては、これらを満たすために必要な、管理職としての役割を4つご紹介します。
・リーダーシップ
・経営マネジメント
・他職種との連携
・判断力や経済的思考能力などの資質
それぞれの役割についておさえて、管理者に必要な能力や資質はなにか見てみましょう。
1.リーダーシップ|スタッフ育成・ネットワークの構築
まずは、スタッフをまとめるリーダーシップが必要です。訪問看護では、利用者さんやその家族への適切な対応、ほかの職種との円滑なコミュニケーションが求められます。適切な人材の確保と在宅サービスに必要な知識やマナーの指導も、管理者の重要な役割です。
また、利用者さんの状態や希望に合わせた最適な療養生活を支援するために、地域の医療機関や介護施設、ほかの機関の管理者との密な連携を図るためのネットワーク構築も不可欠となります。
施設内でのスタッフをまとめるリーダーシップも必要不可欠。実際に介護サービスに従事するスタッフが働きやすいようなチームづくり、職場環境づくりができる能力も、訪問介護ステーションの管理者に求められる資質です。
2. 経営|利用者獲得や労働衛生管理
訪問看護ステーションは看護ケアを提供しているサービス業のひとつであり、管理者はその事業を管理する経営者でもあります。訪問看護ステーションの安定した経営において重要なのは、利用者の獲得と従業員の労働衛生環境の整備です。
利用者さんやその家族は、利用する事業所を自由に選択できます。そのため、管理者は経営的立場からいかに利用者さんと家族に信頼関係を構築するか、そして従業員が勤務しやすい環境であるかをつねに考えなければなりません。
3.ケアの質の管理|人材区政の環境整備
訪問看護サービスは一般的な療養施設や入院施設などと異なり、利用者さんの居住地に訪問してケアをおこなうため、担当スタッフの臨機応変な対応力と応用力が求められます。そのため、スタッフの経験や能力によって提供するケアの質に差がでてくることもあるでしょう。
管理者は介護スタッフの看護記録や報告書から、利用者にとって最適な看護ケアが行われているのかを確認・管理して、経験者・未経験者に関わらず、安定的なサービスの提供体制を整備する必要があるのです。
4.他職種連携|窓口として機能する
訪問看護の事業に関わるのは、看護師や保健師だけではありません。医師やケアマネジャー・理学療法士・作業療法士・薬剤師など、利用者さんの状態に合わせて、多くの職種が多方面から協働しています。
管理者はそれぞれの職種と従業員・利用者さんとその家族からの意見や連絡を受ける窓口となり、専門職種者と利用者をつなぐ連絡役としての役割を担う大事な仕事なのです。
管理者に求められる資質とは|判断力や経済的思考力など
これら4つの役割を担うために、管理者として求められる資質は多くあります。まずは、論理的思考と適切な判断力、そして柔軟な対応力です。
看護ケアを実施している現場や事業所内外で想定外の事象が発生しても臨機応変に対応し、利用者さんに不利益が発生しないように対処することが管理者の責務になります。
また、経営者としての経済的思考力と先見力も、事業を安定的に継続するためには必要不可欠です。加えて、ほかの機関・多職種との連携上に必要なコミュニケーション能力や交渉力、従業員をサポートする支援力や責任感も欠かせない要素となります。
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訪問看護ステーションの管理者に向いている人の特徴4選
訪問看護ステーションの管理者に向いている方の特徴は、以下の4点にまとめられます。
・窓口業務や事務作業を苦に感じない人
・将来を見据えた施設運営を考えられる人
・看護や介護福祉に関する幅広い知識がある人
・地域に対する思いやりがある人
それぞれの特徴について詳しく知って、管理者に向いている方の人物像をイメージしてみましょう。
1.窓口業務や事務作業を苦に感じない人
訪問看護ステーションの管理者の仕事には、人材のマネジメントのほかに、看護スタッフのシフト調整や利用者に関する書類手続き、金銭的な手続きなどの事務作業があります。
また、訪問客の窓口対応や施設運営に関係のある方への応接対応などもあり、事務作業や窓口業務を苦に感じない方が、管理者の仕事に向いているでしょう。
2.将来を見据えた施設運営を考えられる人
訪問看護ステーションの管理者の仕事は、中長期的に見た施設運営を考えられる資質が求められます。施設内で働いているスタッフ同士のコミュニケーションや、看護サービスの質を担保するための仕組みづくり、施設運営に必要な経営計画の立案など、中長期的な視点に立った施設運営について考えられる能力が重要です。
