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特集・コラム 2019-10-25

私の手にしかできない仕事 Work.2/パーソナルトレーナー・柴雅仁(後編)

パーソナルトレーナー・柴雅仁さんに、前編では独立されるまでのエピソードをお伺いしました。後編では、結婚後の心境の変化、やりがい、そして、パーソナルトレーナーとしてブランディングするための発信方法について語っていただきます。

「自分らしさ」をどんどん発信し、知ってもらう。それがオンリーワンになる近道

——柴さんの1日のスケジュールを教えてください。

日によって予約の入り方が変わるので毎日同じではありませんが、一番初めのセッションは大体10時からになります。なので、朝7時くらいには起きてお弁当の用意をして9時半には職場に着くようにしていますね。

一番初めの時間がもっと繰り下がることもありますし、予約と予約の間が空くこともあります。『セルフケアラボ』やTwitterはその空き時間に更新することが多いです。10月にSBクリエイティブさんから『10秒で絶好調になる 最強のストレッチ図鑑』、主婦の友社さんから『3コマまんがですぐできる 10秒ゆるみストレッチ』を出版するので、最近は取材や打ち合わせ、撮影などが入ることもあります。

——1回のセッションはどのくらいの時間がかかるのでしょうか?

短いと30分、長いと2時間です。基本は60分ですが、多い日だと1日8回から9回のセッションが入ります。朝10時から始まって22時までやっていることも……。けれど、ずっと予約が入りっぱなし、はまずないですし、早ければ8時に終わることもあります。

一番長い2時間のセッションでは、体の痛いところや動きが悪いところを丁寧に診ていき、その後セルフケアの指導をしていきます。ただ、全員が2時間必要かというとそんなことはなく、長くやりたい人や2時間しっかりやった方がいい人には時間をかけて伝えていく。そういった方針です。

Twitterなどで紹介しているセルフケアはすごく簡単なもので、すぐ良くなる人もいますが、あれだけでは難しい人もいます。そういった方はさらにプラスアルファのケアが必要になるので、セッションを継続する判断をすることもありますね。ほかにも、スポーツのパフォーマンスを上げる目的でセッションを受ける方もいて、そういった方には簡単なセルフケアから教えていき、少しずつ難しいケア方法を伝えていきます。

——柴さんはご結婚されていますが、結婚以前と以降では仕事観は変わりましたか?

子どもが生まれたので、最近、週休2日にしました。休みの日は勉強会に行くこともありますが、大体家族と過ごしています。

パーソナルトレーナーの認知度は年々上がってきて、人気のあるパーソナルトレーナーはテレビや雑誌に引っ張りだこです。そんな状況に比例して、パーソナルトレーナーの人口も増えており、それはそれでうれしいのですが、対するフィットネス人口は約10年で変化がないようなんです。つまり、トレーナーが飽和している状況ですね。

そう考えたとき、トレーナーとして大成するためには大勢の中から抜きん出る存在にならないとな、と思いました。やれることは全てやろうと。Twitterや『セルフケアラボ』での情報発信は、自分を知ってもらうための手段です。おそらく、結婚していなくて子どももいなくて自分一人だったら、ここまでやっていなかったかもしれません。

——パーソナルトレーナーとしてやりがいを感じる瞬間は、どんなときでしょうか?

やっぱり、通っていただいているお客さんの変化が楽しいですよね。

痛みを感じていると、人はネガティブになります。例えば、足腰に痛みを感じるようになると、痛みから、出歩かなくなるんですよね。そうなると、痛みと相まってどんどんふさぎ込むようになってしまいます。痛みは人をマイナス思考にさせるんですよ。

その痛みから解放されたら、「あれもこれもやってみようかな!」と前向きな気分になっていくものです。通っていただくうちに、少しずつ痛みが治まっていき行動範囲が広がって元気になる姿が見られるのは、うれしいですね。

けど、僕の診られる範囲は限られているし、全てを治すことはできません。難しい症状を治したい気持ちを強く持っていても、うまくいかないこともあります。痛みが軽減されなかったり変化がなかったりしたときはとても残念ですし、自分の力不足を感じますね。ただし、そこで諦めず「どうしたら治せるんだろう」と考え、そこからまた勉強をし直すんです。そういったチャレンジ精神も原動力になっていると思います。

後は人体の仕組みを勉強すること自体が好きなので、自分で学んだことを実際に自分の体で試してみて新しい発見があると、「ぞくっ」とします。「面白いぞ!」と。その発見を人に伝えるのも、楽しいですね。新しい情報を伝えたことでその人の体に何かしらの良い変化があったらうれしいし、効果が出なかった場合もそれはそれで「何がいけないんだろう?」と考えるので楽しいです。

——柴さんの今後の展望を聞かせてください。

将来について、最近はぼんやりとしか考えないようにしています。というのも、期限を決めて具体的に「店を出す」「本を出版する」と決めてしまうと、それ以外の自分の可能性を狭めてしまう気がしていて。

僕の人生のゴールは「笑顔で最期を迎える」ことと決めています。今この瞬間、自分の好きなことや楽しいことをしていたいんです。もしかしたら、明日、死ぬかもしれないじゃないですか? だから、ある程度目標や予想はあるものの、決め過ぎず、縛られ過ぎずに進みながらそのときの流れに身を任せて「楽しいか、楽しくないか」で生きることが僕にとっては大切ですね。

もしかしたら、将来、パーソナルトレーナーをしていないかもしれないし、続けているかもしれない。それは正直、わかりません。ただ、一ついえるのは、何かしらの岐路に立ったときに自分が「面白いな」と思うことをやればいいし、仮に続けて楽しくなかったら、やめればいい。好きなものやワクワクすることと一緒に前へ進んでいけば、結果的に「笑顔で最後を迎える」ことができるかなと。

——同じ業界を目指している方にアドバイスをお願いします。

知識・技術に一定のレベルを備えるのは大前提として、選んでもらえる人になることが大事です。どれだけ腕が良くても、知ってもらえなければ選んでもらえません。どれだけおいしいラーメン屋さんでも1日に数人しか通らないような場所にあったら認知されないし、お客さんも増えないですよね。「知ってもらう」ために、発信していく。それは、絶対条件です。

——どういったことを発信していけばいいのでしょうか?

誰に伝えるかでも発信内容は変わってきますが、「自分らしさ」はどんどん発信した方がいいと思います。専門的な知識である必要はありません。特に一般の人に向けて発信するのなら、噛み砕いた内容にする必要があるでしょう。

そもそも、セルフケアのジャンルで新しい知識はほぼありません。世に出ている情報は大体似たり寄ったりです。セルフケア情報を発信している人は、世の中で僕以外にもたくさんいますしね。

その中で差別化するには、発信者のキャラクターだと思います。人間性に限らず、見た目の特徴や自分で決めたテーマカラーでもいいんです。僕の髪型は見ての通り坊主ですが、この見た目が定着しているので、『3コマまんがですぐできる 10秒ゆるみストレッチ』内のイラストも坊主なんです。周りの人から「そっくり(笑)!」と好評で(笑)。記憶してもらうキャラクターで発信することは、とても重要だと感じます。

僕は、『セルフケアラボ』でとても長いプロフィールを載せています。その中に、鶴見に住んでいることを書いているのですが、つい最近会いに来てくれた方が「自分はトレーナーをしていて、彼女が鶴見に住んでいるんです」と。その方は「鶴見」という共通項から親近感を感じてくれて、僕のところに相談に来てくれました。

人は共通項が多いほど親近感を感じるので、自分を発信しないと、もったいないです。ブログやTwitterにいつも発信している内容とは異なるプライベートな日常を投稿してみる。その情報自体には意味がないかもしれないけれど、その日常に親近感を感じて自分に興味を持ってくれる人はいるかもしれません。

難しくキャラをつくり込む必要はありません。自分が自覚していないだけで、人は十分個性的です。「自分らしさ」をどんどん発信して知ってもらうこと。それがオンリーワンになる近道だと僕は思います。

パーソナルトレーナーとして向上を続けながらも、「楽しむこと」「ワクワクすること」に自分を任せる生き方。柴さんが発信しているセルフケア術だけではなく、柴さんご自身の自然な人柄にもたくさんの人が共感し引きつけられているからこそ、Twitterで11万以上ものフォロワーに支持されているのではないでしょうか? もしかしたら、「私の手にしかできない仕事」とは、その人の生き方そのものなのかもしれません。

私の手にしかできない仕事 Work.2/パーソナルトレーナー・柴雅仁(前編)>>

パーソナルトレーナー・柴雅仁さん

 

横浜・蒲田を拠点に置き、体軸理論をベースにした関節痛の治療や体の使い方を指導している鍼灸師・NSCA認定パーソナルトレーナー・JCMA認定体軸セラピスト。年間セッション数は1,400~1,500。「自分の体は自分で正す」をコンセプトにした『セルフケアラボ』も運営している。Twitterのフォロワー数は11万人超(2020年10月現在)。2020年10月には『10秒で絶好調になる 最強のストレッチ図鑑』(SBクリエイティブ)、『3コマまんがですぐできる 10秒ゆるみストレッチ』(主婦の友社)を出版する。
Twitter:https://twitter.com/PT_shiba
『セルフケアラボ』:https://t.co/KCHh6B2ANa?amp=1

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