3.看護や介護福祉に関する幅広い知識がある人
訪問看護ステーションの管理者ともなれば、現場の看護師を統率し、訪問看護に関することを教える立場になります。また、他職種との連携も図る必要があるため、看護や介護福祉に関する幅広い知識が必要です。
実際に看護をしたスタッフから状況を聞いて、問題点や改善点があればその都度教えたり、最善の形に修正していったりする力が求められます。
4.地域に対する思いやりがある人
訪問看護ステーションはその地域と密着して看護サービスを提供する施設です。そのため、管理者は地域に対する理解と思いやりのある人が望ましいでしょう。
地域に対する理解を深め、地域の方々との協力体制を育むことではじめて、訪問看護ステーションがその地域の住民に受け入れられます。
管理者は地域との関わりを深めることで、地域の理解を得て、サービス提供体制を確立する資質が求められるのです。
訪問看護ステーションの管理者になるための条件
訪問看護ステーションの管理者になるためには、看護師・保健師の資格を保有していることが求められます。それ以外の資格は任意となりますが、ほかのスタッフを管轄する立場になるため、特定のスキルや資格の取得がのぞましいです。
この章では、看護師・保健師以外に求められるスキル・資格について確認しましょう。
看護師・保健師の資格以外に求められるスキル
看護師・保健師以外に必須資格はありませんが、各都道府県で開催されている指導・実務研修を受けられる講習を受講し、知識やスキルを身につけることが大切です。
具体的には、以下で紹介するような研修・講習会などが挙げられます。
東京都|訪問看護ステーション管理者・指導者育成研修及び看護小規模多機能型居宅介護実務研修
この研修では、訪問看護ステーションに必要な人材確保と安定した事業所の運営がおこなえる管理者を育成することを目的として開始されました。東京都内で訪問介護ステーションの管理者・指導的立場にいるすべての方は、受講が推奨されています。
また、この研修を通して、ほかの事業所の管理者とのネットワーク構築も目的とされています。
研修内容は基礎実務コースと経営安定コース、育成定着推進コースの3つがあり、最長で3日間の講習を受けます。受講対象者は、東京都内にある事業所の看護職員に限られているのが特徴です。
基礎実務コースは事業所の運営の基礎実務の習得を希望している管理者や指導者、経営安定コースは管理者経験が浅く、事業所の安定化について習得したい管理者や指導者となります。
経営者として訪問看護ステーションの管理者になる3つのプロセス
訪問看護ステーションの管理者になるためには、以下の手順を踏むことになります。
・ステーションとして活用する事業所を確保する
・運営に必要な設備・備品を準備する
・申請書類を提出して、介護スタッフを募集する
これから経営者として訪問看護ステーションを設立して、管理者になろうと考えている方は、参考にしてみてください。
1.ステーションとして活用する事業所を確保する
まずは訪問看護ステーションを設立するための資金集めをし、法人を作ります。その後、実際の施設として活用する事業所を内見して、周囲に駐車場のスペースがあり、利用者にとっての利便性が十分であることを確認しましょう。
2.運営に必要な設備・備品を準備する
訪問看護ステーションの事業所を確保したら、今度は営業に必要な設備や備品を準備する必要があります。
デスクや椅子・パソコン・電話などの事務作業に必要な道具に加え、体重計や血圧計・ガーゼや消毒液など、看護サービスを提供するのに必要な備品を揃えておく必要があるでしょう。
3.申請書類を提出して、介護スタッフを募集する
訪問看護ステーションの備品や人員の準備が整ったら、施設の所在地のある市区町村に必要書類を提出する必要があります。申請の許可が下りるまで数週間から1カ月がかかると見て、できるだけゆとりをもって必要となる書類を準備しましょう。
訪問看護ステーションの管理者にふさわしい素質を知って、自分のキャリア選択を参考にしてみよう!
この記事では、訪問看護ステーションの管理者の特徴や4つの役割、向いている人の特徴、管理者になるための条件や施設経営のプロセスについて解説しました。
訪問看護ステーションの管理者になるために必要な資質や向いている方の特徴を知って、自分自身のキャリア選択の参考にしてみましょう。
引用元
東京都福祉保健局|訪問看護ステーション等管理者・指導者育成事業
厚生労働省|『指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について』の一部改正について